ジネズミ(読み)じねずみ(その他表記)white-toothed shrew

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジネズミ
じねずみ / 地鼠
white-toothed shrew

広義には哺乳(ほにゅう)綱食虫目トガリネズミ科ジネズミ属に含まれる動物の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。この属Crociduraの仲間は、アフリカに76種、ユーラシア南部と南アジアに42種が知られ、寒冷地に多いトガリネズミ類とは異なり、温帯から熱帯において進化した動物である。頭胴長14センチメートル以下、尾長9センチメートル以下のトガリネズミに似た動物であるが、耳介は毛の外に突出し、尾は基部が太く、先細りとなり、短毛のほかに少数の長毛がまばらに生える点で異なる。歯の先端もトガリネズミのように赤染せず白色。歯式は

で合計28本。昼夜を問わず活動し、活動と休止の短い周期を繰り返す。各個体は縄張りテリトリー)をもつといわれ、寿命は1年余で、シロハラジネズミC. leucodonでは飼育下で41.5か月生きた記録がある。昆虫、クモ、ミミズなどの小動物を食べる。1産1~6子が普通である。

 狭義のジネズミC. dsinezumiは日本特産に近く、ほぼ日本列島全域に分布し、国外では済州(さいしゅう)島に分布する。頭胴長6~8センチメートル、尾長4~5.5センチメートル。低地から低山帯の水辺、草地、低木林などにすみ、日本の西部や南部では比較的生息数が多く、北海道では非常に少ない。おもに春に繁殖するが秋にも一部が繁殖する。本種は南方で大形化する傾向があり、奄美(あまみ)大島にすむ大形のオリイジネズミC. oriiは本種の亜種とする説もある。この属の日本産種としてはほかに、奄美大島徳之島、伊江島にワタセジネズミC. horsfieldi、対馬(つしま)には大陸系のコジネズミの亜種チョウセンコジネズミC. suaveolens shantungensisがある。

[阿部 永]

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改訂新版 世界大百科事典 「ジネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジネズミ (地鼠)
Crocidura dsinezumi

食虫目トガリネズミ科の小哺乳類ニホンジネズミともいう。日本と済州島のみに分布し,体長6~8cm,尾長4~4.5cm,体重6~12gとごく小さい。近縁種オナガジネズミの亜種,奄美大島産のワタセジネズミC.horsfieldi wataseiは,体長5.5cmで,世界最小の哺乳類の一つ。よく似た同属の近縁種は140種以上もあり,アジア,ヨーロッパ,アフリカの温暖な地方に広く分布する。本種は,北海道には比較的少なく,本州中部以西では数が多い。体は細長く,きゃしゃで,ネズミ類(齧歯(げつし)類)と異なり鼻が長くとがるのが特徴。トガリネズミに似るが歯が白い(トガリネズミでは赤い)。長い鼻は活動中たえずぴくぴくと動かされている。尾にはまばらに毛が生える。毛は短く密生し,色は灰色。目は直径1mmとごく小さく,おもな感覚器は嗅覚である。体の両側にくさい物質を分泌する体側腺が発達し,草むらなどの中の通路を走るとそこに麝香(じゃこう)に似た強い刺激臭をもつ独特のにおいがつけられる。

 平地から低山帯の畑,草原,森にふつうに生息し,おもに夜間草むらや落葉の間をかいくぐって動きまわり,狭い隙間に鼻を突っ込んで中に潜む,昆虫,クモ類,ミミズなどの小さな無脊椎動物をさがし捕食する。動きは敏しょうで,跳ねて逃げるバッタなども巧みに追跡し,鋭くとがる門歯をつきたててとらえる。巣は地表の草の茂みや石垣の間などに草を集めてつくり,雌は春から秋にかけて年数回1産4~7子を生む。授乳中の雌は昼間も活動する。
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百科事典マイペディア 「ジネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジネズミ

食虫目トガリネズミ科の哺乳(ほにゅう)類。体長6〜8cm。尾は4〜5cm。吻(ふん)端がとがり,体毛は短くビロード状で赤褐色〜暗褐色。北海道中央部〜九州,韓国の済州島に分布し,全国の平地〜低山の森林・草原にすみ,夜間活動して昆虫,クモ,ミミズなどを食べる。体側から特有の強いにおいのある液を分泌する。1腹3〜4子。日本には他に3種が知られる。ユーラシア大陸,北アフリカに多くの近縁種がある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジネズミ」の意味・わかりやすい解説

ジネズミ
Crocidura dsinezumi; white-toothed shrew

食虫目トガリネズミ科。体長 7cm,尾長 4cm内外の小型種で,日本固有種。トガリネズミに似るが,尾は細長く,毛が多い。歯もトガリネズミのように赤く染まらず,白い。冬毛は茶褐色,夏毛は暗褐色。吻端が突出している。土中に生活し,夜間活動しておもに昆虫類を捕食する。本州,四国,九州の標高 1000m以下の農耕地,牧草地などにみられる。

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