日本大百科全書(ニッポニカ) 「シティグループ」の意味・わかりやすい解説
シティグループ
してぃぐるーぷ
Citigroup Inc.
アメリカの大手商業銀行シティバンクを擁する巨大金融サービス会社。1998年10月にシティバンクの親会社である大手銀行持株会社のシティコープCiticorp.(当時全米第2位)と、保険、消費者金融、投資運用などの金融サービスを行うトラベラーズ・グループTravelers Group Inc.が合併し設立された。両社の合併により誕生したシティグループは、銀行、証券、投資サービス、資産運用、各種保険など多角的な総合金融サービスにおいて大きな力を発揮する。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
シティバンク
シティバンクの歴史は1812年に設立されたシティ・バンク・オブ・ニューヨークにまでさかのぼるが、1955年にファースト・ナショナル・バンク・オブ・ニューヨークと合併し、ファースト・ナショナル・シティ・バンク・オブ・ニューヨークとなって飛躍的な発展を遂げた。シティバンクに改められたのは1976年。アメリカの大銀行の多くは、銀行そのものの活動に関する法的規制を免れるため、単一銀行持株会社をつくって自らをその子会社としているが、シティバンクも形式上単一銀行持株会社シティコープ(1967年にファースト・ナショナル・シティ・コーポレーションとして設立、1974年に現社名に改称)の子会社となり、1998年にはシティグループの一員となる。シティバンクの活動は銀行業務のあらゆる分野にまたがっており、海外活動もきわめて活発で、100か国以上に約3000の支店、駐在員事務所、子会社などが配置されている。日本では1902年(明治35)に横浜支店を開設して以来の長い歴史をもつ。また、1981年にはダイナース・クラブDiners Clubを吸収合併するなど、カード業界にも進出した。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
トラベラーズ・グループ
トラベラーズ・グループは1986年に当時の親会社であるコントロール・データControl Data Corp.からスピンオフspin-off(会社がその一部を切り離して独立させること)したコマーシャル・クレジットCommercial Creditがその前身である。1988年、コマーシャル・クレジットは総合金融業のプライメリカPrimerica Corp.を買収後、社名をプライメリカに変更。証券・生命保険に進出したプライメリカは1992年トラベラーズTravelers Corp.の株式27%を取得後、翌1993年すべての株式を取得して投資銀行・証券業のスミス・バーニーSmith Barney Holdings Inc.と合併し、トラベラーズTravelers Inc.に社名変更した。同年、アメリカン・エキスプレスよりシェアソン・リーマン・ブラザーズShearson Rehman Brothersのリテール(小売り・個人金融取引)部門と資産運用部門を買収した。1995年トラベラーズ・グループに社名を変更。1998年、シティコープと合併してシティグループ傘下となった。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
多角的事業展開
シティグループは、シティバンク、投資証券業のソロモン・スミス・バーニー、保険業のトラベラーズ・プロパティ・カジュアルティ、トラベラーズ・ライフ・アンド・アニュイティ、プライメリカ・ファイナンシャル・サービスなどの事業子会社を通して多角的な金融サービスを世界100か国以上で行っている。1999年(平成11)、日興証券(現、日興コーディアル証券)との合弁による日興ソロモン・スミス・バーニー証券会社(NSSB、現シティグループ証券)が設立された。また、1990年(平成2)に業績の悪化から日本ダイナースクラブの全株式を手放したが、日本でのリテール分野強化のため1999年11月に再度買い戻した。1999年の総資産高は7169億3700万ドル、預金高は2610億9100万ドル。
[佐藤定幸・萩原伸次郎]
その後の動き
グループの簡素化、収益率の向上が図られ、証券と銀行を中心とする金融グループに再編された。2002年に損保部門はスピンオフされ、翌年アメリカのセント・ポールSt.Paul社と合併し、2005年には生保・年金部門がアメリカのメットライフMet Life社に売却された。2007年にブランド名を「シティCiti」に変更し、グループ内の投資銀行とプライベートバンク、調査部門、オルタナティブ投資部門でシティの名称を使っている。また、証券部門はシティ・スミス・バーニー、銀行部門はシティバンクを使用している。2008年の総資産高は1兆9384億7000万ドル、預金高は7741億8500万ドル。
[編集部]