ドイツの植物学者。ハンブルクに生まれる。法律を学んで弁護士を開業したが、性格的にこの仕事になじめず、自殺を図ったが未遂に終わり、29歳で自然科学に転じた。1838年に発表した論文「植物の発生について」は、植物体の構成要素は細胞で、細胞こそ生命の単位であるという考えを明らかにしたものであり、シュワンとともに細胞説の提唱者として有名である。しかし細胞形成の仕組みについては誤った考えを有していた。主著『科学的植物学概要』(1843)は細胞に基盤を置いた新しい型の植物学教科書であり、発生学的な見方を重視し、分類・記載を中心とする従来の植物学を痛烈に批判している。
[檜木田辰彦]
ドイツの植物学者。はじめは法律を学び弁護士を開業したが,激情的な性格のため成功せず,ピストル自殺を図ったが未遂に終わり,29歳で自然科学へ転向した。1838年《植物発生論》を発表,植物体の構成要素は細胞であり,細胞は独自の生命を有するという考え(細胞説)を明らかにした。彼の細胞説はT.シュワンによって完成されたが,両者とも細胞形成については誤った見解を示した。
主著《科学的植物学概要Grundzüge der wissenschaftlichen Botanik》(1843完成)は,細胞を基盤に置いた教科書であり,その後の植物学教科書の典型となった。同書の序論では帰納法と発生学的見地を重視した科学方法論を展開し,分類・記載を中心とする自然哲学的色彩の濃い従来の植物学を痛烈に批判した。彼はまた科学の普及活動にも力を入れ,《植物とその生活》(1848)等の啓蒙的著作がある。
執筆者:檜木田 辰彦
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