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トリックスター トリックスターtrickster

翻訳|trickster

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

トリックスター
trickster

神話や民間伝承のなかで,トリック (詐術) を駆使するいたずら者として活躍する人物や動物。ときには愚かな失敗をし,みずからを破滅に追いやることもあるが,詐術的知恵や身体的敏捷性をもって神や王など秩序の体現者を愚弄し,世界 (社会) 秩序を混乱・破壊させる。一方,一般の人間界に知恵や道具をもたらす文化英雄としての役割も果し,両義的な性格をもつ。北アメリカインディアンの間ではコヨーテワタリガラス,野ウサギなどが,またアフリカではクモやカメ,野ウサギなどの動物であることが多い。

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デジタル大辞泉の解説

トリックスター(trickster)

詐欺(さぎ)師。ぺてん師。
神話や民間伝承に現れるいたずら者。秩序の破壊者でありながら一方で創造者であり、善と悪など矛盾した性格の持ち主で、対立した二項間の仲介・媒介者の役目を果たす。

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百科事典マイペディアの解説

トリックスター

〈いたずら者〉の意。世界各地の神話には,臨機応変な知恵をひねり出して危機を脱したり,強大な敵をまんまと出し抜く動物や人物が,ユーモアをもって描かれていることがある。

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世界大百科事典 第2版の解説

トリックスター【trickster】

策略や詐術(さじゆつ)を駆使して活躍する〈いたずら者〉がヒーローとして登場する神話や民話は世界各地にみられる。そのような登場人物をトリックスターという。トリックスターは,策略を用いる狡猾さ・賢さを賞賛される一方,欲望を制御できずに失敗する愚かさ・滑稽さを笑われる者であり,また人間に火や文明をもたらす文化英雄的な神であると同時に,単なるいたずら好きの反社会的な破壊者でもある。そこでは,善なる文化英雄と悪しき破壊者,あるいは賢者と愚者という,法や秩序からみれば一貫性を欠いた矛盾する役割が,一主人公の属性として語られる。

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大辞林 第三版の解説

トリックスター【trickster】

詐欺師。ぺてん師。手品師。
神話や民話に登場し、人間に知恵や道具をもたらす一方、社会の秩序をかき乱すいたずら者。道化などとともに、文化を活性化させたり、社会関係を再確認させたりする役割を果たす。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トリックスター
とりっくすたー
trickster

世界各地の神話や民話に登場するいたずら者。道化の神話的形象といえるが、これはたとえば、西アフリカにおけるいたずら者の神や、アフリカ全土で語られる野兎(のうさぎ)や蜘蛛(くも)、亀(かめ)といった動物であったりする。北米インディアンの神話においても、コヨーテやワタリガラスなどの動物になったり、人間の姿をとったりしている。彼らには共通して、機知、機転、狡猾(こうかつ)さ、気まぐれ、悪ふざけなどの性格がみられる。また、この世に混乱と破壊を引き起こすと同時に、しばしば混乱のなかから未知の文化要素を生み出し、破壊のあとにふたたび新しい秩序をもたらすという文化英雄的役割も果たしている。
 こうした特徴は、ギリシア神話の商売と競技の守護神で、霊魂を冥界(めいかい)に案内するヘルメスや、日本神話の素戔嗚尊(すさのおのみこと)などにも認められる。トリックスターは、神と人間、天と地、秩序と混沌(こんとん)、自然と文化の間を行き来し、その境界で活躍する両義的存在となっている。心理学者のユングはトリックスターを「未分化な人間の意識の模写」と考えたが、フランスの人類学者レビ(レヴィ)・ストロースは「人間が世界を把握するために用いる基本的カテゴリーの対立を仲介し、世界についての統一的認識を与えるもの」と説明している。[加藤 泰]
『山口昌男著『道化の民俗学』(1975・新潮社)』

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世界大百科事典内のトリックスターの言及

【噓】より

…西洋などのキリスト教国では4月1日を〈万愚節(エープリル・フールApril Fools’Day)〉といって,罪のないうその許される日とされ,日本でもこの風は行われているが,逆に他の日はうそは許されないのであり,告解とか懺悔という形で個人的に償わねばならないのが特徴である。【飯島 吉晴】
[神話におけるうそ]
 アフリカの神話にはノウサギが主人公であるトリックスター(いたずら者)の話が多い。アメリカ・インディアンの間ではコヨーテがもっとも有名であるが,いずれも動物が主役である。…

【道化】より

…foolの語源はラテン語のフォリスfollis(〈ふいご〉の意)で,道化の無内容な言葉を〈風〉にたとえたと思われる。他にも類語は多く,貴族・富豪の饗宴に伴食したバフーンbuffoon(これも〈風〉を意味するイタリア語buffaに由来する),宮廷お抱えのジェスターjester,タロット(のちのトランプ)のジョーカーjoker,神話・伝説や儀礼に登場するいたずら者のトリックスター,そしてコメディア・デラルテからサーカスを経てミュージック・ホールや無声映画にいたる民衆的芸能に欠かせぬクラウンなどがある。 これらを整然と区別し定義するのは不可能だが,後述する〈儀礼の道化〉が典型的に示している,固定的な秩序へのおどけた批判者,思考の枠組みの解体者という役割は,あらゆる分野の道化に共通して見られる。…

【文化英雄】より

…彼は,神に反抗し,神を欺いて人類のもとに火や穀物をもたらした。プロメテウスはまた,性格や行動などにおいて善悪二面性を持つ存在であり,トリックスターの様相を示している。プロメテウスに限らず,文化英雄はしばしばトリックスターと重なり合う。…

※「トリックスター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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