人工知能(AI)の知識表現において、そこで使われる記号を実世界の実体がもつ意味に結び付けられるかという問題。「記号接地問題」ともいう。哲学者のスティーブン・ハルナッドStevan Harnad(1945― )がAIには意味が理解できないという論証の一環として提示した問題。たとえば、一度食べたことのある人は、「梅干し」と聞けばその味を想起して口の中に唾液(だえき)が出てくるなどの現象が起こるが、AIにはそういった想起ができない。ある意味で、記号処理におけるフレーム問題や、常識推論ができないことなどのさまざまな問題と同根である。つまり、身体性をもたず、環境と切り離された形で記号の処理をしようとするために起こる問題である。外部世界にあるものを、内部記号に置き換えた時点で外部との接地が切れてしまう。実世界と相互作用するロボットなどでは、ロボットなりの記号接地ができるはずであるが、人間と異なる体をもったものの記号接地は、人間のものとは異なるはずである。
最近ではディープラーニング(深層学習)によって記号と画像の関係を学ばせ、記号表現を画像に落とすことができるようになってきているので、一部の記号接地は学習可能になりつつある。
[中島秀之 2019年8月20日]
(2019-8-29)
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