トルクコンバーター(英語表記)torque converter

翻訳|torque converter

デジタル大辞泉 「トルクコンバーター」の意味・読み・例文・類語

トルク‐コンバーター(torque converter)

自動変速機一部をなす油圧式のトルク回転力)変換機。密閉容器の中に二つの翼車を対置し、中を油で満たす。一方を回すと、油の流れで他方も回り、その際、間に固定翼を置いて流れの方向を変えると、低速時にはトルクが増大され、高速時にはトルクが小さくなり、変速機の要求と一致する。トルコン

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精選版 日本国語大辞典 「トルクコンバーター」の意味・読み・例文・類語

トルク‐コンバーター

〘名〙 (torque converter) 流体変速機。作動油媒体にして回転力の変速を自動的に加減するもののうち、駆動ポンプと駆動されるタービンによって構成されている構造のものをいう。ギヤによる変速をしない。オートマチック自動車の変速に使われている。〔マイ・カー(1961)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「トルクコンバーター」の意味・わかりやすい解説

トルクコンバーター
torque converter

ポンプ羽根車,タービン羽根車および案内羽根ステーター)を主要な構成要素とする流体式のエネルギー伝達装置。図1に基本構成を示す。ポンプ羽根車は入力軸(原動機)に,タービン羽根車は出力軸(負荷)に結合され,ステーターは固定される。液体を満たしてポンプ羽根車を回すと,液体はポンプ羽根車からトルクを与えられてタービン羽根車に流入し,それにトルクを与えて回転させステーターに入る。ステーターでは流れの向きを変えてポンプ羽根車に戻る。すなわち,図1に示した方向に液体が一巡して羽根車との間でエネルギーの授受が行われ,結果として原動機からのエネルギーが負荷に伝達される。固定のステーターが液体の流れ方向を変えるため,ステーターが力(トルク)を受けもち,その分だけ入出力軸のトルクに差を生ずることになる。したがって,流体継手とは異なり,トルクコンバーターはトルクの変換のできる変速機としての特性をもつ。

 入力軸回転数をn1,出力軸回転数をn2,入力軸トルクをT1,出力軸トルクをT2,ステータートルクをTS,効率をη,速度比en2/n1,トルク比をtT2/T1とすると,

 T1TST2,η=T2n2/T1n1te

となる。性能上は効率の最大値ηmaxと,e=0でのトルク比tSの大きさが問題とされる。図2にトルクコンバーターにおける速度比と効率およびトルク比の関係を示したが,ηmaxを高くするとtSが低下し,逆にtSを高めるとηmaxが低下する傾向がある。ηmaxを80%以上とすると,ポンプ,タービンおよびステーターが一つずつである形式でtS<4,タービン羽根車の数を増やせばtSを増大できる。低速度比ではステーターの受けもつトルクTSが大きく,このためtも大きくなる。しかしながら速度比が大きくなるにつれ,tは低下し1以下となり効率も低下する。この原因は,TSが負となることにある。そこで,トルク比が1となる点(クラッチ点という)以上の速度比ではステーターを空転させ,トルクを受けもたない状態,すなわち流体継手とするのが望ましい。このためには,ステーターと固定軸との間に,一方向にのみ自由な回転を許す一方向クラッチを備えればよい。この構造のトルクコンバーターをトルクコンバーター継手と呼び,高速度比領域での性能が向上する。さらにステーターを2分割にし,空転する速度比をずらせることも行われる。

 トルクコンバーターのトルクと速度比の関係は,動力一定の特性に近く,自動車(おもに乗用車)の変速装置に適合するため,広く用いられている。一般にはトルクコンバーター単体ではtSが不足するので,トルクコンバーター出力軸に補助の歯車装置を組み合わせて用いるのが普通である。
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百科事典マイペディア 「トルクコンバーター」の意味・わかりやすい解説

トルクコンバーター

トルコンとも。駆動・被動両軸を,流体を媒介として結合,動力伝達を行い,負荷の変動に応じて自動的に変速作用をする流体変速装置。ドーナツ状管路に渦巻ポンプ,水タービン,ステーター(案内羽根)を組み込んだ構造で,中に入れた油がこの順で循環する。駆動軸はまずポンプを回転させ,油にエネルギーを与えてタービンを動かし,被動軸を回転させる。負荷が一定で両軸がいっしょに回転すれば油の循環は止まり,負荷が変動するとステーターの反動作用によりトルクの増減が行われる。トルクコンバーターと歯車変速装置を組み合わせたものは自動車やディーゼル動車の変速装置に多用され,歯車変速装置の切換えも油圧により自動化したものはフルオートマチック・トランスミッションという。
→関連項目自動変速装置水力機械ディーゼル機関車変速装置流体継手流体変速装置

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トルクコンバーター」の意味・わかりやすい解説

トルクコンバーター
とるくこんばーたー
torque converter

液体(一般に油)を作動媒体として一つの軸から他の軸へ動力を伝達する装置。流体変速装置ともいう。二軸間の速度比を無段階に変えることができる。ターボ型ポンプ羽根車、タービン羽根車および案内羽根(ステーター)から構成されている。

 ポンプ羽根車は入力軸(原動機軸)に、タービン羽根車は出力軸(負荷軸)に取り付けられ、ステーターは入力軸や出力軸とは無関係に、固定された枠に直接支持される。ポンプ羽根車によってトルク(回転力)を与えられた液体は、タービン羽根車の中を流れる間にトルクを与えてこれを回転させ、ステーターで方向を変えてポンプ羽根車に戻る。ステーターがトルクを増すので、そのトルクの大きさだけ入出力軸間にトルクの差を生ずる。すなわち、流体継手(つぎて)とは異なり、トルクコンバーターはトルクの変換を伴う変速装置である。

 負荷の変動に応じて出力軸の回転速度が自動的に変化し、その変化が原動機に影響しないという特徴をもつため、減速歯車などと組み合わせて、自動車などの自動変速機として広く用いられている。自動車用に用いた場合、原動機に過大な負荷がかからず運転はきわめて容易になるが、エンジンブレーキの効果は少ない。

[池尾 茂]


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