後見(読み)コウケン

デジタル大辞泉 「後見」の意味・読み・例文・類語

こう‐けん【後見】

[名](スル)
年少の家長・主人などの後ろだてとなって補佐すること。また、その役目の人。うし
法律で、親権者のない未成年者成年被後見人などを監護し、その財産の管理などを行う制度。うし。→成年後見制度法定後見
能・狂言・歌舞伎・舞踊などで、演技者の後方に控えて、装束の直し、小道具の受け渡し、その他演技の進行の介添えをする者。
鎌倉幕府執権連署、また、室町幕府関東管領をさしていう。うし
後日に出会うこと。再会すること。
「我は一時の命なれば―を期し難し」〈海道記
後になって書物などを他人が見ること。また、その人。
「―の人、若し錯謬有らば之を削り」〈雑談集・一〇〉
[類語]黒子保護

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「後見」の意味・読み・例文・類語

こう‐けん【後見】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( 「後見(うしろみ)」を音読した語 ) 背後から世話、監督すること。
    1. 一国一郡の長や家長などが年少であるとき、その代理となったり、補佐したりすること。また、その人。
      1. [初出の実例]「朝隆自本家御後見之人也」(出典:中右記‐長承三年(1134)三月五日)
      2. 「以て其勢力に依りて監督し、後見するの外あることなし」(出典:政党評判記(1890)〈利光鶴松〉一〇)
    2. 鎌倉幕府の将軍に対する執権の政治的位置。
      1. [初出の実例]「相州、武州為軍営御後見」(出典:吾妻鏡‐貞応三年(1224)六月二八日)
      2. 「皆以将軍家御後見として、政務を申行、天下を治る」(出典:梅松論(1349頃)上)
    3. 室町幕府が関東地方を治めるためにおいた関東管領をさしていう。
      1. [初出の実例]「鎌倉の御後見にて山の内殿の先祖是也」(出典:鎌倉大草紙(16C中か))
    4. 寺院で、幼少の者を世話する僧。
      1. [初出の実例]「暫くの間別当に御預け候へ、こうけん申たく候ふと仰せければ」(出典:御伽草子・花みつ(有朋堂文庫所収)(室町末))
    5. 戦国時代の武家で一家の主が幼少で家督をついだとき、その家長にかわり、一族を指揮し、領地を治め、また軍役を務めるなどしたもの。名代。陣代。
      1. [初出の実例]「其子国千代丸忠政今年十歳なりし故康高の聟榊原式部大輔康政後見して此度の一挙にも彼被官合属等康政の指揮に従て出陣せり」(出典:関八州古戦録(1726)一七)
    6. 職務を監督、補佐する役。また、その役の人。
      1. [初出の実例]「此方の衆も沙汰人并後見中間衆已下令同道打帰り」(出典:鵤荘引付‐永正九年(1512)七月二九日(兵庫県史))
    7. 江戸後期、徳川幕府で将軍が幼少のとき、これに代わって政務をとる大老や老中の上におかれた臨時の職。家茂が将軍になったとき、前将軍の遺言によって田安慶頼がその職についたのが最初。
      1. [初出の実例]「田安中納言政事後見の旨諸向へ達」(出典:徳川禁令考‐前集・第二・巻一四・安政五年(1858)八月)
    8. 民法で、成年被後見人または親権者のいない未成年者を保護し、その財産管理や法律行為を代理する職務。また、その制度。
      1. [初出の実例]「後見の計算は後見監督人の立会を以て之を為す」(出典:民法(明治二九年)(1896)九三八条)
    9. ( 後見をする人は実際に権力を持っていることが多いところから転じて ) 権威・威光をいう。
      1. [初出の実例]「親のこうけん是非(ぜひ)なうて、どうなり共と言ひました」(出典:浄瑠璃・心中万年草(1710)中)
    10. 催事などの際、諸般に気を配って世話をする役。
      1. [初出の実例]「後見の入道の梴にて聴聞しけるが聞かねて」(出典:梵舜本沙石集(1283)六)
    11. 能、狂言、歌舞伎、舞踊などで演技の際、後見座に控えて、演技者の装束を直したり、作り物や小道具を扱う役。演技者に事故が生じた場合はその代役を務めることもある。
      1. [初出の実例]「師匠の後見にゆきて気を付て打をきけば」(出典:随筆・独寝(1724頃)上)
  3. [ 二 ] 後に見ること。時間を経過してから見ること。
    1. 後に出会うこと。再会すること。
      1. [初出の実例]「我は一時の命なれば後見を期し難し」(出典:海道記(1223頃)萱津より矢矧)
    2. 書物などを後日に他人が見ること。また、その人。
      1. [初出の実例]「云手跡、云文言、後見雖其憚、病中自筆奉之」(出典:高野山文書‐嘉元元年(1303)一〇月一三日・阿闍梨明俊御影堂田寄進状)
      2. 「まことに短慮未練の至、後見の嘲り」(出典:吾妻問答(1467頃))

