ピストル射撃競技(読み)ぴすとるしゃげききょうぎ(英語表記)pistol shooting

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピストル射撃競技」の意味・わかりやすい解説

ピストル射撃競技
ぴすとるしゃげききょうぎ
pistol shooting

ピストル拳銃(けんじゅう))を使用し、射撃場rangeにおいて標的をねらい、その得点によって勝敗を競う競技

競技の歴史

火薬と銃砲の発明以来、ヨーロッパを中心として競技化が進められ、16世紀にはヨーロッパ各国で射撃クラブによる競技会が開催された。第1回世界射撃選手権大会は、1897年にフランスのリヨンで開催された。オリンピック大会では第1回アテネ大会から実施されている。日本は、1952年(昭和27)ヘルシンキ大会から参加し、1984年ロサンゼルス大会で蒲池猛夫(かまちたけお)(1936―2014)がラピッドファイアピストル競技で金メダルを獲得した。

日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

競技の概要

競技内容を大別すると、(1)固定された一つの標的装置に対して、制限時間内に決められた数の弾を発射し合計点を争う精密射撃と、(2)固定されているが数秒間だけ射撃できる一つまたは五つの標的装置に対して、弾を発射し合計点を争う速射射撃、(3)精密射撃と速射射撃を組み合わせた種目がある。射撃姿勢は、いずれも立射のみである。

 競技は、予選本選から構成されており、本選の結果に基づき順位が決定される。なお、オリンピックで実施される5種目(25メートルラピッドファイアピストル男子、25メートルピストル女子、10メートルエアピストル男子・女子・男女ミックスチーム。男女ミックスチームは2020年の東京大会〈2021年開催〉から追加)では、さらにファイナル決勝)が行われる。このうち、25メートルラピッドファイアピストル男子と10メートルエアピストル男女ミックスチーム以外の3種目のファイナルは本選の上位8名により実施される。10メートルエアピストル男子および女子のファイナルでは、24発を発射する。その得点は小数点第1位まで採点され(最高得点は10.9点)、ファイナルでの合計点による勝ち抜き方式により最終順位が決定される。25メートルピストル女子では、速射50発による10.2点以上のヒット数を競う勝ち抜き方式によりファイナルが実施される。また、25メートルラピッドファイアピストル男子では本選の上位6名による4秒射40発の9.7点以上のヒット数を競う勝ち抜き方式、10メートルエアピストル男女ミックスチームでは本選の上位5チーム10名による各チーム48発ずつの勝ち抜き方式により、ファイナルが実施される。

[日本ライフル射撃協会 2022年2月18日]

競技の変遷

第1回オリンピック・アテネ大会当時のピストル射撃競技は、口径の大きな軍用ピストルを使用した競技種目であったが、20世紀に入ると小口径ピストル(22口径=22/100インチ=5.6ミリメートル)を使用する種目に変わった。さらにソウル大会(1988)からは空気拳銃(エアピストル)種目が追加され、多くの国々でもっとも手軽に行うことができる射撃として普及している。標的も、ライフル射撃と同様にバルセロナ大会(1992)以降は、紙製標的から、弾の当たった位置をセンサーで感知し得点表示を行う電子標的装置に変わってきている。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

ピストル射撃競技の種目

10メートルエアピストル競技

射撃距離は10メートルで、エアピストルを使用する。固定された一つの標的に対して男子・女子ともに60発を発射してその合計点を争う競技であり、男女ともにオリンピック種目である。2020年の東京大会からは、男女1名ずつで組み本選で40発を発射する男女ミックスチーム種目が追加された。

[日本ライフル射撃協会 2022年2月18日]

50メートルピストル競技

射撃距離は50メートルで、22口径の拳銃を使用する。男子の競技種目。固定された一つの標的に対して60発を発射してその合計点を争う競技であり、世界選手権種目である。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

25メートルラピッドファイアピストル競技

射撃距離は25メートルで、22口径の連発式拳銃を使用する。男子の競技種目。固定されているが数秒間(4秒、6秒、8秒)だけ射撃できる真横に並んでいる五つの標的に対して1発ずつ5発連続して発射し、計60発の合計点を争う競技となっており、オリンピック種目である。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

25メートルピストル競技

射撃距離は25メートルで、22口径の連発式拳銃を使用する。女子の競技種目。固定された一つの標的に対して5分間で5発撃つことを6回繰り返す精密射撃と、固定されているが3秒間現れ7秒間隠れる標的に対して5発射撃することを6回繰り返す速射射撃から構成されており、計60発の合計点を争う競技となっている。オリンピック種目である。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

25メートルセンターファイアピストル競技

射撃距離は25メートルで、7.62ミリメートル以上9.65ミリメートル以下の口径の拳銃を使用する。男子の競技種目。競技方法は女子の25メートルピストル競技と同じである。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

25メートルスタンダードピストル競技

射撃距離は25メートルで、22口径の連発式拳銃を使用する。男子の競技種目。固定された一つの標的に対して3種類の制限時間(150秒、20秒、10秒)内に5発射撃することを各4回繰り返す競技であり、精密射撃と、速射射撃の両方の要素をもった競技となっている。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]

10メートルビームピストル競技

射撃距離は10メートルで、レーザー光線を利用したピストルを使用する。ビームピストルは銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)の制約を受けないことから、年齢性別を問わず広く使用することができる。競技は国内だけの種目であり、男女ともに競技が実施されている。

[日本ライフル射撃協会 2018年11月19日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピストル射撃競技」の意味・わかりやすい解説

ピストル射撃競技
ピストルしゃげききょうぎ
pistol shooting

ライフル射撃競技のうち,銃身の短い拳銃 (ピストル) を片手で使い標的をねらう種目の総称。小口径のフリーピストル,ラピッドファイアピストル,スタンダードピストル,大口径のセンターファイアピストル,空気銃を用いるエアピストルなどがある。通常は射距離 10~50m,40~60発で行なわれる。ピストル種目は日本人選手が得意とし,オリンピック競技大会では 1984年ロサンゼルス大会のラピッドファイアピストルで蒲池猛夫が優勝したほか,1960年ローマ大会,1964年東京大会のフリーピストルで吉川貴久が連続3位に入るなど,国際大会で多くの入賞者を出している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のピストル射撃競技の言及

【近代五種競技】より

…馬術,フェンシング,水泳,射撃,ランニングという性質の異なった5種の競技を1日で行い,合計得点で順位を決めるスポーツ。
[歴史]
 古代オリンピック(前776‐後393)の競技種目の中に五種競技があり,第18回大会(前708)から実施された。それらは競走(短距離),跳躍(幅跳び),円盤投げ,槍投げ,レスリングで,全部を1日で終了することになっていた。これは全競技のうちもっとも華麗であり,また重視されていた種目であった。…

【射撃競技】より

…36年には大日本射撃協会が設立されて,国際射撃連合に加盟し,国際的スポーツ競技として発展した。その後53年に大日本射撃協会が改組され,クレー射撃競技,ランニングターゲット競技を統轄する社団法人日本クレー射撃協会,ライフル射撃競技,ピストル射撃競技を統轄する社団法人日本ライフル射撃協会に分かれ,今日に至っている。 オリンピックには第1回大会から正式種目となっており(クレー射撃は第2回から),第2回大会のクレー射撃競技では,標的として実際に鳩を使っていた。…

※「ピストル射撃競技」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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