スイスの精神科医。ユンクとも。7月26日、ボーデン湖畔のケスビルに生まれる。父はプロテスタントの牧師。4歳のときバーゼルに移住、そこで初等教育を受ける。1895年にバーゼル大学に入学。古典や考古学を専攻するつもりであったが、医学で学位をとり、1900年卒業と同時にチューリヒ大学に職を得てブルクヘルツリ精神科病院の助手になる。院長のブロイラーに認められ、その協力者となる。1902年フランスでジャネの下で研究。1905年チューリヒ大学の私講師となる。そのころからフロイトの著作に触れ、相互に文通を始め、1907年フロイトとウィーンで初めて会い、チューリヒにフロイト研究所を設立、1910年国際精神分析協会が創設されるに及んで初代会長となる。1913年、リビドー理論についての意見の違いからフロイトとの文通が絶える。1914年協会を脱退し、独自の「分析的心理学」の一派を創設。また、大学を辞職し開業する。1920年以降は北アフリカ、アリゾナ、ニュー・メキシコ、東アフリカなどに原始文化の研究旅行を続ける。神話、宗教、錬金術、オカルティズムなどに興味をもつ。1944年バーゼル大学にユングのための医学的心理学の講座が設けられるが、健康を理由にして1年で辞職。1948年チューリヒにユング研究所を設立する。1961年6月6日、キュスナハトで急死した。
[外林大作・川幡政道 2015年4月17日]
フロイトとユングを対比していえば、前者は生物学的、科学的であるのに反して、ユングはより宗教的、哲学的な色彩が強い。その心理学は精神分析というより「救済法」に近く、また心的決定論というより目的論を強調する。リビドーはフロイトの考えるように性的なものでなく、あらゆる知覚、思考、感情、衝動のもとになるエネルギーとみなされ、心は快感原則に支配されるのでなく、このエネルギーによって自律的に調節されていると考えられる。心すなわち人格は全体として意識と無意識に分けられ、さらに無意識は個人的無意識と集合的無意識に分けて考えられる。意識は自我とペルソナpersona(仮面)から成り立ち、自我は意識の中核をなし、ペルソナは環境に対処してゆく顔である。自我とペルソナとが不調和になれば心理的な負担を引き起こす。個人的無意識は経験に基づくものであるが、抑圧された願望のことで、基本的には意識されうるものと考えられる。集合的無意識はまったく意識されることのないものであるが、人格全体を支配し、種族的に遺伝されたものであり、個人的経験を超えたものである。この集合的無意識はアニマanima(精神の深奥の基底にある女性像)、アニムスanimus(男性像)などの原型から成り立っている。これは先史時代から引き継がれた人間の表象能力であり、あらゆる時代のあらゆる人間が遭遇しなければならない困難、危険に際して繰り返して経験されるものである。この原型が発達して統一のある人格がつくられる。こうした人格の個々の様相を記述するものとして人格の類型論が取り上げられ、内向、外向の類型が区別され、また思考、感情、感覚、直観の心的機能に対応して8類型が区別される。
ユング自身の著作は膨大なものであるが、体系的なものはない。ユングの研究家のヤコービJolanda Jacobi(1890―1973)やフォーダムFriede Fordham(1903―1988)はユングの思想を体系的にまとめる努力をしている。
[外林大作・川幡政道 2015年4月17日]
『『ユング・コレクション』全14巻(1986~2002・人文書院)』▽『河合隼雄著『ユング心理学入門』(1967/新装版・2010・培風館)』▽『ヤコービ著、高橋義孝監修・池田紘一他訳『ユング心理学』(1973・日本教文社)』▽『フォーダム著、吉元晴彦他訳『ユング心理学入門』(1974・国文社)』
ドイツの評論家。第一次世界大戦では航空兵、のちに義勇軍兵士となる。戦後、弁護士となったが、ドイツ人民党(DVP)で活動し、とくにフランスに支援されるプファルツの分離主義と闘い、1924年初め、その指導者を暗殺したのちミュンヘンに逃れ、文筆活動を始めた。著書『劣等人間の支配』(1927)によってキリスト教的・保守的革命を主張した。だが彼は、ナチズムの行動主義を退け、その人種論と大衆的性格を批判した。1932年以来首相パーペンの政治顧問となり、1934年6月17日マールブルクでのパーペンのナチス批判演説を起草したが、このため逮捕され、6月30日~7月1日のレーム事件の最中に殺害された。
