ビッグ・ビジネス(読み)びっぐびじねす(英語表記)big business

翻訳|big business

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビッグ・ビジネス」の意味・わかりやすい解説

ビッグ・ビジネス
びっぐびじねす
big business

大量生産組織と大量販売のための自己販売組織という二つの職能部門を統合した巨大企業のこと。戦略的な意思決定に携わる少数のトップ管理者と日常的な業務に携わる多数の中級下級の管理者など、階層的に組織された専門経営者が労務財務・経営などの管理にあたり、生産・販売・マーケティング・研究開発の諸機能の統合とシステム化が図られている。このようなビッグ・ビジネスは、欧米では1880年代に姿を現し、第二次世界大戦後には主要産業を完全に支配し、現代ではその多国籍企業化によって世界経済の動向を左右するまでに成長している。

 1880年以後、鉄鋼に始まり化学電機石油・自動車などにおける技術革新的開発の急展開、技術集約的新鋭機械やフォード・システムなどによる大量生産方式の発展、金融・証券市場をバックとする企業集中の進展などを背景に、重化学工業など基幹部門における装置産業化(=コンビナートの進展)、組立て産業を中心とするオートメーションの進展(自動車産業に始まり、一般消費財、耐久消費財、生産財部門にまで及ぶ)がみられた。こうした事態なかで、一方では、テーラーの科学的管理法に代表される労働力管理から企業内における労働者管理、さらには労働組合との間の労使関係の管理の必要が生まれ、他方では大量生産と大量販売のためのマーケティング戦略が原料購入―生産―販売の統合化戦略として展開され、その総合戦略として財務管理と経営管理の機能が必然化するのである。1950年代後半から始まるアメリカ企業の多国籍化、70年代初頭にかけてのヨーロッパ企業の、70年代末からの日本企業の多国籍企業化(巨大企業による海外直接投資の拡大)は、ビッグ・ビジネスの新たな形態であり、その国際集中管理は世界市場を一つの国民市場に限りなく近づけ、「国際化」の時代を実現しつつあるが、同時に、発展途上国側からする国家主権保持の主張にも直面し、新たな課題(多国籍企業をどう規制するかという)を負うこととなった。

[殿村晋一]

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百科事典マイペディア 「ビッグ・ビジネス」の意味・わかりやすい解説

ビッグ・ビジネス

巨大企業と訳す。売上高,総資産など企業規模が国際的水準に達し,国内外で高い市場占拠率をもつような会社。20世紀初頭,米国などで急激に台頭した大会社をさして使われ始めた言葉で,米国の雑誌《フォーチュン》の〈世界の大企業調査〉に出てくる大企業がその代表例。関連産業部門へ多角化し,また資本系列などにより巨大企業が縦横に集団化しているのが通例で,資本市場,金融市場や,国の経済政策にも影響を及ぼしている場合も多い。GMUSスチールICIなど,日本では新日本製鐵日立製作所トヨタ自動車三菱重工業などがあげられる。→ワールド・エンタープライズ

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世界大百科事典(旧版)内のビッグ・ビジネスの言及

【アメリカ合衆国】より

…そこで,紙巻タバコ,ミシン,缶詰,農機具などの新興産業分野に属する各企業は,その内部に大規模な全国的販売組織を設け,また生産性向上と原料確保のために組織拡大をはかった。このように企業の諸機能を単一企業体に統合し,縦の一貫経営による規模の利益を追求する過程から,ほかならぬアメリカの大企業(ビッグ・ビジネス)が登場することになった。また,企業間の競争激化に伴い,企業合同,合併,持株会社などの方法によって産業集中をはかり,大企業化する場合も多くみられた。…

【大企業】より

…産業構造の転換とともに,大企業部門においても企業間格差が拡大し,没落する大企業が出はじめている。 なお大企業のなかでも,とくに資本金,売上高,従業員数,付加価値額などの規模が大きく,生産技術,マーケティングなどの面で優れた経営資源を有し,当該産業において排他的な市場支配力をもつものを,ビッグ・ビジネスbig business(巨大企業)という。ビッグ・ビジネスは19世紀後半にアメリカで最初に生まれ,発展してきたが,その過程で少数者の手に経済的・社会的権力が集中して種々の弊害も発生したため,シャーマン法(1890制定,アメリカ)を嚆矢(こうし)として,各国で独占禁止に関する法律が制定された。…

※「ビッグ・ビジネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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