トリカブト

百科事典マイペディアの解説

トリカブト

カブトギク,ハナトリカブトとも。古くから観賞用に栽培されるキンポウゲ科の多年草。高さ1m内外,掌状に深裂した葉を互生する。秋,茎頂に深紫色の高さ3cm内外の花を多数円錐状につける。萼片は花弁状で,5枚のうち上側の1枚はかぶと状となる。花弁は2枚あり,蜜腺状。果実は袋果。トリカブトの名はトリカブト亜属の総称としても用いられ,日本の山野にヤマトリカブトホソバトリカブトなど30種あまりが自生する。ほとんどの種がアコニチン,メサコニチンなどのアルカロイドを含み猛毒で,アイヌは矢にこの根の汁を塗ってクマ狩に用いた。薬用植物としても重要で,根を干したものを烏頭(うず),附子(ぶし)などといい漢方薬(強心利尿作用)とする。
→関連項目レイジンソウ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トリカブト
とりかぶと / 鳥兜
aconitemonkshoodwolfbane
[学]Aconitum

キンポウゲ科の多年草。植物としてはもっとも強い毒を含み、天然物としてはフグ毒に次ぐという。名は、花の形が烏帽子(えぼし)に似ることによる。単にトリカブトというときは、トリカブト属植物総体をさす場合と、中国原産で園芸に用いられるハナトリカブトを特定する場合がある。トリカブト属は、北半球の温帯から寒帯に約300種あり、二年生の根をもつ狭義のトリカブト類と多年生の根をもつレイジンソウ類に大別される。花は左右相称、青紫色のよく目だつ5枚の萼片(がくへん)と、それらの内部に蜜腺(みつせん)に変形した花弁があり、マルハナバチ類による送粉に適応して進化した植物群である。
 トリカブト類は日本に約30種あるが、種を識別する手掛りとしては、葉の概形(円形か五角形か)、花柄の毛(あるかないか、ある場合は屈毛か開出毛か)などの特徴が重要である。関東から中部地方、中国地方から四国、九州のそれぞれの山地や丘陵に生えるヤマトリカブト、タンナトリカブト、ホソバトリカブトがもっとも目に触れる機会が多い種類で、いずれも花柄に屈毛が生え、葉は五角形である。ホソバトリカブトは葉が円形で切れ込みが深く、花柄に開出毛がはえ、本州中部地方の代表的な高山植物の一つである。日本産の種は多くは有毒であるが、サンヨウブシのように無毒の種もある。また有毒種であっても、産地によって毒力に差がある。[門田裕一]

薬用

トリカブト類は全草に毒性の強いアコニチン系アルカロイドを含んでいるが、実用に供されるのは根である。漢方では、根を附子(ぶし)または烏頭(うず)と称し、鎮痛作用のほか、冷えと虚脱状態を治す作用を生かして、神経痛、リウマチ、激しい下痢、新陳代謝機能の衰弱、体温や血圧の下降などの治療にあてる。これらの適応症でない場合には、微量でもひどい中毒症状を引き起こすので注意が必要である。中国では紀元前から加熱して減毒する方法を用いており、減毒したものを炮附子(ほうぶし)と称する。なお、熱病にかかっても熱感を覚えず、悪寒を強く訴える状態では、多量服用しても中毒しないため(漢方ではこれを陰証とよぶ)、附子の適応症とされている。[長沢元夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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