[吉田輝夫]
スイスの精神医学者。分析心理学の創始者。ケスウィルに牧師の子として生まれ,バーゼル大学医学部卒業後,チューリヒ大学の精神科でブロイラーの助手となる。フランスに留学,ジャネの下で研究し,帰国後,言語連想法の実験による研究で有名となる。S.フロイトの《夢判断》を読み感激したユングは,1907年にフロイトを訪ね,両者は協調して精神分析学の建設と発展に寄与する。09年にはフロイトとともにアメリカに講演旅行に行き,10年,国際精神分析学会の会長になるが,12年に発表した《リビドーの変遷と象徴》によってフロイトとの考えの相違が明らかとなり,論争を重ねた末に訣別する。その後,13-16年にわたって,強い方向喪失感に襲われ,後年エレンベルガーH.Ellenbergerが〈創造の病〉と名づけたような内的危機に直面する。この時期に彼自身が体験した〈無意識の対決〉を基礎として,それに学問的検討を加えることによって,彼独自の分析心理学の体系が確立される。
ユングは精神病者の幻覚や妄想が古来からある神話,伝説,昔話などと共通の基本的なパターンの上に成り立っていることを認め,〈元型〉という考えを19年に提唱した。彼は人間の無意識は個人的無意識と普遍的無意識の2層が存在し,後者はひろく人類に共通であり,そこに元型が存在すると仮定した。元型それ自体は人間にとって知ることができないが,元型的なイメージは意識によって把握され,それが宗教的なシンボルなどになると考えられる。したがって,世界の神話や宗教のシンボルについて研究すると,そこに共通する元型の存在を明らかにできるのである。ユングはこのように西洋のみならずひろく全世界の宗教に目を向けていたので,早くも1920年代より,ヨーロッパ中心主義に反対し,そのころは絶対的な強さをもって欧米文化を支えていたキリスト教と自然科学を相対化する努力を続けた。彼はキリスト教や自然科学に反対するのではなく,あくまでそれを絶対化することに反対したのである。彼のそのような努力は《心理学と錬金術》(1944),《アイオーン》(1951),《結合の神秘》(1955-56)などの一連の労作に示されている。彼はこれらの著作のなかで,ヨーロッパ精神史において正統派のキリスト教を補完し,より全体的なものを求める流れが存在してきたことを明らかにし,その意義を強調したのである。彼はまた東洋にも深い関心を示し,中国の《易経》,日本の禅などの紹介にも努めた。彼が人間存在の全体性の元型として重視する〈自己〉の概念は中国の〈道〉の考えに影響されたものといわれている。自己のシンボルとしての〈マンダラ〉を重視した点にも東洋の強い影響が認められる。彼の考えは最初あまり理解されなかったが,70年ころより世界の人々の関心をあつめるようになっている。
執筆者:河合 隼雄
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1894~1934
いわゆる「保守革命」論者に数えられるドイツの政治評論家。1932年以来パーペンの政治顧問となり,34年6月17日のパーペンのナチス批判演説草稿起草のかどで同月26日逮捕され,同月30日夜のレーム事件の最中に殺害された。
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出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
…本来はラテン語で〈魂〉を意味する語。スイスの精神医学者ユングが分析心理学における用語として用い,現在ではその意味で使用されることが多い。ユングは夢分析の際に,男性の患者の夢に多く特徴的な女性像が出現することに注目して,そのような女性像の元型が,男性たちの普遍的無意識内に存在すると仮定し,それをアニマと名づけた。…
…本来はラテン語でイメージを意味する語。ユングが用いた概念で,シュピッテラーの小説《イマーゴ》(1906)にヒントを得て考えついたと言う。個人が他人を把握する仕方を方向づける無意識的人物原型を言う。…
…考証学の栄えた清朝では,易学の分野でも胡渭(こい),恵棟(けいとう),焦循(しようじゆん)などが輩出し,漢易の復元につとめたが,易注を通して自己の気一元論的世界観を展開した,明末・清初の王夫之(船山)が異彩を放っている。なお,スイスの深層心理学者C.G.ユングとその派の人々が《易》のメカニズムに大きな関心を寄せているのは,《易》の現代的意義を考えるうえで注目される。【三浦 国雄】。…
