改訂新版 世界大百科事典 「ショウリョウバッタ」の意味・わかりやすい解説
ショウリョウバッタ
Acrida chinerea
直翅目バッタ科の昆虫。平地のイネ科草原によく見られる。雄は中型で,飛ぶときに前・後翅を打ちあわせてキチキチという音を出す。一方,日本のバッタ類の中でも最大級の一つとなる雌はより強く飛ぶものの音は出さない。成虫は夏から秋にかけて出現し,11月の終りころにもまだ見られることがある。日本全国に見られ,中国や台湾などにも分布する。イネ科の植物の葉を食べる。体は細長く,体長は雄で40mm内外,雌で80mm内外。緑色か黄褐色をしており,前翅に白紋または白褐紋をもつこともある。頭部は円錐形で細長く,雄ではとくに細く,頭頂部はとがらない。複眼は長楕円形,また触角は剣状で平たい。前翅も細長く,その先端はとがっている。後肢は長く,とくに腿節と脛節(けいせつ)は細長い。
旧暦のお盆(精霊会)のころにもっともよく見られるのでショウリョウバッタの名をもつが,雄の飛ぶときのキチキチという音からキチキチバッタという名もある。この名は現在では近似種との関係で用いられない。後肢の脛節を左右いっしょにしてもつと,関節をばねのようにして体を動かすが,その姿から地方によってハタオリ(機織)と呼ぶところもある。
本種の雄に類似したバッタに,同じころに出現し,本州以南にすむショウリョウバッタモドキがある。これはほとんど飛ぶことがなく,飛んでも音を出さない。またこの種は,草の茎に擬態し,もっぱら草の茎に止まってくらしているので目につきにくい。体は比較的やわらかく,後肢が体長に比してかなり短いから,ショウリョウバッタとの区別は容易である。
執筆者:山崎 柄根
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報