日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジニトロベンゼン」の意味・わかりやすい解説
ジニトロベンゼン
じにとろべんぜん
dinitrobenzene
芳香族ニトロ化合物の一つ。ニトロ基の位置により、o(オルト)-、m(メタ)-、p(パラ)-ジニトロベンゼンの3種の異性体がある。いずれの化合物も白色に近い淡黄色固体である。m-ジニトロベンゼンはベンゼンまたはニトロベンゼンを硝酸と硫酸の混合酸でニトロ化すると容易に合成できる。この方法によればo-体とp-体はほとんど生成しない。o-およびp-ジニトロベンゼンは、対応するo-およびp-ニトロアニリンを亜硝酸ナトリウムでジアゾニウム塩としたのち、ふたたび亜硝酸ナトリウムを作用させると得られる。3種の化合物はいずれもエタノール、エーテルに溶け、水には溶けないが、水蒸気蒸留されやすい。容易に合成できることにより工業的に重要なのはm-ジニトロベンゼンであり、硫化ナトリウムなどで部分還元すればm-ニトロアニリンが、鉄‐塩酸で還元すればm-フェニレンジアミンC6H4(NH2)2が得られ、染料中間体として用いられる。ジニトロベンゼンはどれも敏感ではないが爆発性をもち、また有毒で肝臓を冒す。
[谷利陸平]