改訂新版 世界大百科事典 「サラスバティー」の意味・わかりやすい解説
サラスバティー
Sarasvatī
古代インド神話の神格の一つ。かつてインダス川の東方を流れていたサラスバティー川(現在のものとは別と考えられる)が女神として神格化されたもので,インド最古の文献である《リグ・ベーダ》においてすでに,河川神の中で最も有力な地位を占めている。《リグ・ベーダ》では,穢れをはらい,さまざまの富をもたらす神として崇拝されるが,これは大地に肥沃をもたらす河川の力と水の浄化能力とが重視されたものであろう。のちにブラーフマナ神話にいたると,同じく重要な神格である言葉の女神バーチュVācと同一視され,学問・芸術をつかさどる女神となった。仏教にも天部の一つとして取り入れられ,弁才天として崇拝されている。
→弁才天
執筆者:吉岡 司郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報