シロナガスクジラ(英語表記)Balaenoptera musculus; blue whale

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シロナガスクジラ」の意味・わかりやすい解説

シロナガスクジラ
Balaenoptera musculus; blue whale

クジラヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科ナガスクジラ属。地球上に現存する最大の動物。体長 23~27m。最大体長記録は 33m以上。体重は約 160tをこえる。出生体長は 7m程度。全身灰青色で,背部と腹部淡色の絣 (かすり) 模様を呈する。体型は流線形であるが,ナガスクジラ科の他種に比べて細長い。頭部は扁平でU字状を呈する。噴気孔は2個で,噴気は細く高く上がり高さは約 9mをこえる。背鰭 (せびれ) は体の後方4分の3に位置し小さい。大型個体では背鰭を欠くものがある。背部は背鰭を中心に隆起する。畝 (うね) は 55~88本あり,臍 (へそ) 近くまで達する。くじらひげは口内の上顎上面に片側 270~395枚あり,大きいもので長さ 90~110cm,幅 50~60cmに達する。板状部,繊毛部ともに黒色。潜水時間は比較的短いが,30分以上潜水することもある。通常1~2頭で行動する。索餌場ではナガスクジラと混群をなすことがある。もっぱらオキアミ類を食し,口を開いて餌に突進し飲み込んで捕食する。出産期は冬,繁殖地は熱帯ないし亜熱帯である。外洋性で両半球の氷縁から赤道にかけて出現する。夏季は極地方回遊し集中分布する。氷縁海域を好む傾向があり,南氷洋ではコイワシクジラと競合関係にある。高度回遊性の鯨種。商業捕鯨により現存数が激減。特に南氷洋では乱獲と密漁により著しく減少した。 1965年より全面捕獲禁止となる。絶滅危惧種
南半球温帯から亜南極域に,尾部が短く,くじらひげの幅がきわめて短い,ピグミーシロナガスクジラ B.m.brevicaudaという亜種が生息している。性的成熟に達する体長がシロナガスクジラでは 23.5m前後であるのに対し,ピグミーシロナガスクジラでは 19.8m前後である。

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改訂新版 世界大百科事典 「シロナガスクジラ」の意味・わかりやすい解説

シロナガスクジラ
blue whale
Balaenoptera musculus

ヒゲクジラ亜目ナガスクジラ科。世界中に分布する外洋性のクジラで,最大の哺乳類。南半球産の最大個体は体長30.5m,推定体重160tに達するが,北半球では26m以下。雄は雌より1~2m小さい。全身青黒色で,銀灰色の不規則な斑紋が散在し,水面下では青白く輝く。上あごは平たんで,輪郭は丸みをもったU字形をなす。背びれは小さい。あご先から腹面にかけて55~70本のうねがあり,その後端はへそに達する。クジラひげは260~400枚あり,ひげ板とその剛毛は黒色。通常1~2頭で生活し,夏には亜寒帯で索餌し,冬には温帯,亜熱帯の海で繁殖すると考えられているが,繁殖場は確認されていない。妊娠期間は11ヵ月前後で,2~3年に1回1子を生む。子は約7mで生まれ,7ヵ月前後哺乳を受け,体長15mで離乳する。生後10年前後,体長22~24mで性成熟に達する。最高寿命は100年近い。ほとんどオキアミだけを捕食する。天敵にはシャチがある。日本近海では,20世紀初めに紀州や四国沖で捕獲されたが,現在ではほとんど発見がない。南極海には,かつて20万頭が生息したといわれるが,近代捕鯨業によって激減し,現在は400~500頭程度にすぎない。

 江戸時代には本種をナガスクジラ(長須鯨)と呼び,今日のナガスクジラはノソと呼ぶ地方が多かった。ナガスは〈長身〉の意。南半球の低緯度には小型の亜種ピグミーシロナガスB.m.brevicaudaがいる。
クジラ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シロナガスクジラ」の意味・わかりやすい解説

シロナガスクジラ
しろながすくじら / 白長須鯨
blue whale
[学] Balaenoptera musculus

哺乳(ほにゅう)綱クジラ目ナガスクジラ科のヒゲクジラ。体長34メートルの測定記録がある世界最大の動物である。紡錘形で、背びれは比較的小さい。全身灰青色で、淡色斑(はん)が多数点在する。水面に浮かび上がる際に水上からは白くみえるのでこの和名がある。畝(うね)は下あごからへそまで達する。黒色の三角形のくじらひげ板が口蓋(こうがい)に片側約230枚生える。世界の海洋に広く分布し、南半球ではパックアイス(浮氷群)域まで分布するが、付属海には入らず、北太平洋ではベーリング海やオホーツク海に入る例はまれである。夏は高緯度海域に、冬は低緯度海域に大きな季節移動を繰り返す。オキアミ類を好んで食べる。出生時は7メートル、2.5トンで、南半球産の系統は平均26メートル、110トンにまで成長する。近代捕鯨時代に入ってからの主対象種であり、乱獲の結果資源が減少し、1966年から全世界で捕獲禁止されている。世界の海洋にピグミーシロナガスクジラという亜種を含めて約1万頭が生息していると推定される。

[大隅清治]


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百科事典マイペディア 「シロナガスクジラ」の意味・わかりやすい解説

シロナガスクジラ

クジラ目ナガスクジラ科のヒゲクジラ。古今最大の動物で,雌は雄より平均1.3m大きく全長は平均23.9m。体は青灰色で,背側などには淡色のかすり模様のある場合が多い。北太平洋,北大西洋,南氷洋などに分布。オキアミ,カラヌスなどの小甲殻類を食べる。冬に温暖な地方に回遊して繁殖する。妊娠期間11ヵ月。1腹1子。ノルウェー式近代捕鯨が始まって以来,個体数は急激に減少し,現在では国際捕鯨取締条約によって捕獲を禁止されている。ワシントン条約の付属書Iに掲載。
→関連項目クジラ(鯨)ナガスクジラ

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栄養・生化学辞典 「シロナガスクジラ」の解説

シロナガスクジラ

 ヒゲクジラの一種.ナガスクジラ科の哺乳動物.全長30mにもなる.

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世界大百科事典(旧版)内のシロナガスクジラの言及

【海獣】より

…水中では重力に対して四肢で体を保持する必要がなく,体温保持のうえで体が小さなことが不利に働くことから,一般に陸上動物に比べて大型である。最大種のシロナガスクジラでは,体長30m,体重136tに達し,最小種のラッコでも体長1~1.2m,体重27~37kgある。体は,アザラシ,ラッコのように毛皮として優れた上質の毛で包まれているか,あるいは逆にクジラ類のように無毛で裸出する。…

※「シロナガスクジラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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