金融監督当局の規制の下にある銀行を介さずに、証券会社やヘッジファンド、証券化のための特殊な運用業者などを通じて金融取引を行う金融業態の総称。「影の銀行」ともいう。銀行と比べて関連規制が緩いため、資金の流れが不透明で、不良債権化しやすいなどのリスクがある。
2000年以降、欧米の大手金融機関は、連結決算の対象に含まれないペーパーカンパニーを多く設立し、資金調達と運用に活用した。これが2007年ころからのサブプライムローン問題をはじめとする世界金融危機を引き起こす原因の一つとなったとされる。中国では2011年ごろから急速に拡大し、シャドーバンキングを通じた金融取引総額は、2012年末時点で中国の国内総生産の29%に相当する約233兆円に上る(中国社会科学院調べ)。中国におけるシャドーバンキングのもっとも大きなリスクは、銀行の窓口で販売する一般投資者向けの高利回りの資産運用商品(いわゆる「理財商品」など)で集められた巨額な資金が、各地の地方政府が主導する収益性の低い投資プロジェクトなどに流れたことであると指摘されている。投資プロジェクトがうまくいかず、巨額の不良債権となった場合、責任の所在がはっきりしないため、中国の金融システム全体への影響が懸念されている。欧米メディアのなかには、中国発の金融危機を警戒する声もある。習近平(しゅうきんぺい)政権は2013年春から、シャドーバンキングへの監視体制を強化し、規定条件を満たさない理財商品を発売する地方銀行や金融業者に対し厳しく処罰する姿勢を示したが、効果はあまりないといわれている。
[矢板明夫]
(2013-7-2)
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