登山用具。ピトンpiton(フランス語)ともいう。岩壁や氷壁の登攀の際,岩や氷に打ち込んで,確保の支点や手がかりなどに用いる鋼鉄製の釘。単にハーケンと呼んだときは,ロックハーケンのことで,氷雪用はアイスハーケンという。用途に応じて形状や長さはいろいろで,初期のものはただ鉄釘を曲げただけであったが,先端に穴のあいた板状の形が考案され,これをカラビナと併用する形となってから進歩した。岩登りは,ハーケン技術により飛躍的な進歩をとげたが,他方,ハーケンの破損や脱落による遭難も多く,その強度やハーケン技術の問題,さらにハーケンの乱用は山を傷つけるという考え方もあり,いろいろな問題が生じている。
執筆者:徳久 球雄
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…これによって,力は直接的に確保者に伝わることもなく,支点のつくる角度によって生じる摩擦やザイルそのものの弾力性が墜落時の衝撃力を弱めることになる。確保支点は,小さな岩の割れ目(クラック)にピトンpiton(頭部に輪をもった鉄釘,ハーケンともいう)を打ち込んでカラビナを掛けるのが一般的で,この2種の用具に打込み用のハンマーを加えて岩登り用の三つ道具と呼ぶ。戦後発明された埋込みボルトは,クラックのない垂直の岩壁や岩びさし(オーバーハング)にも確保支点をつくることができるため,2本のザイルでつり上げ確保されたトップが,あぶみを利用して困難なルートを次々に開拓することができたが,このように,用具を登攀の手段として積極的に使う方法を人工登攀(アーティフィシャルクライミングartificial climbing)という。…
※「ハーケン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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