南アメリカの民俗楽器。アンデスの山岳地帯(ボリビア,ペルー,アルゼンチン北部など)で用いられる小型ギターで,起源は17世紀ころスペインから移入されたギターの一型にある。通常5組の複弦を張り,一般のギターより音高が高い。木製のこともあるが,小動物アルマジロ(原地名キルキンチョ)の硬い甲羅をそのまま楽器の胴体(背面)として用いたものが多く,このことが外見上の最も顕著な特色となっている。ただし表面板のみはつねに薄い木材で作られる。和音をかき鳴らして歌や踊りを伴奏するのが普通だが,なかにはこの楽器で高度な独奏を行う専門奏者もいる。主として5音音階(ドレミソラの音階)にもとづくアンデス地方の民俗音楽を演奏し,音色の可憐さと相まって独特な情緒をもつ楽器である。なお,メキシコ,コロンビアその他にも,アルマジロの甲羅を利用した同種のギター類が見られる(ただしチャランゴという名称はアンデス地帯のみで用いられる)。
執筆者:浜田 滋郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ボリビア、ペルー南部、アルゼンチン北部のアンデス地域を中心に用いられるリュート属の弦鳴楽器。スペイン人のもたらしたギターをインディオ流に改変したもので、ヨーロッパ文化と南米固有の文化との融合によって生まれた楽器である。そのため、地域や個人の好みによってさまざまな材質、形状のものがつくられている。全長60センチメートル前後、十数個のフレットが木製の指板につけられ、胴にアルマジロの甲らを用いるのが一般的であるが、ギターのように木製の平らなものもある。この甲らに丸い響口をあけた木製の響板を張る。弦は金属かナイロンが用いられ、複弦では五コースのものが多いが、四コースのものや、単弦、三弦のものもある。もっとも一般的な調弦は、E5-A4、第三コースはE4とE5のオクターブ、そしてC5-G4というものである。ペルーでは、より小形のチャランゴをチリャドールchilladorとよんでいるが、これは「金切り声をあげる」を意味するスペイン語チリャールchillarからきている。
[卜田隆嗣]
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