…フロイトは,神経症やヒステリーが生理的原因によって起こる病気ではなく,無意識のコンプレクスによって起こることを発見し,心身の相関性を明らかにした。ユングはフロイトの影響を受けながらも,その性欲説を批判し,性は単なる生物的本能を意味するにとどまらず,無意識に潜在する深い精神的要求,たとえば芸術や宗教の問題と関係があることを明らかにした。フロイトやユングの考え方は最初強い非難を受け,精神医学者の一部に受けいれられたにすぎなかった。…
…ユングによる分析心理学の用語。〈原型〉〈太古型〉などとも訳される。…
…精神医学者ユングの内向性・外向性の性格類型に発想の基礎をおいた人格検査の一つで,アメリカのレアードD.A.Laird,サーストンL.L.Thurstoneらにより向性を簡単に調べるものとして発表された。日本では1932年に淡路円治郎,岡部弥太郎が50項目の質問に,はい,いいえの二件法で答える向性検査を作成し,次の式による向性点を算出した。…
…この両者の差が大であるとき,神経症が発生すると考える。自己に対して特別な定義を与えているのが,ユングである。ユングは自我が意識の中心であるのに対して,自己は意識も無意識も含めた心全体の中心であると考えた。…
…その流れの原点にフロイトがいたことはさきにふれた。しかし宗教の機能をいわば否定的にとらえたフロイトに対して,その門下から出たC.G.ユングは宗教経験を普遍的(集合的)無意識に関連づけて,むしろ積極的に評価した。すなわち原始以来の民族的な経験がわれわれの心の深層に集積されて宗教意識の母胎をなし,それが精神の成熟にも深く関与していると考えたのである。…
…前者はどちらかといえば,内在的な神あるいは汎神論的な考えに魅力を感じ,自分自身の中に神性,仏性をやどし,あるいは自然の美しい現象の中に神の営みを体験するタイプであり,後者は,超越的な神,きびしい父性的な神を信ずるタイプである。以上のような宗教的体験の研究のほかに,精神分析学的研究もあり,S.フロイトは《トーテムとタブー》(1912‐13)の中で父なる神の原型を見,ユングは曼荼羅のような図像(十字架もその変型)の中に心の平安を求める人間心性に注目した。また信仰や告白,あるいは祈りや瞑想,修行が,今日の精神療法といかなる関係があるのかも問われている。…
… このように十字は太陽,月,星,空,水,火,風,大地,雷電,生命の樹,豊饒,破壊と創造,復活と救済,吉祥,繁栄,超越,中心,統合などの象徴として古代から最も広く用いられてきた図形であり,方向性と中心を示すことによって,混沌から秩序を生みだす機能をもつものと考えられる。C.G.ユングは,このように普遍的にみられる十字表象は,人間の心の深層における所産であり,元型的な性格をもつとした。十字架【秋山 さと子】。…
… ところで,20世紀に入って,西欧近代の理性主義的観念体系の根底が批判され,また人間諸科学がめざましく発展すると,言語学や精神分析ないし心理学,民族学=人類学や社会学,美学,芸術学や宗教学などの分野で,〈象徴〉という用語は,以下の記述にみられるように,いっそう多様に用いられるとともに,重要な探究の対象となった。とくに言語学(ソシュール,ヤコブソン,バンブニストら)と精神分析(S.フロイト,ユング,ラカンら)の影響の下に,象徴するものとされるものの自然的対応関係の解釈だけでなく,自然的関係を超えた象徴作用(シンボリズムsymbolism)そのものの探究が深められた。こうして,たとえばレビ・ストロースが,〈社会は,本性として,その慣習,その制度のうちにみずからを象徴的に表出する〉といい,〈すべての文化は,諸々の象徴体系からなる一個の統合体であり,その最前列に言語活動,婚姻規則,経済関係,芸術,科学,宗教が位置する〉(モース《社会学と人類学》への序文)と述べたように,象徴作用の探究は,構造主義や記号論的方法の深化とともに,人間的諸事象(流行や広告,都市化現象や政治言語などにまでいたる)の解明の中心課題の一つとなっている。…
…スイスの心理学者・精神科医ユングの代表的な著作の一つ。1944年刊。…
