改訂新版 世界大百科事典 「シテ方」の意味・わかりやすい解説
シテ方 (してかた)
能楽において,能のシテ,シテヅレ,トモ,子方(こかた),地謡(じうたい),後見(こうけん)の各役を担当する演者とその集団。ワキ方,囃子方,狂言方(三役)に対しての呼称。観世,宝生,金春,金剛,喜多の五流がある。ほかに梅若が一時観世から独立して一流を立てたが,旧に復した(観世流)。従来,能楽界には興行会社,プロデューサー,劇団制が存在しないので,ほとんど多くの場合シテ方各流の家元ないし各流内の有力職分が催会を主催し,興行主と演出家と主演者を兼ねる形が一般的である。演能に際しては上記各役を配役し,別にワキ,囃子,狂言各役に出演を依頼する。古くは地謡専門の地謡方,装束付け専門の物着(ものぎせ)方があったが,現在はそれらの実体,呼称とも存在せず,たとえ地謡専門でもシテ方と称する。なお,作り物もシテ方が作製,管理する。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報