翻訳|slang
特定の社会集団で,ある単語または表現がありきたりな使い方でなく,もったいぶらなさ,新しみ,ひやかし,ユーモアといった効果をねらって用いられるとき,それらをスラングという。とくに,若い年齢層や学生,ジャーナリストなどの社会集団によく発達している。集団内の心理的同一化を図るのに力がある。隠語もその点で同じ働きをするが,これは集団内の秘密通信が目的である。しかし,隠語として生まれたものが,のちにスラングとして用いられることもある(たとえば演劇関係者が使う〈ジャリ〉--子どもの意)。スラングは集団内では決していやしいことば(卑語)ではないが,集団外では,その使い方が普通でないために,卑語とみられることもある。たとえばNHK(日本放送協会)のアナウンサー仲間で使う〈しりとり〉,すなわち放送の最後にいうNHKとかJOAKとかいうアナウンスなど。スラングを作る手順には,(1)外国語,方言,むずかしい漢語から借りる(シャン=美人-ドイツ語のシェーンschönから。イカレポンチ=まぬけのお人よし-大阪方言ボンチから。ショウモウ=疲れた・困った-消耗から),(2)語形を短くする(ブル=さまをよそおう,例:学者ブル,小説家ブルなど),(3)単語の部分を置きかえる(ショバ=場所-バショから),(4)語形はそのままにして意味をかえる(オナリ=お得意さまは〈お成り〉-皇族の外出をさす語から)などがある。
執筆者:柴田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
同一の生活体験、同一の利害関係にある人の間で用いられる卑俗なことば。俗語、卑語、隠語なども含まれ、学生語、兵隊語、水商売用語など、いわゆる位相語、職業語が中心。改まった形では使用を控えることばで、多くは時代の特色を端的に表現し、流行語になるが、自然淘汰(とうた)され、消えていく運命にある。花柳界用語の「お愛想」「つけ馬」などは現在日用語として使われているが、学生用語の「メッチェン」「ゲル」などは第二次世界大戦前の流行語で、同じドイツ語ですでに日用語の「アルバイト」に比べると戦後はほとんど用いられない。戦後は英語が多く使われ、「ナウい」などが出現したが、標準語になるか、消えていくかは予測できない。スラングの盛衰は新聞、テレビ、ラジオなどマスコミの操作と深くかかわっているからである。
[船戸英夫]
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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