ダンコウバイ(その他表記)Lindera obtusiloba Bl.

改訂新版 世界大百科事典 「ダンコウバイ」の意味・わかりやすい解説

ダンコウバイ
Lindera obtusiloba Bl.

春先,葉の展開する前に小さな黄色い花を密集してつけ美しい。鬱金花(うこんばな)ともいう。日本では漢字に檀香梅をあてることが多いが,これは漢名ではロウバイの園芸品種トウロウバイをさす。クスノキ科の落葉低木で,高さ3~6m。葉は互生,全縁で3行脈があり,通常浅く3裂する。雌雄異株で,散形花序は前年葉腋から出る短枝につき,花被片は6枚。雄花ではおしべは9本が3輪に並び,葯は2室で,2弁によって弁開する。雌花は,退化おしべ9本,めしべ1本で,漿果(しようか)は9~10月ころ熟し,赤~黒紫色となる。温帯南部~暖帯本州・四国・九州および朝鮮・中国に分布する。材はとくに有用ではないが,香りが良いので同属のクロモジと同様につまようじにする。同科のシロモジも葉が3裂し一見似ているが,葉の各裂片の先端が鋭形で,また3行脈の分岐点は葉基部より少し先端よりであることで区別できる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダンコウバイ」の意味・わかりやすい解説

ダンコウバイ(檀香梅)
ダンコウバイ
Lindera obtusiloba

クスノキ科の落葉低木で,ウコンバナ,シロヂシャなどともいう。関東地方より南の山地に生え,アジア東部にも分布する。枝はやや太くまばらで,広楕円ないし卵円形の葉が互生し,葉の先端が普通は3裂するが,幼樹や枝先の葉は裂けずに卵形のことがある。葉裏は帯白色で葉脈に沿って淡褐色の長い毛がある。早春,葉の出る前に散形花序をなして黄色の小花を多数つける。雌雄異株。果実球形の液果で赤く熟する。全株にかすかに芳香がある。果実から油をしぼって灯油とし,また朝鮮半島では冬柏油と呼んで高級な頭髪油とされる。なお,ロウバイ科のトウロウバイもダンコウバイと呼ばれるが,別種である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダンコウバイ」の意味・わかりやすい解説

ダンコウバイ
だんこうばい / 檀香梅
[学] Lindera obtusiloba Bl.

クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の落葉小高木。高さ6メートルほどになり、幹は灰褐色、枝は緑色。葉はやや厚く、広卵形で、普通、3浅裂し、長さ5~15センチメートル。花は2~3月、散形花序につき、黄白色、葉より早く開く。雌雄異株。果実は球形の液果で径約7ミリメートル、赤色から黒紫色に熟す。関東地方以西の本州から九州および朝鮮半島、中国に分布し、山地に生える。花がウメに似ており、材がビャクダン(檀香)のように香りがあるためこの名がある。花が黄色なのでウコンバナ(欝金花)ともいう。

[門田裕一 2018年8月21日]


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百科事典マイペディア 「ダンコウバイ」の意味・わかりやすい解説

ダンコウバイ

ウコンバナとも。クスノキ科の落葉低木。関東〜九州,東アジアの山地にはえる。葉は広楕円形でやや厚く,多くは浅く3裂する。雌雄異株。3〜4月,葉の出る前に,黄色で小さな6弁花がかたまって咲く。雄花のおしべ9本。果実は小さく球状で9〜10月赤熟する。庭木,生花とする。

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世界大百科事典(旧版)内のダンコウバイの言及

【クロモジ(黒文字)】より

…【飯島 吉晴】。。…

【クロモジ(黒文字)】より

…果実は赤熟する。ダンコウバイL.obtusiloba Bl.やヤマコウバシL.glauca Bl.も同属の小低木である。テンダイウヤク(天台烏薬)L.strychnifolia (Sieb.et Zucc.) F.Vill.は中国中部原産の常緑低木で,享保年間(1716‐36)に渡来し,日本の暖地に野生化している。…

※「ダンコウバイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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