改訂新版 世界大百科事典 「ビネ」の意味・わかりやすい解説
ビネ
Alfred Binet
生没年:1857-1911
知能テストの創始者として知られているフランスの心理学者。パリ大学で法律学,生物学,医学等を専攻した後,サルペトリエール精神病院で催眠,ヒステリーの研究に従事した。その後,パリ大学生理心理学実験室で,推理,想像,被暗示性などに関する実験心理学的研究に着手し,個人差の解明に貢献する。また彼自身の2人の娘の知的類型をさまざまな実験によって浮彫にするなど,差異心理学の科学的方法への道を切り開いた。これらの研究の中で,無心像思考の存在を強調したが,これは伝統的な思考心理学研究に新風を吹き込むことになった。やがてこれらの個人差研究の成果や方法を教育へ応用することに関心が向かう。この研究分野を〈実験教育学〉と呼び,小学校内に設けられた実験室で学童の素質研究に没頭する。こうして1905年,シモンThéodore Simon(1873-1961)とともに知恵遅れの子どもを鑑別する手段として,知能テストを作成した。また心理学者と教育者との共同チームを編成し,測定に基づく〈新教育〉の普及にも大きな努力を傾けた。主著は《知能の実験的研究》(1903)ほか。
→知能テスト
執筆者:滝沢 武久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報