湾口や入り江の口を閉塞(へいそく)するようにして、沖合いに形成された砂礫(されき)の堆積(たいせき)地形。砂州は通常、海面上にみられるものをいうが、海面下にある場合、とくに海底砂州とよんで区別している。砂嘴(さし)は、陸から沖に突き出して形成される細長い砂浜をいい、これが成長して対岸の陸地や島と連結するに至ると砂州とよばれる。
砂州は、出現する位置によって、海底砂州、湾口砂州、湾央砂州、湾奥(頭)砂州などとよばれる。砂州のうち、海底砂州は平滑な砂浜海岸の沖の砕波帯付近に1~3列形成され、そのうち、通常の波でできるものは、汀線(ていせん)付近の沿岸底州で、沿岸トラフに隣接して形成される。かなり沖合いにみられる海底砂州の場合は、異常な高波によって形成されたと考えられる。このような海底砂州がしだいに成長して陸地に並行し、細長い州が海面上に現れると沿岸州(沿岸砂州)とよばれる。この地形をバリアbarrierともよぶ。多くの場合、沿岸州は沿岸流により砂嘴が形成され、それがしだいに発達した場合が多いようである。沿岸州の内側には潟湖(せきこ)がみられ、外海とは一つ以上の潮流口によって連絡していることが多い。
砂州の高さは、通常、海面上2~3メートル以下であるので、暴浪が越えることもあり、潮流口の位置が変化する場合も多い。しかし、砂州の上に一段高い浜堤や砂丘が発達し、植生によって固定されるようになると、より安定した堆積地形となる。また、海面の低下や地盤の隆起によって離水したものは、海面上10メートルを超すものもある。イギリス南岸のチェシルビーチは、礫(れき)質のものであるがその事例にあたる。鳥取県の山陰海岸の弓ヶ浜や京都府宮津湾の天橋立(あまのはしだて)は、海抜高度はわずかで、離水量の小さい砂州である。
[豊島吉則]
岬や湾の出口などの海岸の突出部から,細長く突き出るように延びている砂礫(されき)の細長い高まりを砂嘴(さし)spitといい,砂嘴がさらにのびて湾の対岸や陸地に接するようになった地形を砂州という。海に流入する河川が運搬してきた砂礫や海食崖から生産された砂礫の一部は,沿岸流や沿汀流によって海岸線に沿って運搬され,湾口や陸側にへこんだ海岸に達すると湾口をふさぐような形で堆積して細長く発達する。一般に海側が粗粒な砂礫からなり海浜勾配は急で,内陸側がより細粒な砂礫からなって勾配は緩やかである。砂州の上の砂丘が発達することもある。日本海側の宮津湾天橋立,米子の弓ヶ浜,北海道オホーツク海岸のサロマ湖や能取(のとろ)湖などが典型例である。海岸線に平行して沖合に発達する砂州はとくにバリアbarrier(沿岸州)と呼ばれ,アメリカ合衆国大西洋岸では大規模なバリアが発達する。砂州によって出口をふさがれた湾は潟湖(ラグーン)または海跡湖と呼ばれる。
執筆者:米倉 伸之
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…その先端が岸の方向に曲がっていることが多く,また先端が何列かに分かれた分岐砂嘴もある。砂嘴がさらに延びて対岸に接している,あるいは接しそうになっているものを砂州とよび,砂州の位置によって,湾口砂州,湾央砂州,湾頭砂州などとよばれる。宮津湾の天橋立や米子の弓ヶ浜などが湾口砂州の好例である。…
※「砂州」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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