スペックス(読み)すぺっくす(その他表記)Jacques Specx

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スペックス」の意味・わかりやすい解説

スペックス
すぺっくす
Jacques Specx
(1588―?)

鎖国前の日蘭(にちらん)交渉に重要な役割を演じたオランダ人。初代蘭館長。ドルトレヒトに生まれ、若くしてオランダ東インド会社に入社。1609年(慶長14)日蘭交渉開始の会社の指命を受けて日本に渡来した。徳川家康より通商許可の朱印状を受け、平戸(ひらど)に商館を建設するとともに、最初の商館長に任命された。13年通商策を講ずるため一時東南アジアに赴いたが、翌年日本に戻り、21年までふたたび商館長となり、きわめて困難な日蘭貿易の推進に努力した。その後いったん本国に戻り、会社にアジア貿易の実況をつぶさに報告し、29年には艦隊司令官として東インドに至り、クーン総督死亡を機に臨時に総督に任ぜられた。まもなくその職を辞すのやむなきに至ったが、当時東アジア水域をめぐる熾烈(しれつ)な貿易戦争のなかでオランダ貿易の発展に尽力するとともに、植民地行政にも手腕を振るうなど初期のオランダ東洋植民史上大きな足跡を残した。

[箭内健次]

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改訂新版 世界大百科事典 「スペックス」の意味・わかりやすい解説

スペックス
Jacques(Jacobus)Specx
生没年:1585ころ-1645ころ

オランダの連合東インド会社平戸商館長,東インド総督。ドルトレヒト生れ。1609年(慶長14)平戸に連合東インド会社の船2隻が来航し,徳川家康より通商許可状を得て商館の設置を許されると,スペックスは若年ながら商館長に選ばれた。商館建物と倉庫の建築完成後,13年ジャワ島バンテンの東インド政庁に帰り,翌年再び平戸商館長に就任。21年館長職を解かれてバタビアに戻り,27年オランダへ帰国したが,東インド政庁(バタビア)の参事に任ぜられ,総督クーンの死によりしばらくその事務を代行した。総督に選任され(1630-32),日本とのあいだに生じた〈台湾事件〉の解決に尽くした。退任後帰国し,西インド会社アムステルダム支部の重役に任命された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スペックス」の意味・わかりやすい解説

スペックス
Specx, Jacques(Jacob)

[生]1585頃
[没]1645頃.オランダ
オランダの平戸商館長,次いで東インド総督。 1609年7月1日 (慶長 14年5月 30日) 東インド会社船『フリフーン』号で商務員補の地位で平戸に着き,江戸幕府の貿易許可により同年9月 20日商館長に任命され,3人の館員と1人の通訳をもつ平戸商館を開いた。 13年 H.ブラウエル後任となり,ともに徳川家康に謁した。 14年8月再任され 21年初頭カンプスと交代,この年バタビアに移った。 27年帰国して会社の理事,総督府参事を歴任,のちにバタビアにおもむき 29年9月総督 J.P.クーンの没後代行をつとめ,次いで翌年より 32年まで総督をつとめた。総督在任中,日本の長崎代官末次平蔵を介して台湾事件の解決に努めた。退官帰国後西インド会社理事。

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朝日日本歴史人物事典 「スペックス」の解説

スペックス

没年:1645頃(1645頃)
生年:1585頃
江戸前期の平戸の初代オランダ商館長。ドルトレヒト生まれ。慶長14(1609)年,平戸にオランダ商館が開設されると,その最初の商館長となる。滞日は同年から同18年,同19年から館長職を解かれる元和7(1621)年までである。その後,バタビアに戻りオランダに帰国したが,のち東インド総督。その在任中,生糸貿易をめぐり朱印船貿易家末次平蔵と台湾長官P.ヌイツとの紛争が起こり日蘭貿易が中絶する事件(1628)が起こるが,日本に通じていたスペックスが解決に尽力した。

(中川文男)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「スペックス」の解説

スペックス Specx, Jacques

1585?-1645? オランダ商館長。
オランダ東インド会社にはいり,慶長14年(1609)来日。肥前平戸(長崎県)の商館の初代館長として多年滞在し,日蘭貿易を推進。のち一時帰国後,1629年東インド総督となり,バタビア(現ジャカルタ)に駐在。台湾でおきた浜田弥兵衛(やひょうえ)との紛争事件を解決した。享年60歳?

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