ケロシンともいう。沸点およそ160~300℃の石油留分で,家庭の暖房・厨房(ちゆうぼう)用に,また石油発動機用燃料や溶剤に使用される。古くはおもに灯火用燃料として用いられたのでこの名がある。JISでは1号灯油と2号灯油に分類されている。一般にいわれる白灯油は1号灯油に,茶灯油は2号灯油に相当する。
1号灯油の用途は灯火用および暖房・厨房用燃料であり,こんろやストーブに使われる。この用途に適する灯油としては,(1)燃焼性がすぐれていて,煙の出にくいこと,(2)腐食性物質や悪臭物質を含まず,燃焼排気がきれいであること,(3)引火点が高く,取扱いが安全であること,などが要求される。(1)についてはパラフィン系炭化水素(アルカン)がすぐれており,芳香族成分の多いものは不完全燃焼を起こしやすい。この目安として煙点(規定の標準ランプを用い規定の条件で,すすを発生させずに燃焼させることのできる最大の炎の高さ)の規定がある。(2)については硫黄分が問題になるが,水素化脱硫などの方法で十分に精製すればほとんど問題はない。(3)は蒸留操作によって対応できる。
2号灯油の用途は石油発動機用燃料,溶剤および洗浄用である。最近はとくに農業用発動機(電気着火式エンジン)の普及が進み,その燃料として灯油が用いられている。この場合は揮発性,燃焼性がよく,オクタン価が高いことが望まれる。このため芳香族成分の多い灯油が好ましい。このほかに灯油は機械洗浄用,ペンキ,ワニス,殺虫剤,農薬などの溶剤としても用いられている。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
原油の常圧蒸留におけるナフサと軽油の間の留分で、比重0.76~0.82、沸点150~270℃の油。以前はおもに灯火用に用いられたので、このようによばれている。ケロシンともいう。灯油はJIS(ジス)(日本工業規格)により1号と2号の2種類に分けられる。1号はいわゆる白灯油であり、灯火用および暖房・厨房(ちゅうぼう)用燃料に用いられる。原油の常圧蒸留により分け取った灯油留分を水素化脱硫処理により硫黄(いおう)分を0.0080%以下にしたものであり、無色の油である。2号はいわゆる茶灯油であり、石油発動機用燃料、塗料用溶剤、洗浄用などに用いられる。硫黄分は0.50%以下と定められているので水素化脱硫を省略し、原油の蒸留により得られる灯油留分をそのまま用いることもある。
灯油は比較的安全で取扱いも容易であり、しかも安価であるため、日本においては家庭暖房用燃料として石油ストーブなどを中心に需要が増大してきたが、原油中の灯油留分は原油ごとにほぼ一定であるため、灯油だけを多量に生産することはできない。灯油の生産量は石油製品全体の12~13%である。また、ジェット燃料(航空タービン燃料油)の沸点は灯油と重複しているため、ジェット燃料の需要の増大は灯油の生産を圧迫する。
[難波征太郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
沸点約150~280 ℃,炭素数11~13程度の炭化水素からなる石油製品.原油の常圧蒸留および水素化精製によって得られる.高度の脱硫により,色相と燃焼性が高められ,おもにストーブ,コンロ用など家庭燃料として用いられる白灯油のほか,農業用発動機燃料,溶剤などにも使用される茶灯油がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…またナタネ油かすは綿実油かす,干鰯とならぶ最も優れた近世の肥料となった。しかし,ナタネは江戸での灯油需要の確保のため,幕府から他に類をみない厳しい統制をうけた作物であり,販売価格もおさえられがちであった。このためナタネは,作付面積,反当収量の多いナタネ作地帯でも,綿作のようにそれのみで農業の拡大再生産が可能なほどの有利な商品作物とはなりえなかった。…
※「灯油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
7/22 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新