後見の補助注記

[ 一 ]について、「浄瑠璃・嵯峨天皇甘露雨‐一」「それこそ親の荒権(クウゲン)、取かやしたがよいはいの」や「浮世草子・風流茶人気質‐一」「家主の高見(カウケン)にてのっぴきさせぬ様に」のように「高見」「荒権」などの表記や「こうげん」と濁った例もある。


うしろ‐み【後見】

  1. 〘 名詞 〙 ( 人の後ろにいて、その人を見守るの意から ) 世話をすること。後ろだてとなって力添えをすること。また、その人。おしろみ。
  2. 摂政、関白、将軍、その他政治の実権者が天皇を、執権が将軍を、臣下が主君を、妻が夫を世話すること。また、親が子を、夫が妻をなど、上位の者が下位の者の面倒を見る場合についてもいう。
    1. [初出の実例]「此の三位中将、〈略〉人のうしろみしつべき心あり」(出典:落窪物語(10C後)二)
    2. 「于今(いまに)摂政関白として〈略〉天皇の御後見として政(まつりごち)給ふ」(出典:今昔物語集(1120頃か)二二)
  3. 幼少の者、または能力のない者を助け、力添えすること。また、その人。特に、一家の主人など責任のある立場の者がその責任を果たせない場合に、関係者が補佐することについていう。こうけん。
    1. [初出の実例]「年を数ふるに十二ばかりにこそなるらめ。〈略〉ゐていでてまじらひなどをこそせさせめ。そのうしろみもたれかせん」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)

後見の語誌

( 1 )公私にわたる物質的精神的補佐役・後見役の人をいうが、上代の用例は認められず、平安中期以降に定着した語らしい。「うしろみ」と称される人物の範囲は広く、親・夫・親戚・乳母などに及んでいる(多くは家族関係)。
( 2 )「後見(こうけん)」は漢語として認定できないので「うしろみ」の漢字音読と考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「後見」の意味・わかりやすい解説

後見 (こうけん)

未成年者には,生活につき配慮をしてくれる者が必要であり,さらに,財産があればこれを管理してくれる者も必要である。また,禁治産者については前記の者のほか,療養看護をしてくれる者が必要である。これらの必要を満たすものを後見制度といい,前者を未成年後見,後者を禁治産後見という。まず前者について述べ,後者については前者との差異点のみを述べることにする。

日本の民法では,未成年者の親が親権者となり未成年者を保護するのが原則である。しかし,未成年者に親がいないとき,または,親があっても親権喪失や親権行使不能のため保護の任務を果たすことができないときには,後見が開始し(民法838条1項),親権者の役割を代行する後見人がおかれる。このように後見は親権を補充する制度であるから,後見の内容は親権に準じ,ただ,後見人には親のような無私の愛情を期待するのが無理であるから,親権の場合と違って後見監督の制度がおかれているのである。しかし,後見が開始したといっても,実際上は,必ずしも後見人が決められるわけではなく,親類などが事実上未成年者のめんどうをみてやっている場合が多い(事実上の後見)。ただ,15歳未満の未成年者が養子にいくとか,未成年者所有の不動産を売却するとか,死亡した親権者の保険金を受け取るとかの場合に,はじめて法律上,法定代理人が必要となり,後見人選任がなされるのが普通である。

後見の任務を果たすための機関の中心は,後見人であり,そのほか,後見監督制度が働くことがある。(1)後見人 後見人になるのは,通常家庭裁判所によって選任された者(選任後見人,また選定後見人ともいう。841条)であるが,まれに,親権者であった者がその死亡に際し遺言で後見人を指定することもあり,その場合には指定された者が後見人になる(指定後見人。839条)。なお,禁治産者,準禁治産者,破産者等の欠格事由がある者(846条)は,後見人にはなれない。後見人は,老齢,疾病,遠隔地居住等の〈正当事由〉があれば,辞任することができる(844条)。また,後見人が不正な行為をするなど,任務に適しないときには,家庭裁判所は後見人を解任することができる(845条)。(2)後見監督 後見人の仕事を監督し,かつ,補充する者が後見監督人である(848,849条)。後見監督人が後見人と特別な身分関係にあると監督の実効を期しがたいので,後見人の配偶者,直系血族兄弟姉妹は後見監督人にはなれない(850条)。さらに,必要があれば,家庭裁判所は,後見人や後見監督人の仕事を監督しうる建前になっている(863条)。

