ピュテアス(英語表記)Pytheas

改訂新版 世界大百科事典 「ピュテアス」の意味・わかりやすい解説

ピュテアス
Pytheas

前4世紀後半ころに活躍したマッサリア(現,マルセイユ)の探検家。探検記《大洋について》は残存せず,ポリュビオス,ストラボンらによりその事績が知られるだけである。フランス西海岸からグレート・ブリテン島を一周,この島の大きさや住民,アイルランドの存在について伝え,さらにその北方トゥーレに至り,この地が北極圏下に位置するとしている。この地がノルウェーアイスランドのいずれかを決定することは困難であるが,海流の関係等から前者であろうとされている。彼はまだゲルマニアの海岸をバシリアという大島まで航行したとしているが,これはドイツ北方の北海にあるヘルゴラント島付近とされている。しかしこの島にコハクを産するとあることから,バルト海にまで達したという説もある。彼の伝えた白夜や海の凍結現象など当時の地中海世界の人々には理解を超えたものであったため,多くの人から大噓つきとされたが,マッサリアの緯度を正しく測定するなど,単なる冒険者ではなく,優れた観測者,観察者であったことが知られる。彼の航海目的は不明であるが,おそらく当時カルタゴに独占されていたスズの通商路とコハクを求めての探検航海であったと思われる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ピュテアス」の意味・わかりやすい解説

ピュテアス
Pytheas

前 300年頃在世したマッシリア (現マルセイユ) 生れのギリシアの地理・天文学者。主著『大洋諸国』 Peri tou Ōkeanouは散逸したが,カディスを経てイギリスを探検,北欧諸国を訪れ,バルト海のウィスラ河口にいたり,さらに極北の地トゥレーに言及したことが知られる。トゥレーは今日のアイスランドまたはノルウェーであろう。イギリス北端からマッシリアまでの距離をほぼ正確に計算し,北極星が北極からずれていることや潮汐に月が影響することなどを発見した。

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世界大百科事典(旧版)内のピュテアスの言及

【赤潮】より

…湖沼の水の華を構成する代表的な属は,ミクロシスティス,アナベナ,セネデスムス,アンキストロデスムスなどである。
[記録]
 赤潮発生に関する記録で最も古いのは,ギリシアのピュテアスPytheasによるアイスランド近海での報告(前325)であろうと言われる。旧約聖書の《出エジプト記》にはナイル川の水の赤変で魚が大量に死んだことが書かれている。…

【赤潮】より

…湖沼の水の華を構成する代表的な属は,ミクロシスティス,アナベナ,セネデスムス,アンキストロデスムスなどである。
[記録]
 赤潮発生に関する記録で最も古いのは,ギリシアのピュテアスPytheasによるアイスランド近海での報告(前325)であろうと言われる。旧約聖書の《出エジプト記》にはナイル川の水の赤変で魚が大量に死んだことが書かれている。…

【アルビオン】より

…最古の記録は,前500年ころのヒミルコ航海記にあり,ヒベルニアすなわちアイルランド島と並んでアルビオン島の記載がある。アリストテレス作といわれている《宇宙論》でも両島が並記されているが,前330年ころのピュテアスPytheasの航海記ではプレタンニカ(ブリタニア)島と表現され,以後はこの名称の方が一般化していく。語源に関しては,通常ドーバー海峡の白亜の断崖と関連づけて,ラテン語のアルブスalbus(白)に由来すると解釈されるが,高地を意味するケルト語のalpを起源とする説や,さらにゴール語起源説もある。…

【ゲルマン人】より

…ゲルマンという呼称の由来は不詳であるが,この語が文献上最初にあらわれるのは,前80年ころ,ギリシアの歴史記述家ポセイドニオスが,前2世紀末におけるゲルマンの小部族,キンブリ族Cimbriとテウトニ族Teutoniのガリアへの侵寇を叙述した記録においてである。もっともそれ以前,前4世紀の末に,マッシリア(マルセイユ)にいたギリシア人航海者ピュテアスが,ノルウェーやユトランド半島に出向いた際の記録の一部が残っているが,そこではまだそこに住んでいた民族について,ゲルマンという呼称は使われていない。 考古学的出土品を根拠に,新石器時代までさかのぼって,ゲルマン人の居住分布が推定されるが,それによると,ゲルマン人の原住地は,南スウェーデン,デンマーク,シュレスウィヒ・ホルシュタイン,並びにウェーザー,オーデル両川にはさまれた北ドイツを含む一帯の地域であったというのが,現在の定説である。…

【北極】より

…【八木沢 三夫】
【探検史】
 古代ギリシアでは極北の地をトゥーレThoulē(ラテン語ではThule,またとくにUltima Thule)と呼んで世界の北端と信じ,ヒッパルコスによればトゥーレ周辺は人間の住み得ぬ土地とされていた。しかし前320年ころギリシア人ピュテアスがマッサリア(現,マルセイユ)を出発し,ブリタニア(グレート・ブリテン島)を発見し,北方にあるこのトゥーレの探査を試みた。トゥーレは現在グリーンランド(バフィン湾北)の地名チューレとして残っているが,ピュテアスはおそらくアイスランドを訪れ,海氷縁に達したのではないかといわれる。…

※「ピュテアス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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