一般に金融に関係する業務を行う業態の総称。ここで「金融」とは「資金の融通」をさすことから、基本的には金融業も銀行業、信託業、保険業等の金融仲介機関における業態をさすことになる。しかし広義では、証券仲介機関である証券業も含める場合がある。ただし、俗に「金融業者」という場合、貸金業者のみをさすことも多いことから、金融業といっても「貸金業のみ」を示している場合も存在する。ここでは金融に関係する業態として、証券業も含めた、広い意味での金融業を扱う。
日本では、第二次世界大戦後の1948~1949年(昭和23~24)、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の指示のもとに、公共性の確保、民主的な管理、金融事業の安全かつ健全な運営などを目的に、金融業に関する統一的な法規として「金融業法」を制定する動きがあった。ところがそれは実現せず、銀行法、保険業法、証券取引法など、それぞれの業態について個別の監督法規が「業法」という形で制定され、おのおのが改廃を繰り返しながら推移した。また、金融業を営む会社が他の会社の株式をあまり多数保有すると金融資本による産業支配の危険があるので、独占禁止法は、金融業を営む会社は原則として、他の会社の株式をその発行済株式総数の100分の5(保険業を営む会社は100分の10)を超えて取得し、または所有してはならないと規定されてきた(11条)。
しかし1980年代以降、金融業界を取り巻く環境が変化していくなかで、金融業およびその監督のやり方等も大きく変わっていくこととなった。
1980年(昭和55)に入ると、金融自由化の進展に伴う金融業務の多様化、各種金融機関の同質化、異種企業の金融業務参入などが進んだが、政府は規制・監督のあり方を基本的に変えず、業法の改正等による対応を繰り返していた。しかし、バブル経済の形成および崩壊がおこり、とくにバブル経済崩壊による実体経済の悪化・不良債権問題等が深刻化するなか、金融のグローバル化の進展も重なり、海外からの規制緩和要請や情報開示の動きが激しくなっていった。1990年代なかばまでは子会社による参入を許可する等の改革にとどめ、抜本的な改革は先延ばしにしていたが、1997年の三洋証券の破綻(はたん)に続き、北海道拓殖銀行や山一證券が破綻、アジア通貨危機も重なり、世界的にも金融状態が不安定化したことから、政府の、銀行に対する規制・監督の考え方が変化した。このまま事態を放置すれば世界を巻き込んだ日本発の金融危機にまで発展する可能性があったことから、1998年に銀行に公的資金を注入させるために必要な法律(金融機能安定化法)を成立させ、同時に銀行規制等のあり方を抜本的に変更し、銀行への規制当局として「金融監督庁」(現、金融庁)を置くことになった。加えて、銀行法も改正し、それまでの護送船団方式のような「密室」で物事が決まる不透明な時代から、「ルール」によって処理される時代へと変わることとなった。保険業においても1996年の保険業法の改正の後、段階的に自由化が進み、2001年(平成13)には一部の保険商品の銀行窓口における販売(銀行窓販)が解禁されるようになった(2007年には銀行窓販の全面解禁)。証券業についても市場機能の確保および金融・資本市場の国際化への対応等を図ることを目ざして、2008年にそれまでの証券取引法を全面的に改正して、金融商品取引法が成立した。
このような改革はいまも進行中であり、金融業は現在も大きな変革期にあるといえよう。
[前田拓生 2016年3月18日]
『前田拓生著『成熟経済下における日本金融のあり方――「豊かさ」を実感できる社会のために』(2013・大学教育出版)』
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