後見人のすべき仕事については,後見人就職時(853条以下),在職中(856条以下),後見終了時(870条以下)の3時点に分けて詳細な規定がおかれている。(1)後見人就職時の事務 後見人は被後見人の財産全体の状況を把握する必要があり,かつ後見人の職務の公正を期する点から,就職後遅滞なく被後見人の財産を調査し,1ヵ月以内にその目録を調製しなければならず(財産調査,財産目録調製,853条本文),また,被後見人の財産を保全し,不必要な支出をおさえるために,被後見人の生活,教育ならびに財産管理に要する年間の費用を,あらかじめ定めなければならないことになっている(861条)。(2)在職中の事務 後見人の仕事は,ほぼ親権者のそれと異ならないが,後見人になる者は通常親ほど親身でない可能性があるから,後見人に対しては,親権者に対してよりも若干詳細な拘束が課せられている(たとえば855,856条)。(a)後見人は,被後見人を健全に育成するため,彼を監護教育する権利(820条),そして,居所指定権,懲戒権,職業許可権(821~823条)をもつ。(b)後見人は被後見人の財産を管理し処分する権限(859条1項)をもっている。(3)後見終了時の事務 被後見人が成年に達したり,婚姻して成年として扱われるに至った場合には(753条),後見人を必要としなくなるから,後見監督人があればその立会いのもとで,被後見人の財産について生じたいっさいの収入・支出の計算をしなければならない(870,871条)。

学者のなかには,未成年者の保護のための制度が,現行法では親権と後見とに分かれているのを,一本に統一しようとする考え方がある。つまり,未成年者の保護にあたる者を,親であれそうでない者であれ,これを後見人と呼ぼうとするものである(親権後見統一論)。この議論は,親権という言葉が親の子を支配する権利であるような感じを与えることを避け,子の立場を中心として論じようとする点で意味があるが,この立場に立つ人も,多くは親が後見人になる場合には,後見監督をあまり働かさないことにすべきだとしているから,実質的には現行制度と大差がない。

禁治産者についても,これを保護する必要があるから,後見人がおかれる(838条2号)。禁治産者に配偶者がいる場合には,配偶者が当然に後見人になり(法定後見人。840条),配偶者がいないときには家庭裁判所が後見人を選任する(選任後見人。841条)。後見人の職務としては療養看護が中心であり(858条1項),家庭裁判所の許可があれば,禁治産者を精神病院に入れることもできる(858条2項)。
執筆者:

以上に述べられた後見の諸問題は,関係人の1人以上が外国に国籍や住所をもつ場合にはどうなるであろうか。この場合,原則としては後見を必要とする要保護者(未成年者または禁治産者・準禁治産者)の本国の法律によって処理されるが,例外的に日本の法律が基準とされる場合もある。すなわち要保護者の本国法上は後見開始の原因があるにもかかわらず,後見人が,選任されていないなどでいなかったり,いても国外に住むなどして現実に実効的な監護・管理をなしえないようなとき,および禁治産後見の場合は,日本で禁治産宣告がなされたとき,以上がこれにあたる。いずれの場合も,日本に住所または居所をその要保護者本人がもっている必要がある。たんにその者の財産が日本に在るというだけでは足りない(法例24条。4,5,25条参照)。以上の原理自体は明快のようであるが,その適用にあたって,とくに未成年者に対する後見に関し,困難な問題を生じることが少なくない。親権の尽きたところから後見が始まる,といわれるように,それが一国の法体系の中だけで処理される限り親権と後見とは支障なく連携するようにつくられており,問題はほとんどないはずである。けれども国際私法上は,親権の基準となる法律(父または母の本国法)と後見のそれ(被後見人の本国法)とが,それぞれの国籍が異なる場合など,必ずしも同一の国法とはならないために困難を生む。(1)親権の準拠法によれば後見が開始するとなっているのに,後見の準拠法ではいまだ後見は開始の原因がない,(2)たしかに後見準拠法上も後見は開始するが,それは法律であらかじめ順位をつけて定められていて裁判所によって選任する必要がない,(3)後見準拠法は後見開始原因があるとしているのに対して,親権準拠法はいまだ後見が始まるとはしていない,こうした事態である。

 けれども,なによりもまず明確にしておかなければならないのは,後見開始原因のあるかないかを決定できるのはあくまでも後見の準拠法であって決して親権のそれではない,という点である。親権の準拠法は,ただ親権者がいるかいないか,この点だけを決定できるにすぎないのである。もっとも,その親権者が国外にいたり病気,老齢,失業などの理由で,実効的な養護を現実に行いえないようなときに後見が開始するかどうかは,後見の準拠法によって定められる。上に指摘した(2)の場合も,同様に要保護者に対する実効的な保護を確保する考慮から,次のようにすべきであろう。つまり,法律上定められている後見人が実効的な保護を現実に行いえないときは,法例24条2項にいう〈後見ノ事務ヲ行フ者ナキトキ〉にあたるから,日本法に従って処理し後見人を選任する,というようにである(韓国民法932~935条,中華民国民法1094条等参照)。アメリカ人の非嫡出子を生んだスウェーデン人の母が病気で死ぬ前に生後1年ほどの幼児の養育を日本人夫婦に委託していたところ,在日スウェーデン公使が本国で監護権者に選任されたとして,幼児の引渡しを求めた事例がある(東京高裁1958年7月9日判決・家裁月報10巻7号29頁)。これは前段までに述べられたものとは異なり,本国で選任された監護権者が日本で権利を行使するという事態であったが,裁判所は引渡しを認めた。本人の本国で適法に選任されている以上は,実効的な保護養育を現実に行いうる限りで,日本においても承認すべきものとするのが現行法の建前である,と考えられたからであろう。

