能楽において,《翁》の三番叟(さんばそう)と風流(ふりゆう),能のアイ(間狂言),独立した劇としての狂言(間狂言と区別していうときは本狂言と称する)の演技を担当する演者のこと。シテ方,ワキ方,囃子方に対しての呼称。歴史的には,大和猿楽四座をはじめ各地の猿楽の座に所属するかたちで狂言を専門に演ずる役者ないし集団があり,室町末期に流派の分化をみた。江戸期には大蔵流・鷺流・和泉流の3流が並び立ち,このうち鷺流は大正期に滅びたので,現在は大蔵・和泉の2流が活動している。能楽に携わる演者を総称して能楽師または能役者と称し,狂言方も広義には能楽師,能役者だが,それとは別に狂言方の演者だけをさす狂言師という呼称もある。なお《翁》においては,シテ方が下掛(しもがか)り三流(金春(こんぱる)・金剛・喜多)の場合は,千歳(せんざい)の役と面箱(めんばこ)の役を兼ねて狂言方が演じ,上掛(かみがか)り二流(観世・宝生)の場合は,千歳はシテ方が,面箱は狂言方が演ずる。
執筆者:羽田 昶
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能楽の上演において狂言(本(ほん)狂言、間(あい)狂言、三番叟(さんばそう)および風流(ふりゅう))を勤める役者。狂言師と同義に使われることもあるが、厳密には狂言を本業とする玄人(くろうと)が狂言師で、狂言方には素人(しろうと)でもなれる。江戸時代にはシテ方の流儀あるいは家に特定の狂言方が専属するのを原則としたが、現在は大蔵(おおくら)、和泉(いずみ)2流の役者が、シテ方五流(観世(かんぜ)、宝生(ほうしょう)、金春(こんぱる)、金剛(こんごう)、喜多(きた))の狂言方を勤めている。なお初期歌舞伎(かぶき)には、滑稽(こっけい)な演技を担当する者として、道化(どうけ)方と並び狂言方という役柄が存在したが、のちには歌舞伎の作者(狂言作者)のうち、下級の者を狂言方とよんだ。
[小林 責]
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[江戸時代]
江戸時代に入ると,狂言は能とともに武家の式楽となって幕藩体制に組み込まれる。能のシテ方支配が確立し,狂言方はワキ方・囃子方とともにその服属下に入った。しかしそれは同時に,狂言方が武士に準ずる待遇を受け,演目も定着し,役者は技芸を磨くことに専念できるという体制でもあった。…
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【役籍】
能は,役に扮して舞台に立つ立方(たちかた)と,もっぱら音楽を受け持つ地謡方(じうたいかた),囃子方とで成り立つが,それぞれの中で技法がさらに分化し,室町時代末期に七つの専門が確立した。立方を勤めるシテ方,ワキ方,狂言方と,囃子方である笛方,小鼓方,大鼓方,太鼓方の7役籍がそれで,江戸時代以降,互いに他の専門を侵さない規律ができ,現在でもそれが守られている。なお,地謡はシテとの関連性が強いためにシテ方が勤める。…
※「狂言方」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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