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作り物 つくりもの

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

作り物
つくりもの

能の舞台装置。きわめて簡略化され,象徴的な表現で作られている。演能のたびにシテ方が作り,後見によって舞台に出し入れされる。おもに竹を骨として,細布を巻いたり,緞子 (どんす) でおおったりして作る。物によっては,木の枝や造花を添える。舟,車,塚,山,岩,宮殿輿鐘楼,わら屋,萩小屋,立木台,井筒,鐘などがある。狂言でも作り物を用いるが,例は少い。

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デジタル大辞泉の解説

つくり‐もの【作り物】

人の手で実物そっくりに作ったもの。まがいもの。人造物。模造品。「作り物のダイヤの指輪」
事実に基づかず、虚構によって作り出した事柄、または文学作品。
「何だか小説か―のようで」〈逍遥当世書生気質
狂言で、舞台に据える簡単な装置。山・舟・宮殿・釣鐘など。小道具にもいう。
歌舞伎などの芝居で、舞台装置のこと。大道具。
祭礼などで、趣向をこらした人形などの飾りもの。
田畑で作るもの。農作物。
「あの者が―少しも損ねざるやうに」〈浮・桜陰比事・二〉

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百科事典マイペディアの解説

作り物【つくりもの】

能の舞台で用いる塚,立木,釣鐘など。簡素に模したものを作り,演能がすめば解体される。後見が運んで舞台にすえる。なお広義には,手で持つ道具のうち,毎回作り替える釣竿(つりざお),箒(ほうき)なども含める。

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世界大百科事典 第2版の解説

つくりもの【作り物】

祭り,民俗芸能能楽で用いる道具。祭り,民俗芸能では山(やま),塚,舟,御殿,山車(だし),鉾(ほこ)などの作り物が神のよりしろとしての意味をもつ。とくに中世に盛行した風流(ふりゆう)の芸態においては,踊りを主体とした〈風流踊〉に対して,作り物を中心とした〈作り物の風流〉が一類をなすほどに重視された。しかし,今日,芸能用語として一般に作り物というときは能楽に用いるそれを指す。 能楽の作り物は,舞台装置に似て舞台上に設置される据え道具と,小道具に似て人物が携帯する手道具とに大別され,主として前者をいう。

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大辞林 第三版の解説

つくりもの【作り物】

人が作ったもの。ある物に似せて作ったもの。 「 -の花」
虚構による物語。
祭礼などで、人や物などの形に作って飾った出し物。
能・狂言などで、舞台に道具立てとして置く車・塚・井筒・山・立ち木・鳥居などの模造物。
農作物のこと。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

作り物
つくりもの

能と狂言の用語。簡素な、あるいは象徴的な舞台装置。一度製作して保存し反復使用する小道具に対することばで、上演のたびに新しくつくられるものという意味。現在では作り物も保存されることが多い。後見によって舞台に持ち出され、不用になると引いてしまう。竹で骨組をつくり、多く包帯状の白い布を巻く。『船弁慶』の舟、『熊野(ゆや)』の牛車(ぎっしゃ)などは輪郭を示すだけの単純なものだが、場面を変え、空間をくぎる優れた演出効果がある。『定家(ていか)』の塚、『黒塚(くろづか)』の荒野のあばら家などは人物を静止の状態で舞台に登場させるために用い、引回しという覆いを後見が下ろしてシテの姿を現す。『羽衣』の松、『吉野天人』の桜などの立ち木台もある。『松風』の潮汲(しおく)み車、『三井寺(みいでら)』の鐘楼などミニチュア化されて舞台に美観を添える作り物の一方、『道成寺(どうじょうじ)』の実物大の鐘は舞台につり上げられ、飛び込んだシテの姿を飲み込んだまま瞬時に落下させるなど、ダイナミックに用いられる例もある。役者が手にとって使用する、実物に近い弓、矢、熊手(くまで)、箒(ほうき)、幣(へい)なども、また、シテによって投げられ舞台の消耗品である『土蜘蛛(つちぐも)』の千筋の蜘蛛(くも)の糸も作り物である。なお、作り物の制作はシテ方の職責である。[増田正造]

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世界大百科事典内の作り物の言及

【小道具】より

… 日常に使用しているものをそのまま使うときは〈本物〉といい,特別に作ったものは〈拵(こしら)え物〉,使い捨ての消えてしまうろうそく,煙草(たばこ),食べ物を〈消え物〉,こわすことを目的とした皿,茶碗,三宝などを〈壊れ物〉,動く動物,鼻緒が切れる履物,しおれる草花,射られた態(てい)で立つ矢など,あらかじめ仕掛けを施した道具を〈仕掛物〉と呼称している。能,狂言では歌舞伎の大道具に該当する職掌はなく,能舞台に置く塚,建物,舟や車など象徴的な据え道具は〈作り物〉,手に持つ中啓,刀,釣りざお,持ち枝などを〈小道具〉または〈手道具〉とよんでいる。歌舞伎の小道具は,〈附帳(つけちよう)〉(演目ごとに各幕,各場別に用いる出道具の品目と,各登場人物の役名,配役名別に持物,冠り物,差し物,履物などを分類して記載した基本台帳)に記され,舞台稽古に間に合わせて劇場へ搬入される。…

【能】より

…謡の詞章と音楽と役者の所作ですべてを描き出すのだが,無装置であることがかえって観客の想像を豊かにし,劇空間の広がりをもたらしているということができる。能舞台
【作り物】
 能の演目によっては,竹を主材とする簡素な意匠の道具を舞台に据えることがある。これを作り物と称する。…

【風流】より

…これら貴族社会の風流は,しばしば朝廷から禁令が出るほどに華美なものであったが,南北朝期に入ると力をつけてきた町衆や地方の有力農民層にも浸透し,とくに彼らが担い手となった祭礼の芸能の中で大きく花開いた。このため,一般に風流と称した場合,室町時代の社寺の祭礼などに,さまざまな扮装や仮装で笛・太鼓・小鼓・鉦(かね)などに囃されて繰り出した〈囃子物(はやしもの)〉や,それからさらに発展して,趣向をこらした踊り衆がまわりについた〈風流踊〉,また文学や和歌の心を意匠化した風情ある〈作り物〉をいうのである。室町期成立の《下学集》にも,〈風流〉を〈風情の義也。…

※「作り物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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