太平洋側では福島県以南,日本海側では石川県以南の日本,朝鮮半島南部,台湾および中国中部の海岸に生育するキク科の多年草。根茎は太く,長い柄のある常緑の葉を根生する。若葉は灰褐色の綿毛をかぶっているが,生長した葉はほぼ無毛となり,葉の表は濃緑色で光沢がある。葉身は円状腎形で大きく,縁に不整歯牙がある。花は10~12月,太い花茎の先にやや散房状につく頭花である。頭花は中央部の両性の筒状花と周辺部の雌性の舌状花とからなる。瘦果(そうか)は円柱形で毛を密生する。
ツワブキ属Farfugiumは東アジアの特産属で,屋久島と種子島には固有のカンツワブキF.hiberniflorum(Makino)Kitam.がある。これは葉は心形でうすく,縁に欠刻と鋸歯があり,やや角ばった感じがする。頭花もひと回り小さい。ツワブキは庭園に移してもよく育つので,古くから栽培され,斑(ふ)入り葉のものや縮れ葉などの多くの園芸品種がある。
執筆者:小山 博滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キク科(APG分類:キク科)の多年草。根茎は太く、長い柄のある根出葉を数枚出す。葉身は質が厚く腎(じん)形。上面は深緑色でつやがある。11月~1月、高さ50~80センチメートルの太い花茎を出し、多数の頭花を散房状につける。頭花は舌状花と管状花からなり、開花径が4~6センチメートルで美しい。痩果(そうか)は長さ0.5~0.7センチメートルで、毛を密生する。冠毛は汚褐色で、長さ0.8~1.1センチメートル。海岸に生え、福島県、石川県以西の本州から沖縄、朝鮮半島、台湾および中国大陸の東部に分布する。
葉が常緑で美しく、また花の少ない冬期に花を咲かせるので、古くから庭に植えられ、観賞用のいろいろな品種がある。民間薬としては葉をもんだり、火であぶって柔らかくし、腫(は)れ物や湿疹(しっしん)、切り傷などの上にはる。また解毒剤として用いる。名は、葉につやがありフキによく似ることによる。
[小山博滋 2022年3月23日]
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