ヒラコテリウム
Hyracotherium
奇蹄目ウマ科の絶滅哺乳類。奇蹄類の先祖型で,ウマの最も古いものにあたるとされ,体長45cm。小犬ぐらいの大きさの小型の有蹄類である。ヨーロッパおよび北アメリカの始新世初期の地層から化石が発見されている。1840年に,ロンドン粘土層から発見されたこの化石に,R.オーエンは,ハイラックスに似たけものたち(テリウム)という意味のこの名をつけた。その後,アメリカの古生物学者のO.C.マーシュは,現生のウマとヒラコテリウムの中間型の化石があることを知り,はじまりのウマという意味のエオヒップスEohippusを用いたが,命名規約上ヒラコテリウムに先取権がある。ヒラコテリウムは,古型の有蹄類で主として暁新世に繁栄した髁節(かせつ)類と歯や骨格の構造に共通性がある。肢骨は長く,前趾は4指であるが後趾は3指,趾行性で速く走るのに適応していて,すでに特殊化していた有蹄類といえる。
→ウマ
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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「ヒラコテリウム」の意味・わかりやすい解説
ヒラコテリウム
エオヒップスとも。最も古くて原始的なウマの先祖。始新世初期の北米,ヨーロッパに生息。肩高30cmほど。軽快で,駆けるのに適した四肢,湾曲した背中,前後に長くて低い頭骨などを特徴とする。四肢は細く足の部分は長く,指は前肢に4本,後肢に3本あった。
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世界大百科事典(旧版)内のヒラコテリウムの言及
【ウマ(馬)】より
…【今泉 吉典】【正田 陽一】
【ウマの進化】
ウマを含む奇蹄類は,暁新世の髁節(かせつ)目(古型の有蹄類)のフェナコドンの仲間を先祖型とする。次の始新世前期には,それらの仲間からウマ科が出現し,北アメリカにいた小イヌくらいの大きさの[ヒラコテリウム]がその代表とされる(図)(イラスト)。ヒラコテリウムから現在のウマに至る進化の過程は,北アメリカで発見された多種多様の化石ウマから明らかにされてきたが,以前に考えられていたように単純なものではない。…
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