 さらに問題となるのは各国における公的社会法的保護(日本では,例えば児童福祉法などによるもの)と私的家族法的保護(親権あるいは後見)との関係が,そのいずれを重視するかの点で異なっており,国際的に摩擦を起こすところである。母とスウェーデンで居住していたオランダ国籍の未成年子に対し,母の死後オランダ法上はオランダ人父の〈後見〉が開始したが,船員という職業がら保護の実を果たしえないので,オランダの裁判所はあらためてオランダ人女性を後見人に選任した。他方,スウェーデン児童福祉局は自国内に居住する未成年子のため独自に保護教育措置を講じたが,それは実質的にオランダで選任された後見人の権限を制限するものであった。そのため,オランダ政府はスウェーデン政府を相手どり,未成年子の〈後見〉に関する条約(1902年,ハーグ)に基づき,国際司法裁判所に条約違反を訴え出た。この条約によれば本国の措置を優先すべきこととなっていたからである。スウェーデン法上の保護教育措置は〈後見〉に含まれず,したがって条約違反はないと判示されたが,ここには私法上の保護と社会法的なそれとの交錯がよく示されていよう。史上有名なボル事件である(1958年11月28日判決)。こうした困難を避けるため〈後見〉という語をあえて使わず,行政機関による措置をも規律の対象に含め,未成年者の常居所地国に原則的な権限を認めた〈未成年の子の保護(Protection of Minors)に関する官庁の管轄および準拠法に関する条約〉がハーグ会議で採択された(1961年採択,69年発効)。しかし,これによってもなお,本国官庁の権限が常居所地国のそれに優位する場合が認められていたため,その間の権限の調整に問題を残していたので(4条),未成年者の常居所地国の権限を一層強化し,あわせて国家間の積極的な連携・協力義務を内容とする改正条約が採択されるにいたっている(1996年10月,ハーグ)。この条約の精神を成人の保護にも及ぼすため,成人の保護に関する条約の制定が構想され,その1999年10月における成立を目指して,日本を含めたハーグ会議関係諸国は鋭意努力中である。
執筆者:

古代以来,朝廷,寺社,武家あるいは個々の氏や家において,長官・主人などが幼少・病弱等の理由で任を果たせないとき,その補佐をしたり代行したりすること,あるいはその行為にあたる人を後見といい,〈うしろみ〉とも呼んだ。朝廷における摂政はある種の後見であり,鎌倉幕府の執権連署も将軍補佐に由来するところから後見と呼ばれ,室町幕府では関東管領が後見と呼ばれることがあった。戦国時代には大名が幼少の際,政務,軍事万般を代行・指揮する後見があり,江戸時代後期にも将軍職に対する後見が置かれることがあった。個々の貴族・武士の家に必要に応じて後見が置かれたのはいうまでもないが,南北朝時代に成立した猿楽能において演者の代役・世話役として控える者を後見といったのは,後見が広い分野に置かれたことを示す一例である。後見となる人は,個々の氏や家では近親の有力者が通例であったが,朝廷,幕府,大名など公的機関では非血縁の有力臣下が務めることもあった。

 戦国時代武士の間には,軍事的必要から陣代・番代と呼ばれる特殊な後見人が存在した。これは未成年の被後見人に代わり封的(軍事的)勤務に服するほか,被後見人の所領を管理・収益し,彼に堪忍分(かんにんぶん)を与えてこれを扶持(ふち)するものであった。それは主君のための後見人で,その任命は主君の選任もしくは許可によった。江戸時代泰平の世を迎えると,陣代・番代の制は幕府法上認められなくなった。古代からの代理人による後見や,中継相続の形をとる事実上の後見は,戦国期や江戸時代の武士にも見られないわけではないが,むしろ庶民の間で行われた。庶民の場合,相続人(家の新戸主)が未成年もしくは女性(ただし女性相続は認められない場合もある)であれば,親族の協議によって選ばれた後見人(代判人)が付せられ,被後見人に代わって家業を務め,租税等を負担するのが普通であった。これは家のための後見人であるが,中には年貢徴収の目的から百姓の後見人選定に藩が介入し,領主のための後見人と見られるべき場合も存在した。
執筆者:

イスラム法は未成年者(男女ともシャーフィイー派では15歳未満,ハナフィー派では18歳未満の者)には独立して法律行為を営む能力がないものとみなし,これに後見人walīを指定する。両親が婚姻中は子どもは親権に服するが,両親が別居または離婚した場合には母親が後見人となって子どもの養育に責任を負う。母親が死亡したり後見人としての資格を失ったときには祖母が後見人となり,祖母がいなければ曾祖母,次いで父親が後見人となる。また婚姻問題の処理や財産管理を目的とした後見には,本人の父親か祖父,あるいは遺言による男の指定後見人が指名される。この場合の後見人はみずからの意志に従って婚姻をとりまとめ,相当な理由があれば被後見人の財産を自由に処分する権利を有していた。

