広義の金融市場は,貸借される資金が長期か短期かによって,長期金融市場と短期金融市場に分けられる。資本市場は,このうち長期金融市場をさし,狭義の金融市場あるいは貨幣市場ともよばれる短期金融市場money marketとの対立用語となっている。本来,資本市場という言葉は,企業が設備投資に必要な長期的な資金,すなわち資本を,株式・社債の発行によって調達する過程から生まれたものである。その後,国債その他の公共債の発行額が増大したので,資本市場の対象は,これら公社債と株式の発行を引受け・消化,ならびにその売買の総過程をさすことになり,証券市場と同義語として用いられている。それは対象証券からは株式市場と公社債市場に分かれ,取引の内容からは両市場について発行市場と流通市場を含む。
ところで,日本の企業は長期資金の調達にあたって株式・社債の発行のほか金融機関からの長期借入金に依存しており,しかも借入金がこれまで主要な資金調達手段であった。また1965年度に特例国債が発行され,66年度からは建設国債が毎年発行されるようになり本格的な国債発行の時代に入ったが,その大半は金融機関によって引き受けられていたため,資本市場,とくに公社債市場は,金融機関の整備に比べて発達が著しく遅れたままだった。しかし,75年度以降赤字国債を含め国債発行額が急増し,売買高も飛躍的に増大した。こうして国債を中心に公社債市場は拡大・発達し,経済全体に占める資本市場の地位も高まってきた。
なお,資本市場に対する短期金融市場といえば,1970年代前半くらいまではコール市場や手形売買市場など,金融機関の支払準備の過不足を調整するインターバンク市場,いわゆる短資市場を意味した。しかし70年代の後半くらいから企業・機関投資家・非居住者など非金融機関も参入する現先市場やCD市場(〈CD〉の項参照)が発達し,短期金融市場は拡大してきた。英語でいうmoney and capital marketsとは,こうした長短金融市場の全体をさし,文字どおり金融・資本市場ともよばれる。この両市場は,金利の裁定取引を通じて相互に密接に関連しており,いまや両市場を合わせて総合的にとらえることが重要となった。とくに75年ころから国債の大量発行,さらに金融の国際化の進展にともない,長短金融市場はともに急速に発達・拡大し,長短金利の自由化の動きが進んできた。
執筆者:石田 定夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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