ディラックの電子論(読み)ディラックのでんしろん(その他表記)Dirac's theory of electron

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ディラックの電子論」の意味・わかりやすい解説

ディラックの電子論
ディラックのでんしろん
Dirac's theory of electron

1928年ポール・A.M.ディラックは量子力学における電子のシュレーディンガーの波動方程式を特殊相対性理論の要請に合うように書き改めた。この相対論的量子力学のディラック方程式に基づいて電子の性質,ふるまいを論じる理論をディラックの電子論という。ディラック方程式は電子のスピンを原理的に導入したまではよかったが,同時に電子は正のエネルギーだけでなく負のエネルギーもとれることになって,電子がどんどん負エネルギー状態に落ち,不安定であるという困難を生み出した。ディラックは空孔理論を提唱してこの困難を解決し,さらに陽電子(電子の反粒子)の存在を予言した。陽電子の存在は 1932年カール・D.アンダーソンにより宇宙線の霧箱写真のなかに見出された。電子だけでなくμ粒子,陽子,中性子などスピン 1/2の素粒子はディラック方程式に従うと信じられ,その反粒子も実験的に見出されている。ディラックの電子論は発展して量子電磁力学となり,湯川秀樹による中間子の存在の提唱と相まって,さらに素粒子論(→素粒子物理学)へと開花した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

1 多数の語を集録し、一定の順序に配列して一つの集合体として、個々の語の意味・用法、またはその示す内容について記したもの。語のほかに接辞や連語・諺なども収める。また、語の表記単位である文字、特に漢字を...

辞書の用語解説を読む