 イスラム社会では,以上のような法定の後見人とは別に,奴隷が主人の子どもの後見人となって,その教育や保護の任に当たることがしばしばあった。これはイスラム以前のアラブ社会に根ざす慣習であるが,アッバース朝(750-1258)時代に成立したワジール(宰相)の職も,当初は解放奴隷(マワーリー)によって占められることが多く,カリフの個人的な補佐役としての性格を多分に残していた。またセルジューク朝(1038-1194)時代に登場するアター・ベクも,元来は君主の子どもの養育係を務めた奴隷であり,この地位を利用して勢力を拡大すると,やがて自立して各地に独立の王朝を樹立するに至った。この伝統はマムルーク朝(1250-1517)にも受け継がれ,幼少のスルタンが即位すれば,その父親に扶養されたマムルーク(奴隷軍人)出身の有力アミールが後見人として大きな勢力をふるったのである。
執筆者:


後見 (こうけん)

(1)能・狂言の役種。開演と同時に作り物が必要な場合は舞台に運び出して据え置き,上演中は舞台の後座(あとざ)の向かって左の隅に座して演技を注視し,舞台進行に応じて随時シテその他の役の装束を直したり,作り物,小道具を取り扱ったりする。通常,能は2人,狂言は1人だが,習い物などの重い演目では能は3人,狂言は2人になることがある。2人以上のときは,主要なほうを主後見(おもこうけん)という。不測の事態,たとえば演者が絶句したときに詞章をつけるのは後見の役目であり,極端な例としては演者が演能中に発病もしくは故障を生じたとき,後見が即座に代わって演能を続行することになっている。また,開演前にシテの装束を着装する役として,かつては物着方(ものぎせかた)という専門の職掌があったが,現今はこれも後見が担当する。後見はこのように広汎かつ重大な任務をおびているので未熟な演者には勤まらず,とくに主後見にはシテと同格またはそれ以上の芸歴や実力をもつ演者が当たる。なお,ワキ方や囃子方各役にも演目と必要に応じて後見が登場する。顕著な例は能《道成寺》で,鐘引き後見を含めてシテ方8人,狂言方4~6人,囃子方4人の後見が動員される。
執筆者:(2)歌舞伎,日本舞踊で,演者のかげにいて演技の補助をする役。衣装の着がえその他扮装の手伝い,小道具,合引(あいびき)類の受け渡し,差し金の操作などが役目で,つねに演技中の形の美しさを重んずる歌舞伎の特性の一例である。一般の歌舞伎劇では,目だたないように〈黒衣(くろご)〉と呼ぶ黒木綿の着物と頭巾をつけるので黒衣(または黒ん坊)という語が後見の俗称のように使われるが,舞踊では素顔で黒の紋付・袴を着て勤め,〈歌舞伎十八番〉など様式性のとくに強い演目では〈裃後見(かみしもごうけん)〉といって,鬘と裃をつけた扮装で勤める。後見は舞台に出ていても登場人物と見なさないのが約束であるが,演者に支障が起きたときはただちに代演できる技量のある人が勤める。また,引抜き,ぶっ返りなど歌舞伎衣装独特の仕掛けの処理にも熟練が必要。ふつう演者の門弟が勤めるが,演者が未熟な場合や,追善,襲名など特殊な演目の場合には,親,師匠,先輩,同輩なども受けもつ。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「後見」の意味・わかりやすい解説

後見(法律)
こうけん

未成年者や、精神上の障害により判断能力(事理を弁識する能力)がない者または不十分な者を支援する制度。民法に規定されている後見制度(法定後見)は、未成年者に対する未成年後見制度と成人に対する成年後見制度に大別される。そして、成年後見制度については、1999年(平成11)12月8日の民法改正により、成年後見・保佐・補助の三つの類型が整備されるとともに、契約によって行われる任意後見制度が創設された。すなわち、同日に、「民法の一部を改正する法律」(平成11年法律第149号)、「任意後見契約に関する法律(通称、任意後見契約法)」(平成11年法律第150号)、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成11年法律第151号)、および、「後見登記等に関する法律(通称、後見登記法)」(平成11年法律第152号)が公布され、2000年(平成12)4月1日に施行された。

 以下では、未成年後見制度と成年後見(法定後見・任意後見)制度を概観する。

[野澤正充 2022年4月19日]

未成年後見制度

〔1〕未成年後見の開始
未成年者の保護は、親権制度を通して、未成年者の父母によって行われるのが原則である(民法818条以下)。それゆえ、未成年後見は、未成年者に対して親権を行う者がないとき、または親権を行う者が管理権を有しないときに開始する(同法838条1号)。