…なぜなら世界の神話に共通する内容のある部分は,そういう神話をまったく知らぬ人が見る夢の中にもしばしばよく似た形で現れることが,深層心理学者たちによって注意されている。この事実に注目した,スイスの心理学者C.G.ユングは,人類に共通する〈普遍的無意識〉collective unconsciousの存在を想定した。そして夢や神話やさらにおとぎ話などにも共通して見いだされる表象や筋は,彼が,〈元型archetype〉と呼び,〈ペルソナpersona〉〈影shadow〉〈アニマanima〉〈アニムスanimus〉〈自己self〉〈太母Great Mother〉など,いくつかの類型に分類を試みている,この〈普遍的無意識〉の働きによって,生み出されると考えた。…
…性格学が学問として確立したのは類型学からである。その代表的なものとしては,ユング(内向型と外向型),イェンシュE.R.Jaensch(統合型と非統合型),ファーラーG.Pfahler(固執型と流動型),シュプランガー(理論的人間,経済的人間,審美的人間,社会的人間,政治的人間,宗教的人間の6種型),エーワルトG.Ewald(反応類型),クレッチマー(体質学的類型)などがあげられる。また精神病質人格に関しては,クレペリンが主として心理学的特性と社会学的関係から神経質,興奮者,軽佻者,ひねくれ者,虚言欺瞞者,反社会者,好争者,衝動者に分けており,K.シュナイダーは主として臨床経験にもとづいて性格異常(精神病質)を〈自分自身が悩むもの〉と〈社会が悩まされるもの〉に分け10類型(発揚者,抑鬱者,自信欠乏者,熱狂者,顕示者,気分変動者,爆発者,情性欠如者,意志欠如者,無力者)を列挙している。…
…〈夢は無意識にいたる王道である〉とフロイトは考えていた。彼の著作《夢判断》(1900)は,彼の最大の自信作であるが,その中で彼が説いた夢成立のさまざまなメカニズムは,E.ブロイラーとC.G.ユングとによって精神分裂病を心理学的に理解する理論的武器とされた。覚醒生活において無意識が露呈しないことはむしろ健康の印だが,精神分裂病においては,自我が著しく脆弱(ぜいじやく)化して抑圧がゆるむためにこの無意識が露出してくる。…
…キルケゴールは《死に至る病》(1849)第2部で,悪を善の欠如や無知と呼ぶギリシア哲学の規定は,キリスト教の罪観念をほとんど理解しないものだ,という。この書は罪を神の前での絶望,反抗と呼び,神と人間との根源的関係の齟齬(そご)と規定したが,この規定はS.フロイトやユングにおいても顧みられている。 聖書では,パウロが《ローマ人への手紙》5章にいうように,律法以前の罪,律法の下での罪,恩恵の下での罪が区別される。…
…人間の基本的態度を記述するため,ユングによって〈外向性〉とともに用いられた用語。ユングはS.フロイトとアードラーの学説の差に注目し,同一の事象が二人にとって異なった理論により説明されるのは,二人の基本的態度が異なるからであると考え,内向introversion―外向extraversionという概念をたてた。…
…古代エジプトでも,太陽神ラーは太陽船に乗って昼は東から西へ,夜はヌート神の体内もしくは冥界を西から東へと航行すると信じられていた。スイスの心理学者のC.G.ユングは,これを〈夜の航海〉の主題とよんで,海に象徴される無意識への退行と意識の再生による心理の変容過程を示すものと考えた。大魚にのまれて三日三晩海を航海した旧約聖書のヨナの話も同様な意味をもつものであろう。…
…ユングによる分析心理学の用語。〈集合的無意識〉とも訳す。…
…スイスの精神医学者ユングの創始した心理学。彼はS.フロイトとともに精神分析学の発展に尽くしたが,1913年には完全に離別,彼独自の心理学を確立した。…
…いずれも,過補償という危険が存在している。一方ユングは,人間の無意識が意識の一面性をつねに補償する傾向をもつことに注目した。たとえば,意識の態度が外(内)向的な人は,無意識的には内(外)向的であるという。…
…さらに心理学は無意識の問題や人間の霊性の進化といった魔術の課題にメスを入れている。C.G.ユングが錬金術に深い関心を寄せ,その象徴体系を心理学の面から解明しようとしたことは,今日広く知られている。【荒俣 宏】
[魔術と近代科学]
科学と魔術との関係は,ごく単純に考えれば,科学は魔術と敵対するものであり,歴史的にみても,魔術の〈非合理性〉を指弾し克服する形で誕生し発展してきたと考えられる。…
