改訂新版 世界大百科事典 「ハシビロガモ」の意味・わかりやすい解説
ハシビロガモ (嘴広鴨)
shoveler
Anas clypeata
カモ目カモ科の鳥。ユーラシア大陸と北アメリカの中緯度地方で繁殖する。冬期には南方に渡る。日本には冬鳥として渡来し,湖沼,河川,波静かな海岸などにすむが,淡水を好む。北海道では繁殖しているものもある。全長約51cm。名まえのようにくちばしが他のカモ類よりも扁平で平たい。くちばしの縁の櫛歯(くしば)状の付属物は他の種よりも発達しており,くちばしの先のほうからとり入れた水を櫛を通して流し出し,中に残った微生物を食べる。この特殊な採餌のため,くちばしを水面につけたままぐるぐると同じ場所を泳ぎ回っていることが多い。また,草の種子や穀類も食べる。巣は水辺近くの草原やヨシの中につくり,1腹8~12個の卵を産む。約24日の抱卵で孵化(ふか)し,約2ヵ月で親と同じ大きさにまで成長する。
執筆者:柳沢 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報