 なお、2018年の民法改正(平成30年法律第59号)により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、2022年(令和4)4月1日から、18歳未満の者が未成年者となった。

〔2〕未成年後見人の選任
未成年者に対して最後に親権を行った者が遺言で後見人を指定した場合には、指定された者が未成年後見人になる(民法839条1項)。遺言による指定がない場合には、未成年被後見人(本人)またはその親族その他の利害関係人の請求によって、家庭裁判所が未成年後見人を選任する(同法840条1項)。

 2011年以前は、未成年後見人は自然人であり、かつ、1人でなければならなかった。しかし、同年の民法改正(平成23年法律第61号)により、法人や複数名の未成年後見人を選任することができるようになった(同法840条2項・3項)。

〔3〕未成年後見人の事務
未成年後見人の事務は、身上監護と財産管理である。すなわち、未成年後見人は、親権者と同様に、監護・教育の権利義務があり(同法857条)、かつ、その財産を管理し、未成年被後見人の代理人となって法律行為をする権限を有する(同法859条)。しかし、財産管理については、親権者の場合より厳しい監督のもとに置かれる。すなわち、未成年後見人は就職の際に未成年被後見人の財産目録を作成しなければならず(同法853条)、いつでも家庭裁判所から後見事務の報告を求められる(同法863条)。また、未成年後見監督人が置かれている場合には、未成年被後見人のための重要な行為については、その同意を得なければならない(同法864条)。

〔4〕未成年後見監督人
後見人の仕事を監督することを主たる任務とする。未成年後見監督人は、遺言で指定される場合(同法848条)と、未成年被後見人、その親族または未成年後見人の請求により、家庭裁判所が選任する場合(同法849条)とがある。さらに、家庭裁判所は、その職権によって未成年後見監督人を選任することもできる。

[野澤正充 2022年4月19日]

成年後見制度

成年後見制度には、家庭裁判所が成年後見人等を選任する法定後見制度と、本人と将来後見人になる者との間の契約(任意後見契約)に基づく任意後見制度がある。

[野澤正充 2022年4月19日]

法定後見制度

法定後見制度には、保護を必要とする者(本人)の判断能力(「事理を弁識する能力」)の程度に応じて、(1)成年後見、(2)保佐、および、(3)補助の三つの類型がある。

(1)成年後見類型
1999年の改正前民法の禁治産に相当する。精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者を対象に、家庭裁判所が後見開始の審判を行う(民法7条)。そして、後見開始の審判を受けた者は成年被後見人とされ、これに成年後見人が付される(同法8条)。成年後見が開始されると、成年被後見人は、日用品の購入その他の日常生活に必要な範囲の契約以外は、単独で行うことができなくなる。すなわち、成年後見人は、成年被後見人のした法律行為を取り消すことができる(同法9条)。また、成年後見人には、成年被後見人の財産に関する法律行為についての代理権が付与される(同法859条1項)。

(2)保佐類型
1999年の改正前民法の準禁治産に相当する。精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者が対象となる(同法11条)。ただし、改正後の民法では、浪費者(前後の見境なく財産を浪費してしまう癖のある者)は対象とならない。保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とされ、保佐人が付される(同法12条)。保佐が開始されても、被保佐人は行為能力を失わないため、法律行為を行うことができる。しかし、元本の領収、借財、保証、不動産または重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、訴訟行為等、一定の重要な財産行為については保佐人の同意を得なければならず(同法13条1項)、その同意を得ないでしたものは、被保佐人または保佐人が取り消すことができる(同法13条4項)。このように、保佐人には、一定の法律行為についての同意権と取消権が認められる。そのほか、民法は、家庭裁判所が、特定の法律行為について、保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができるものとした(同法876条の4)。

(3)補助類型
1999年の民法改正によって新設された類型であり、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者を対象とする(同法15条)。すなわち、軽度の精神上の障害などにより判断能力が不十分な者のうち、保佐よりも判断能力が高い者が対象となる。補助開始の審判を受けた者は、被補助人とされ、補助人が付される(同法16条)。補助が開始されても、被補助人(本人)は行為能力を失わない点では、保佐と同様である。しかし、保佐のように、補助人の同意を要する行為が列挙されず、家庭裁判所が、特定の法律行為(たとえば、土地の売買契約など)について、審判により、補助人に代理権(同法876条の9)または同意権・取消権(同法17条)の一方または双方を付与する。なお、補助の開始決定にあたっては、本人が請求した場合を除いて、本人の同意を得なければならず(同法17条2項)、本人の意思を尊重する制度になっている。

 成年後見制度の利用者数は増加傾向にあるものの、認知症高齢者の総数と比較すると、その利用率は低い。2016年4月8日、「成年後見制度の利用の促進に関する法律(通称、成年後見利用促進法)」(平成28年法律第29号)が成立した。この法律は、(1)成年後見制度の理念(ノーマライゼーション・自己決定権の尊重、身上の保護の重視)の尊重、(2)地域の需要に対応した成年後見制度の利用の促進、および、(3)成年後見制度の利用に関する体制の整備をその基本理念としている(同法3条)。

