ドハース=ファンアルフェン効果(読み)ドハースファンアルフェンこうか(その他表記)de Haas-van Alphen effect

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ド・ハース=ファン・アルフェン効果 (ドハースファンアルフェンこうか)
de Haas-van Alphen effect

導体磁化の強さが磁場強度の逆数変数として一定周期をもつように変化する現象。1930年にド・ハースW.J.de Haasとファン・アルフェンP.M.van Alphenが,液体水素を排気して得た14Kの温度において,ビスマス磁化率が磁場の大きさにつれて振動的に変化することを見いだしたのが最初である。この現象は金属や縮退半導体の伝導電子が,磁場で量子化されて周回軌道を回る準位(ランダウ準位)を作るとき,磁場強度の変化に応じて,ランダウ準位が次々にフェルミ準位を切っていくことに対応して生ずる磁化の変動として理解されている。ある金属について,いろいろの方向に磁場を加えてド・ハース=ファン・アルフェン効果の周期の方向依存性を測定すると,フェルミ面断面極値の大きさと異方性がわかる。実際の測定は,数Kくらいの低温で,磁場強度としては104エルステッド程度が用いられ,Zn,Mg,Be,Al,Ga,Cd,In,Sn,Sbなど多くの多価金属で測定されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ド・ハース=ファン・アルフェン効果
ド・ハース=ファン・アルフェンこうか
de Haas-van Alphen effect

金属や半金属中の電子は磁場が加えられると,その軌道運動は磁場に垂直な面内でのサイクロトロン運動となる。回転角速度を ω ,電子が散乱される緩和時間を τ とすると,ωτ≫1 のとき運動は量子化されて,電子のエネルギーはランダウ準位と呼ばれる「とびとび」の値をとる。このとき磁場 H を変化させるとランダウ準位がフェルミエネルギーを通過するたびに電子系の自由エネルギーは 1/H関数として振動する。このために磁化が 1/H の関数として周期的に振動する。この現象をド・ハース=ファン・アルフェン効果という。この周期の測定により,フェルミ面を磁場に垂直な平面で切った断面の極値が求められるので,金属のフェルミ面決定の測定法として広く利用されている。

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法則の辞典 の解説

ド=ハース‐ファンアルフェン効果【de Haas-van Alphen effect】

金属の磁化率が外部磁場 H の存在下,磁場強度の逆数(1/H)の関数として周期的に変化する現象.磁場のもとでの金属中の電子軌道は量子化されている(ランダウ準位*)が,磁場が大きくなるとランダウ準位の間隔が広がって,フェルミ面を次々に通過することで起きる.

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