出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ヨーロッパ諸国間で出入国審査なしに自由に国境を越えることを認める協定。2015年12月現在、26カ国が締結。欧州連合(EU)加盟国のうち英国、ルーマニア、ブルガリア、アイルランド、キプロス、クロアチアを除く22カ国のほか、ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタインのEU非加盟国4国が加わっている。
1985年にルクセンブルクのシェンゲンで、同国とベルギー、オランダ、フランス、西ドイツの5カ国が、共通国境管理の段階的撤廃に合意して締結した協定がシェンゲン協定である。90年には、域内の出入国管理の廃止に向けて、どのような施策が必要かを定めた「シェンゲン実施協定」に調印しており、一般的には両協定をシェンゲン協定と呼ぶ。この実施により、95年に締結国間では道路や鉄道、空港でのパスポート検査が廃止されるなど域内国境検査を撤廃し、一方で域外国境の共通管理を整備した。また、不法移民への対処や国境を越える犯罪に対する加盟国間の協力について取り決めた。協定の締結国は広がり、97年には、両協定が他の関連法規と共に、EUの改正基本条約であるアムステルダム条約に組み入れられ、99年に発効した。これにより、当初は欧州共同体(EC)の枠外で取り決められた「人の移動の自由」がEUの法体系に組み込まれることになった。
EU加盟国の中にも、複数国間の自由な移動には麻薬やテロ対策から反対する国もあり、協定締結国はこうした対策を強化してきた。しかし、2005年にロンドン同時爆破テロ事件が起き、中東や北アフリカからの移民・難民が急増したことにより、国境審査の復活を主張する声も根強い。15年11月のパリ同時多発テロ事件後には、EU域内に入る際の国境管理を強化することで合意した。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
欧州連合(EU)の経済統合の土台であり、人や物、サービス、資本などの移動の自由を定める。域内では、パスポート検査など国境審査を廃止している。現在、EU加盟国28カ国のうち英国などを除く22カ国が協定に参加。EU加盟国以外ではスイスやノルウェーなど4カ国が加わっている。
出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報
《Schengen agreement》欧州諸国間において人の移動の自由を保障する協定。加盟国域内での出入国審査を廃止し、域外からの入国者には共通査証(シェンゲン査証)を発給。国境を越えた警察・司法協力を行う。名称は、1985年にルクセンブルクのシェンゲンで調印されたことから。フランス・ドイツ・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの5か国により発足し、1999年発効のアムステルダム条約によってEUの法的枠組みに組み込まれた。→シェンゲン圏
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
国境での検問廃止をめざして,西ドイツ,フランス,オランダ,ベルギー,ルクセンブルクの5ヵ国によって1990年に調印された協定。名称は,この5国の国境に近いルクセンブルクの小村シェンゲンSchengenにちなむ。その後スペインとポルトガルが加わって1995年発効。ヨーロッパ連合の市場統合にともなって掲げられた〈人の移動の自由〉の試みの一環であるが,同時に麻薬取締りの強化,テロ対策など治安・警察の協力体制も整備されることになった。また航空機を国内便扱いにすることや,通信機器・システムの共通化などが行われている。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
ドイツ,フランス,ベネルクス3国によって相互の域内国境での検問撤廃を目指して1985年6月に調印された協定,および90年6月に調印された補足協定をいう。その名称は,調印式が行われたドイツ,フランス,ルクセンブルクの3国の国境が交わるルクセンブルクの小村に由来している。その後,イタリア,スペイン,ポルトガル,ギリシア,オーストリアが協定に加わった。なお,域内国境での検問廃止は,EU(ヨーロッパ連合)が1985年6月に採択した域内市場完成計画に内包された人の自由移動の一部であるが,イギリスの反対にあってEU全体のものとならなかった。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例