[野澤正充 2022年4月19日]

任意後見制度

本人(委任者)が十分な判断能力を有するときに、あらかじめ、任意後見人となる者(任意後見受任者)や将来その者に委任する事務(本人の生活、療養看護および財産管理の事務)の内容を定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人がこれらの事務を本人にかわって行う制度である。法定後見制度においては、家庭裁判所が成年後見人等を選任するのに対して、任意後見制度は、本人と任意後見受任者との委任契約(任意後見契約)を締結することによって、任意後見人を選任する制度である。成年後見制度の理念である自己決定権の尊重を具現化した制度であり、2000年に任意後見契約法によって導入された。

 任意後見契約は、本人の意思と任意後見人の権限や義務を明確にするため、法務省令で定める様式の公正証書によって行わなければならない(同法3条)。そして、任意後見契約が締結され、その登記をした後(後見登記法5条)に、本人の判断能力が不十分になったときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族または任意後見受任者の請求により、任意後見監督人を選任する(任意後見契約法4条)。任意後見人は、委任に基づく事務を行う際、本人の意思を尊重し、その心身の状態および生活の状況に配慮しなければならない(同法6条)。任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所に定期的に報告をしなければならない。また急迫の事情がある場合や利益相反行為に関しては、任意後見監督人が代理権を行使することができる(同法7条)。

[野澤正充 2022年4月19日]

『本山敦「第1編親族法 第4章後見・保佐・補助」(前田陽一・本山敦・浦野由紀子著『民法Ⅵ 親族・相続』第5版所収・2019・有斐閣)』『冷水登紀代「第4編親族 第5章後見」(松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(家族法)』所収・2021・日本評論社)』


後見(能、歌舞伎、舞踊)
こうけん

能、歌舞伎(かぶき)、舞踊などで、舞台にいて演技者の演技進行を助ける役の者。

[増田正造]

能舞台では、主後見と副後見(1~2人)が左奥の鏡板(かがみいた)の前の後見座(こうけんざ)に正面を向いて正座する。歌舞伎の黒衣(くろご)と違い、本来は舞台監督的な職能であり、シテが舞台で倒れるなどの事故が生じた場合は、ただちにかわってその能を舞い継ぐ責務を負っている。そのためシテと同じ扇を懐中にして出る。シテの装束を舞台上で直したり、着けたり、作り物や小道具の扱いも後見の役である。単に作り物の出し入れだけを担当する助手的後見は「働(はたらき)」とよばれるが、『道成寺(どうじょうじ)』の鐘を落とすために別に出る鐘後見などはシテと同格の重さをもつ。ワキ方、囃子方(はやしかた)も必要に応じて後見を出すが、シテ方のように常時着座してはいない。

[増田正造]

歌舞伎・舞踊

演技中、舞台の後方に控えていて、演者の衣装を直したり、着替えを手伝ったり、引抜(ひきぬ)きを行ったりする。必要に応じて小道具を手渡し、不要になった小道具をかたづける仕事もする。蝶(ちょう)や鳥の差し金(さしがね)を使うこともある。紋服・袴(はかま)を着けたり、裃(かみしも)にかつらをつけて登場し、あくまで目につく存在であってはいけないが、黒衣と違って「登場する役者」の1人として認められる。歌舞伎舞踊の『鷺娘(さぎむすめ)』『道成寺』などの引抜やぶっ返りなどの演出には、格別に主演者と息のあった後見の技術が必要である。なお、「定後見(じょうごうけん)」といって、舞台下手の幕溜(まくだま)りに控えている役がある。これは、演者の不測の事故に備え、かつ演技をおのずと修得するための修業過程の意味がある。

[服部幸雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「後見」の意味・わかりやすい解説

後見
こうけん
guardianship

未成年者,あるいは判断能力(→行為能力)が十分でない成年者に対する看護教育,療養看護,さらに財産管理などの保護を,後見人などを定めてあたらせる制度。民法上の法定後見と,「任意後見契約に関する法律」に基づく任意後見(→任意後見制度)とがある。民法上の法定後見のうち,未成年者の後見は,親権者がいない場合,もしくは親権を行なう者に財産管理権がないときに開始される(民法838条1号)。他方,民法上の成年後見(→成年後見制度)は,精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について,家庭裁判所が後見開始の審判をすることで開始する(7条,838条2号)。これに対して,任意後見とは,本人が判断能力を有している間に,将来,判断能力が不十分になった場合を考えて,あらかじめ契約により,本人の生活,療養看護,財産管理に関する代理権(→代理)を受任者に付与する制度である。後見の機関としては,後見人(任意後見人)のほか,後見人の監督にあたる後見監督人(任意後見監督人),家庭裁判所がある(848条以下,863条,任意後見契約に関する法律4)。
後見の制度を歴史的にみると,上代には相続人が幼少の場合,母と相続人が共同相続する形式の後見と,相続人が成人に達するまで,母と親族が中継的に相続して後見する中継後見とがあったと考えられている。律令に女戸主が認められ,また多くの女帝が「中天皇」と称せられたのはこのためである。しかし,奈良時代以降これらはしだいにすたれ,代わって被後見人を代理する代理後見が現れた。摂政の増加はその好例といえる。以後,戦国期武士層の陣代,番代などの特殊なものを含め,近代法制の導入にいたるまで代理後見と中継後見とが併存していた。

