デイ・ケア(読み)でいけあ(英語表記)day care

翻訳|day care

日本大百科全書(ニッポニカ) 「デイ・ケア」の意味・わかりやすい解説

デイ・ケア
でいけあ
day care

在宅の療養者が心身機能維持・向上のために日帰りで受ける治療のこと。精神障害者のデイ・ケアは1946年にイギリスのビエラJoshua Bierer(1901―1984)とカナダのキャメロンEwen Cameron(1901―1967)によって始められた。日本のデイ・ケアは、1958年にアメリカで開催された第1回世界デイ・ケア会議に参加した加藤正明(1913―2003)が、帰国後に国立国府台(こうのだい)病院(現、国立国際医療研究センター国府台病院)で試行的に開始したのが嚆矢(こうし)である。1963年(昭和38)に厚生科学研究費を受けて国立精神衛生研究所(現、国立精神・神経医療センター精神保健研究所)で実践研究が始められた。デイ・ケアは病院と地域をつなぐもので、医療の一環として行うものと、地域ケアの一環として行うものとがある。1974年には医療の一環として行う精神科デイ・ケアに保険診療が適用されることとなり、1975年に地域ケアの一環として行う保健所デイ・ケアが厚生省(現、厚生労働省)の補助金事業として開始されるところとなった。

 精神科デイ・ケアは精神科通院医療の一形態で、精神障害者等に対しておおむね日中6時間程度、医師指示と十分な指導監督のもとで作業療法士看護師、精神科ソーシャルワーカー、臨床心理技術者等によって集団精神療法、作業指導、レクリエーション活動、創作活動、生活指導などのほか療養指導が行われる。実施施設は、大規模なものが1日50人を限度とする規模(医師および従事者3人で構成)のものと、1日70人を限度とする規模(医師2人および従事者4人で構成)のもの、小規模なものが1日30人を限度とする規模(医師および従事者2人で構成)のものと定められている。2006年(平成18)には実施時間を日中3時間程度とする「ショート・ケア」(大規模、小規模の基準あり)が新設され、現在、「精神科デイ・ケア等」は、「デイ・ケア(6時間)」「ナイト・ケア(16:00以降4時間)」「デイ・ナイト・ケア(10時間)」「ショート・ケア(3時間)」の4タイプに分けられている。これらを「医療デイ・ケア」ということができる。また、地域ケアでもデイ・ケアが行われてきており、これは「非医療デイ・ケア」ということもできよう。この非医療デイ・ケアは、地域生活支援センターをはじめ「いこいの家」で行われるなど多様化しているが、保健所デイ・ケアもなお行われ、市町村保健センターに移行されているものもある。障害者自立支援法の制定によって、精神障害者の非医療デイ・ケアや知的障害者等のデイ・サービスなどの居宅サービスは、一括して「地域活動支援センター」の活動内容として整理されるところとなった。

 なお、従来からの高齢者を対象とするデイ・ケアは「デイ・サービス」と言い習わされている。介護保険法が施行されてからは、老人デイサービスセンター等において、入浴、排泄(はいせつ)、食事等の介護、生活等に関する相談、助言、健康状態の確認その他必要な日常生活のお世話や機能訓練が「通所介護」(デイ・サービス)として行われている。また、病状が安定し、計画的な医学的管理下にあってリハビリテーションが必要であると主治医が判断した要介護者については、介護老人保健施設や病院あるいは診療所において心身機能の維持や回復を図り、日常生活の自立を助けるために必要なリハビリテーションを行っている。これを介護保険法上では「通所リハビリテーション(デイ・ケア)」とよんでいる。このように、在宅する高齢者の心身機能を向上させるための通所治療ないし機能の維持回復訓練を行うものをデイ・ケアとよび、高齢者関連福祉施設で行う機能の維持回復訓練や介護介助を行うものをデイ・サービスといっている。

 介護保険法はいまなお安定的な運営ができているとはいいがたいが、その意図する地域密着型のサービスは徐々に定着をみていることから、デイ・サービスもデイ・ケアも広がってきている。

[吉川武彦]

『村田信男他編『精神科デイケア』(1996・医学書院)』『日本デイケア学会編『精神科デイケアQ&A』(2005/改題、改訂新版『新・精神科デイケアQ&A』・2016・中央法規出版)』『精神保健福祉研究会監修『我が国の精神保健福祉(精神保健福祉ハンドブック)平成21年度版』(2009・太陽美術)』

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