日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒部ダム」の意味・わかりやすい解説
黒部ダム
くろべだむ
富山県南東部、北アルプスの立山(たてやま)と赤沢岳間の黒部峡谷地点にあるダム。立山町に属する。1956年(昭和31)関西電力が着工以来、6年10か月で513億円と延べ990万人の労務者を投じて、1963年に黒部川第四発電所とともに完成した。ダムの高さ186メートル、堤長492メートル、体積157.5万立方メートルのアーチ式ドームダムである。黒部湖の広さは甲子園球場の237倍で、貯水量2億トン。建設中は黒部川第四発電所のダムというので黒四ダムとよばれていた。ダム建設の仮設工事は立山越えのルートで行われたが、本工事の大量資材輸送は赤沢岳直下を貫いた関電トンネルで行われた。このトンネル工事は大湧水(ゆうすい)のため難工事であった。現在10キロメートル下流の地下発電所で、落差576メートル、最大水量毎秒72トン、四つの発電機で33万5000キロワットの発電を行っている。
ダム完成後、長野県の大町方面からの資材輸送ルートは観光ルートとなり、その後開通した立山黒部アルペンルートとともに観光地となった。ダムサイトの左岸に黒部湖遊覧船の船着き場がある。黒部湖上流正面に赤牛岳(2864メートル)がそびえ、左岸山頂は立山で、右岸山頂は赤沢岳(2678メートル)、スバリ岳、針ノ木岳(2821メートル)である。ダム下流左岸は黒部別山(べっさん)(2353メートル)とその断崖(だんがい)である。
[深井三郎]
『深井三郎著『黒部立山アルペンルート』(1974・古今書院)』▽『『黒部川第四発電所建設史』(1962・関西電力)』