後見
こうけん

能,狂言,歌舞伎,舞踊などで演技者の助けをする役,またその人。 (1) 能 1人から3人。能舞台の左奥の後見座に,正面を向いてすわる。本来は,シテが演能中に事故を生じたときに即座に代役をつとめる役で,シテと同じ扇を懐中して出るのが原則であり,舞台監督的職能をもつ。通常は,シテの装束を直したり,作り物や小物具の出し入れをしたりして,演技を助ける。『道成寺』の場合は,特に鐘引き後見が別に出る重要な役割である。ワキ方,囃子方,狂言方も必要に応じて後見を出す。狂言の場合も役割は能と同様である。 (2) 歌舞伎舞踊 衣装によって,かみしも後見と黒後見がある。差金を使い,踊り手の引抜き,ぶっ返りなどを手伝い,小道具の出し入れをする。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「後見」の意味・わかりやすい解説

後見(法律)【こうけん】

未成年者を監護教育し,または〈後見開始の審判〉があった者(1999年改正以前の呼称は禁治産者)の身上監護を行うとともに,これらの被後見人の財産を後見人が管理する制度(民法838条以下)。未成年者については,親権を行う者がない場合,または親権者が財産管理権をもたない場合に,初めて後見が開始する。後見の機関としては,後見人のほか,後見人を監督する後見監督人または家庭裁判所がある。→成年後見制度
→関連項目親権補助

後見(芸能)【こうけん】

能楽・歌舞伎用語。舞台で演技者の陰にいて,衣装や鬘(かつら)の手伝い,小道具の受渡しなど,演技の補助をする人。演者に支障が生じた際には即座に代演できるだけの技量の持主が務めることになっている。歌舞伎では,黒衣(くろご)のことが多いが,舞踊劇や様式的な古典劇では,素顔に紋付・袴(はかま),または裃(かみしも)に鬘をつけて務める。
→関連項目シテ作り物プロンプター

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の後見の言及

【後見】より

…また,禁治産者については前記の者のほか,療養看護をしてくれる者が必要である。これらの必要を満たすものを後見制度といい,前者を未成年後見,後者を禁治産後見という。まず前者について述べ,後者については前者との差異点のみを述べることにする。…

【威儀師】より

…仏教儀式における僧侶の役名。法会の進行役で,入退場や座次の案内,各役の所作の喚起や補佐など後見(こうけん)に相当する役割を果たす。714年(和銅7)の興福寺供養で衆僧の教導役に威儀師を置いたのをはじめとする。…

【執権】より

…鎌倉殿(将軍)の政所別当の中の1名を執権に任じたもので,大江広元を初代執権とする説もあるが,正式には1203年(建仁3)北条時政が将軍源頼家を廃して実朝を立てた際に政所別当となり,執権となったのが最初である。執権は〈御後見〉〈政務ノ御代官〉などといわれ,政所別当として将軍家の家司であり,将軍を補佐して政務をすべる職であるが,将軍は名目にすぎず,実質的には執権が幕府の実権を握る最高の要職で,北条氏が世襲した。13年(建保1)和田義盛の滅亡後,執権北条義時は和田氏が持っていた侍所別当をも奪い,北条氏は政所・侍所別当を独占するようになった。…

【黒衣】より

…俳優の背後から演技に必要な小道具を渡したり,不必要になったものを片付けたりする。後見の一つ。後見には,舞踊や歌舞伎十八番のように,紋付に裃あるいは袴をつけて顔を見せている後見もあるが,歌舞伎狂言の場合はたいてい黒衣である。…

【背】より

…彼はさらにこれを敷衍(ふえん)して,危険に対する日本人の守備姿勢は,背を外部に向け,うつむき,内側を向いて守るという形をとるが,これは精神構造の形象化であること,また,つねに敵を背後に意識し,このため援助を求める際にも背後の保護を期待すると述べて,源義経の鵯越(ひよどりごえ)の例や,男または夫を〈背の君〉と称したことをあげている。本来,会見に後れる意の〈後見〉が,日本では未成年者などの保護や補佐の意味にもっぱら用いられていることも,これと関連があるかも知れない。 〈背〉という漢字の〈月〉は肉で,〈北〉は人が背中を向け合わせて立つ姿を示すことから,〈背く〉の意となって,〈背徳〉や〈背任〉などの熟語が作られるのだが,歌舞伎では男女が背中を寄せ合って相愛を表現する。…

※「後見」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android