日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアーズ・ローバック」の意味・わかりやすい解説
シアーズ・ローバック
しあーずろーばっく
Sears, Roebuck and Co.
アメリカの世界的な小売企業。社名は、1886年にリチャード・シアーズRichard Warren Sears(1863―1914)とアルバー・ローバックAlvah Curtis Roebuck(1864―1948)の2人が設立した同名のカタログ通信販売会社(イリノイ州法人)に由来する。現、シアーズ・ローバックはこのイリノイ州法人を継承して、1906年にニューヨーク州で設立されたものである。1925年、最初の小売ストアの開店のあと、チェーン・ストアによる小売業務にも手を広げ、1931年までに378店舗を開設、小売店舗による売上高が通信販売によるそれを上回るまでになった。
同社の事業は小売業(小売商)を柱とするが、1931年には自動車保険を中心としたオールステート保険The Allstate Corp.を設立しており、1980年代には当時アメリカ最大の不動産会社コールドウェル・バンカーColdwell,Banker & Co.を買収して不動産業界に進出するなど業務の拡大を図った。また、証券大手のディーン・ウィッター・レイノルズDean Witter Reynoldsを買収して金融業にも進出した。業務は、オールステート・グループ、コールドウェル・バンカー不動産グループ(不動産投資、同担保貸付、保険業務)、ディーン・ウィッター・ファイナンシャル・サービスとしてそれぞれ運営され、同社の収益を支えていた。しかし、クレジットカードの貸し倒れ増加(1996年末の未収勘定は267億ドル)に伴う償却負担と売上げの低迷による業績の悪化から、不採算店の閉鎖などの合理化とともに小売業に徹する戦略をとり始めた。1993年に証券業のディーン・ウィッターを売却、1995年にはオールステート保険も売却して多数の非小売事業から撤退。創業以来の同社の代名詞ともいえるカタログ販売も廃止して、伝統的なフルライン型百貨店として復活を果たした。海外事業はカナダ、メキシコを中心にシアーズ・カナダとシアーズ・メキシコがそれぞれ行う。主力製品は、アパレル(既成服)、家庭用品(家庭電器製品、エレクトロニクス製品、住宅改修製品、家具など)、自動車用品などである。2001年の売上高は410億7800万ドル、純利益は7億3500万ドル。
[萩原伸次郎]
その後の動き
1999年にオンラインショップ、シアーズ・ドットコムを開設。2005年、KマートKmart Holding Corp.による買収提案に基づき、両社は合併し、シアーズ・ホールディングスSears Holdings Corp.傘下の事業会社となった。2012年のシアーズ・ホールディングスの売上高は398億5400万ドル、純利益はマイナス9億3000万ドル。その後もネット通販の台頭などで業績の低迷は続き、2018年10月に連邦破産法の適用を申請した。破産直前の2018年2月期のシアーズ・ホールディングスの売上高は167億0200万ドル、純利益はマイナス3億8300万ドルであった。
[編集部]