ネオ・エクスプレッショニズム(読み)ねおえくすぷれっしょにずむ(英語表記)neo expressionism

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ネオ・エクスプレッショニズム
ねおえくすぷれっしょにずむ
neo expressionism

1970年代末から1980年代になかばにかけて、アメリカ、イタリア、ドイツなどで流行した具象絵画のスタイルの総称で、1982年ごろから広く使われるようになった。イタリアでの名称はトランスアバングァルディアで、批評家アキッレ・ボニート・オリーバAchille Bonito Oliva(1939― )により提唱された。1970年代の終わりにアメリカ、ニューヨークのイースト・ビレッジで活動した、グラフィティ・アートのジャン・ミッシェル・バスキア、キース・ヘリングの絵画を合わせてニュー・ペインティングともいう。
 ミニマリズムやコンセプチュアル・アートに反発した当時30代の作家たちが、ドイツ表現主義や抽象表現主義の特徴である歪んだ形態や派手な筆跡などをよみがえらせた具象絵画や彫刻を指す。
 主要な画家は、ジュリアン・シュナーベル、デビッド・サーレDavid Salle(1952― )、エリック・フィッシェルEric Fischel(1948― )、フランチェスコ・クレメンテ、サンドロ・キアSandro Chia(1946― )、エンツォ・クッキEnzo Cucchi(1949― )、ゲオルク・バゼリッツGeorg Baselitz(1938― )、アンセルム・キーファー、ヨルグ・インメンドルフJorg Immendorf(1945―2007)、アーノルト・ペンクArnold Penck(1939―2017)、マーカス・リューペルツMarkus Lupertz(1941― )などである。
 彼らはしばしば民族の歴史や神話を呼び起こすような「アレゴリー的」テーマを扱い、また、ときには大衆文化のメディアや過去の絵画から借用したイメージを組み合わせて、漠然とした物語性を示唆した。それは、モダニズムの進歩的歴史観や独創性の強調に反発し、人間的感情を絵画に再びもたらすものとして、ポスト・モダン芸術の到来を告げた。その感情的なスタイルは、一部の評論家やニューヨークのコレクターに歓迎されたが、美術批評雑誌『オクトーバー』に執筆していたハル・フォスターHal Foster(1955― )たちからは、歴史の独自性を無化し、観客の批判意識を鈍化させる反動的な芸術として非難された。[松井みどり]
『Hal FosterAgainst Pluralism (in Recodings; Art, Spectacle, Cultural Politics, 1985, Bay Press, Seattle) ▽Robert AtkinsArtspeak; A Guide to Contemporary Ideas, Movements and Buzzwords (1990, Abbeville Press, New York)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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