ショウジョウバエ

改訂新版 世界大百科事典 「ショウジョウバエ」の意味・わかりやすい解説

ショウジョウバエ (猩々蠅)

双翅目ショウジョウバエ科Drosophilidaeに属するハエ総称。赤い眼をした小型のハエで,腐った果実や,家屋内では漬物おけなどに集まっているのが見られる。英名のwine fly,fruit fly,vinegar flyは,発酵した果実や酢に集まるハエの意である。和名も,酒を飲んで舞う能の“猩々”から由来したという。ショウジョウバエは,1910年T.H.モーガンの白目の発見以来,遺伝学実験に用いられることで有名である。その理由は,(1)飼育が容易であること,(2)1世代の期間が短いこと(25℃で約10日間),(3)唾腺染色体が大きく,特異的な膨れ(パフ)やバンドが種によって特異的な配列をしていることなどがあげられる。世界で2000種以上,日本からは,16属二百数十種の記録がある。これらのうちでもっとも有名なのがキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterである。本種は,世界中に分布し,家屋内にも多く,遺伝学の実験材料として広く用いられ,染色体地図が作成されている。

 ショウジョウバエの成虫は,体長1.5~4.0mm,黄褐色の種が多い。卵は長さ約0.5mm,背面の前端近くに1~数本の糸状突起をもっている。卵期は通常1日,幼虫期は3~4日,3齢に達すると,その表皮が硬化し,囲蛹殻(いようかく)となり,その中で蛹化する。さなぎの期間は3~4日。おもに酵母菌を食べるため,発酵した果物によく集まり,そこに産卵する。単に飼育するだけならば,バナナなど腐敗した果物でよいが,実験室での継代飼育には,寒天とイーストを用いる培地がくふうされている。唾腺染色体観察には,蛹化直前の3齢幼虫がよい。
染色体地図 →唾腺染色体
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百科事典マイペディア 「ショウジョウバエ」の意味・わかりやすい解説

ショウジョウバエ

双翅(そうし)目ショウジョウバエ科の昆虫の総称。体長2〜4mmの微小種ばかりで,体色も黄から黒までいろいろあるが,眼は一般に赤い。室内,ごみため,森林,高山など,生活範囲は広い。一般に発酵した物を好み,酒だる等によく集まるので〈猩々バエ〉の名があるが,キノコを食べるもの,腐肉を食べるもの,葉や茎にもぐるものなどもある。全世界に1000種以上,日本にも100種以上がいる。この類は飼育が簡単で,1世代の期間が短く,狭い所で多く飼育でき,また染色体の数が少ないので遺伝の実験に適し,遺伝学の発展に重要な役を果たしてきた。
→関連項目ハエ(蠅)

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栄養・生化学辞典 「ショウジョウバエ」の解説

ショウジョウバエ

 小型のハエで,広く分布し,食品などにも混入しやすい.卵から成虫までの発育が速く,10日と短いなどの利点があり,遺伝学などの研究材料にも広く使われている.

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