改訂新版 世界大百科事典 「ハサミアジサシ」の意味・わかりやすい解説
ハサミアジサシ (挟鰺刺)
skimmer
チドリ目ハサミアジサシ科Rynchopidaeの鳥の総称。世界に3種が知られている。細長い体と細長い翼をもち,外観はアジサシ類(カモメ科)によく似ている。脚は短い。翼の上面や背は黒っぽく,下面は白い。この科の鳥の著しい特徴はくちばしの形態で,上くちばしに対して,下くちばしがずっと長い。この長い下くちばしを水面にさし入れ,そのままの姿勢で水面上を低く飛びくちばしで水を切るようにする。小魚やエビがこの下くちばしにかかるとくわえてとらえる。日中は休んでいて,夕方や明るい夜に活発に飛び回る。これは餌である魚やエビが水面に上がってくるからである。一般に川や湖沼で生活しているが,海岸で見られることもある。繁殖は河岸や海岸で集団をつくって行う。巣は地面のへこみ程度の簡単なもので,1腹2~4個の卵を産む。雛は地面の色とよく似ている。孵化(ふか)するとすぐに巣を離れて歩き回り,また泳ぐこともよくする。
クロハサミアジサシRynchops nigra(英名black skimmer)は上面は黒色で下面は白色。くちばしは赤色で先端のほうは黒っぽい。マサチューセッツからブエノス・アイレスまでの大西洋岸と,エクアドルからチリまでの南北両アメリカに広く分布している。アジサシモドキR.flavirostris(英名African skimmer)は全長36cm。翼開張107cm。頭,くび,翼上面は褐色をしていて,下面は白色。くちばしは上くちばしはオレンジ色で下くちばしは黄色をしている。脚は橙赤色。尾は灰色。アフリカ大陸の中央部に広く分布している。シロエリハサミアジサシR.albicollis(英名Indian skimmer)は全長41cm。頭と背,翼上面などは暗褐色をしている。下面に続いて後頸(こうけい)も白色をしており,頭から背に暗褐色がつながっていない。くちばしはオレンジ色で先のほうは黄色。インドからミャンマーなど東南アジアの川や湖沼にすんでいる。
執筆者:柳沢 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報