改訂新版 世界大百科事典 「バルドル」の意味・わかりやすい解説
バルドル
Baldr
北欧神話の神。オーディンとフリッグの子。ナンナを妻としブレイザブリークに住む。スノッリ・ストゥルルソンによると最もすぐれた神で,容貌が美しくて賢く,雄弁でやさしい神とされる。あるときバルドルは生命にかかわる不吉な夢を見た。母フリッグは,万物にバルドルには指一本触れないことを誓わせる。ところがロキが,この誓いに加わらなかったやどり木をバルドルの弟の盲目のホズに渡す。ホズがロキに言われた通りそれでバルドルを射ると,たちまちそれは矢に変わり彼を貫いて倒す。神々は悲嘆し,神々や巨人族の列席のもとでバルドルの葬儀が行われる。フリッグは冥府からバルドルを取り戻そうとヘルモーズを派遣するが,この試みもロキの奸計のため成功しない。ホズは異母弟バーリに仇を討たれる。世界の終末後ふたたび新しい緑の世界が誕生するとき,バルドルはホズとともにそこへ戻るとされている。バルドルの死をめぐって比較神話による種々の説がある。
執筆者:谷口 幸男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報