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朝鮮半島の南方80kmの海上にある島。人口53万(2005)。漢拏(かんな)山(1950m)がつくった火山島で,東西に長い楕円形をなし,面積は1840km2で韓国最大の島。行政上は一島で済州道をなし,道庁所在地は済州市。漢拏山は南朝鮮の最高峰であるが,山麓に河川がなく,海岸沿いに点在する約150個所の湧泉を中心に集落が形成されている。山麓は高度により植生が変わり,200mまでは耕地化されてミカンやいも類が栽培されている。600mまでの草地帯は牛馬の放牧に利用され,1400mまではヤマザクラ,クヌギなどの温帯林,1700mまでは朝鮮モミなどの針葉樹林となっており,大部分が原生林である。1700m以上の溶岩原は高山植物が豊富である。
古代には耽羅(たんら)国が成立していたが,高麗によって併合され,13世紀のモンゴル侵入の際には高麗の三別抄が最後までこの島によって抵抗したことで有名である。現代では1948年4月,南朝鮮の単独選挙に反対する済州島四・三蜂起が発生し(済州島の選挙は翌年に延期),10月にはこの反乱への鎮圧出動を拒否した政府軍が対岸にあたる全羅道の麗水・順天で反乱を起こすという事件すら誘発した。済州島の蜂起した民衆は50年代の半ばまで漢拏山にたてこもってゲリラ化し,8万人以上の死傷者をだしたといわれる。この事件は軍事政権下でタブーとされてきたが,2000年1月〈真相糾明および名誉回復に関する特別法〉が制定され,03年10月大統領が済州島を訪れ,過去の国家権力の過ちを謝罪した。
三多島(石,風,女が多い)の別称を持つ貧しい島だったが,近年,ミカン栽培の普及によって農業収入が増大したことや,観光地として脚光を浴び,サービス業収入が増大したことにより,島民の所得が大幅に増加した。人口は他の離島とは異なり,年々増加している。海岸循環道路や漢拏山中腹越えの観光道路が整備され,北部の済州市郊外には国際空港が開設(1968)され,内外の観光客を受け入れている。
執筆者:谷浦 孝雄
三多島という別称のとおり,風が強く石が多いので,家屋が低く屋根は太い綱で編みつけられ,家の周囲には石塀が築かれる済州島特有の家屋形式が見られる。ここでは畑の耕作も海での漁もおもに女性によって担われており,とくに海女によるサザエやアワビなどの潜水漁による収入は重要である(〈海人(あま)〉の項目を参照)。女が多いというのは,妻が家の外で仕事をするのに対して夫は家で留守をし子守をする場合が多く,女性の外での活動が著しいことに起因している。済州島の宗教は男性の儒教,女性の巫俗信仰という二重構成をとっており,部落祭などは儒教式と巫俗式のものを男女別々に行っている。島には海神をはじめ多くの神々の堂(タン)があり,神房がその祭祀を行う。済州島巫俗の特徴は他地域と比べ男巫の数が多く古型を残していることである。年中行事は海や漁業に関するものが多く,2月1日には風神であり豊穣の女神であるヨンドン婆様に対する燃灯祭が古来盛んに行われている。済州島の神話伝承には天地分離神話,地中湧出型始祖神話,巫の歌う神々の由来譚・本解(ボンプリ),巨女ソンムンデ婆様説話など本土とは異なったものが多い。済州島は高麗朝以来本土からの政治的・文化的影響を強く受け,朝鮮の地方文化の一つとしてとらえることができるが,神話モティーフや独特な隠居制をはじめ精神的・物質的文化のあらゆる面にわたり,本土とは異質の古い南方的・海洋的な独自の基層的民俗文化を多く保存している。
執筆者:依田 千百子
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韓国(大韓民国)南端にある最大の島。東西73キロメートル、南北41キロメートルのほぼ楕円(だえん)形をなし、62の付属島をもつ。漢拏山(かんださん/ハルラサン)(1950メートル)は島の中央にそびえるアスピーテ火山で、裾野(すその)は海岸にまで延びている。河川は漢拏山の分水嶺(ぶんすいれい)を境に南北に分かれ、伏流し海岸で湧泉(ゆうせん)や滝をつくっている。年平均気温は14.6℃で韓国最高、年降水量も1440ミリメートルと最多雨地域である。暴風日数は年間の3分の1もあり、島の至る所に風化した玄武岩石が遍在するので、島民は石垣を築き、家屋、田畑、畜舎を囲んでいる。古来、女性数が男性数を上回り、漁労、商取引、農耕に至るまで女性の活動が活発である。済州島が風多、石多、女多の三多島とよばれる理由である。農産物としては麦類、アワ、米、サツマイモ、水産物ではサバ、タイ、アワビ、海藻類がある。とくにミカンの生産量は年間16万トンと量的にはリンゴに次ぐが、済州島の主要産物である。1970年以降、牧畜業の拡大が目覚ましく、ウシ2000頭規模の大牧場が4か所できている。済州ウマとヒツジの放牧も有名である。漢拏山を通り済州市と西帰浦市をつなぐ南北横断道路が1962年に開通し、その西側に中文里―済州市間の第二横断道路が完成するに伴い、交通時間が大幅に短縮され、産業発展にも役だっている。これにより西帰浦市には年間数十万の観光客が集まり、観光都市として発展しつつある。また政府は済州島を国際観光地として開発する長期計画を進めている。
[森 聖雨]
「チェジュ(済州)島」のページをご覧ください。
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[系統と分布]
日本民族の形成過程のなかで,かなり明瞭にあとづけられるのは南方系であり,インド・チャイニーズ系とインドネシア系に大別されよう。前者は,古典にみえる阿曇(あずみ)系およびその傍系である住吉系漁労民で,中国南部の閩越(びんえつ)地方の漂海民の系統をひき,東シナ海を北上し,山東半島から遼東半島,さらに朝鮮半島西海岸を南下し,多島海,済州島方面を経て玄界灘に達する経路をたどったと推定される。後者は,宗像(むなかた)系海人と呼ばれ,フィリピン付近海域から黒潮の流れに沿ってバシー海峡,台湾,沖縄,奄美諸島などサンゴ礁の発達した島嶼(とうしよ)を伝って南九州に達したと考えられ,古典にいう隼人(はやと)系に属する。…
…女は阿踰陀(あゆた)国の王女で父王の命により首露王の妃となるため渡来したという。(6)耽羅(たんら)国(済州島)の三姓始祖神話 良乙那,高乙那,夫乙那の3神人が地中から湧出した。一方東の海浜に紫泥で封印された木箱が漂着して中から3人の処女が現れた。…
※「済州島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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