改訂新版 世界大百科事典 「ジョウザン」の意味・わかりやすい解説
ジョウザン
Dichroa febrifuga Lour.
熱帯~亜熱帯の山地路傍や渓流沿いの林床に生えるユキノシタ科の落葉低木で,幹の高さは1~2m。日本には産しないが,まれに栽培されることがある。葉には柄があって対生し,葉身は倒卵状楕円形,ふつう葉身のやや上部が最も幅広く,基部はくさび形で,先はとがり,長さ7~22cm,幅4~7cm,縁に粗い鋸歯がある。若枝,葉柄,葉身には微細な柔毛がある。花は青紫色で美しく,枝の先または枝の上部葉腋(ようえき)に散房状集散花序をつくって多数開く。萼筒は杯状で,上部に4~6枚の歯状で小さな宿存性の萼裂片がある。花弁は4~6枚,花時下側にそり返り,倒卵状披針形で,長さ5~6mm,幅3~4mm。おしべは10~20本。花柱は4~6本,棒状で先端はふくらんだ柱頭におわる。子房は下位。果実は漿果(しようか)となり,ほぼ球形で,青紫色を呈する。スマトラ,ボルネオ,ジャワ,中国,ヒマラヤにかけて広く分布する。中国ではこの植物のことを常山または黄常山(おうじようざん)と称し,横断面が黄色の根を薬用,とくに解熱剤として用い,マラリアによく効くという。この属Dichroaは,アジサイ属などに類縁の近い植物で,東南アジアからヒマラヤの熱帯,亜熱帯に約10種が知られている。
執筆者:若林 三千男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報