…古い遺品としてインド北西端のラダック地区,アルチ寺三層堂壁画の曼荼羅(12~13世紀ころか)が知られる。タントラ【石田 尚豊】
[ユング心理学と曼荼羅]
スイスの精神科医,心理学者のC.G.ユングは,四つの門のある聖域を中心に幾何学的な図型を描くチベットの曼荼羅図に心理学的な意味を見いだしたことで知られる。ユングは自分自身の体験と多くの患者たちの観察の中から,しばしば曼荼羅と同様なイメージが,外的な世界からの情報とは関係なく,その人個人の内的なイメージとしてあらわれることに注目し,これを心理学用語として〈マンダラ〉と名づけ,その普遍性を証明しようとした。…
…つまり,主人公の年齢層が循環的に並び,子どもと老人が隣合せに位置しているのである。
[心理学的解釈]
この点でもっとも成果をあげ,大きな影響力をもつのはC.G.ユング(1875‐1961)とその学派の研究である。ユング派は,昔話のなかに成長過程,成熟過程をみる。…
…しかし単なる気象現象や光学的錯覚として説明しきれない事例が数多くあることもまた事実である。 なお,スイスの精神病理学者ユングは,その著書《現代の神話》(1958,邦訳《空飛ぶ円盤》)の中で,人間の心の最下層にある人類共通のイメージ内容(元型)がUFO実見報告の上に反映していると主張し,その形状(円,楕円など)を全体性のシンボルと考えた。【柴野 拓美】。…
…一方,最初はこれに参加していたA.アードラーは,夢の背景にある内容を過去の性的願望の表れとするフロイトの考えに納得せず,むしろ将来への展望を含む権力的願望が,抑圧されているものと考えた。 さらにC.G.ユングは,夢の中に神話的内容を認め,夢にはフロイトのいうようなある個人の過去の抑圧された願望内容をもつものもあり,またアードラーの考えのように,未来志向を秘めているものもあるが,古今東西の人類に普遍的に存在する普遍的無意識から現れるものもあると考えた。いわゆる〈大きな夢〉とユングが呼ぶ神話的な内容をもった夢は,その夢を見た人の私的な過去や未来には関係なく,ある部族,または民族,さらに人類全体とかかわり,多くの人に影響を与えるような内容をもつものもあるとしたのである。…
…フロイトの初期の神経症論,性欲論,自己愛論は,ことごとくこのリビドーという中心概念に基づいて構成されてきたといえる。C.G.ユングもリビドーなる概念を用いるが,ユングにとっては,リビドーとは精神的エネルギー一般を意味する。つまりフロイトは本能二元論を堅持したわけだが,ユングの見方は一元論に傾いたといえる。…
…したがって作業の原材料(第一原質)も,窮極物質たる〈賢者の石〉も,ともに両性具有神の図像で表されることが多い。アニマ‐アニムスなる対概念で,男性の内に潜む女性,女性の内に潜む男性を想定したC.G.ユングが,精神分析学の観点から錬金術研究に赴いた際にも,この性的シンボリズムが一つの手がかりとなった。 両性具有の神話は,文学においてはドイツ・ロマン派に開花したほか,スウェーデンボリの影響が濃いバルザックの小説《セラフィータ》で最も魅惑的な表現を得た。…
…この面に尽力したR.フラッドやM.マイヤー,またJ.D.ミューリウスなどの著作には,美術的に興味ぶかい寓意図が掲載されている。C.G.ユングはこれらの錬金術文献を夢想と無意識的イメージの観点から分析し,大著《心理学と錬金術》を著し,金属変成の過程が魂の浄化,心理的発展の過程のメタファーであることを説いている。また黒から黄金へと進展する錬金術の色彩論は,すでに大聖堂のばら窓など宗教的装飾にも使用されていたが,〈光の形而上学〉や光学とも結びつき,色彩的象徴体系として独自の発展をみるに至った。…
…だがワイマールの思想についていえば,それは第1次大戦と革命後に突如出現したのでなく,前世紀の1890年代から世紀末にかけての大衆化状況の中で醸成されていたといえるだろう。 文学と芸術における表現主義,ニーチェの〈神の死〉宣告,フロイトの精神分析,ユングの深層心理学,マッハの感覚要素論は,従来の学問観に強い衝動を与えずにはいなかった。実証主義と歴史主義,さらにそれらを母胎にした社会科学はその基底を問責された。…
※「ユング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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