クワ萎縮(いしゅく)病、イネ黄萎(おうい)病、キリてんぐ巣病など、萎黄叢生(いおうそうせい)症状を示す植物の病気の病原。これらの病気は従来ウイルスが病原と考えられていたが、1967年(昭和42)土居養二(1927―2006)らによって、世界で初めてマイコプラズマmycoplasmaに類似した微生物が病原であることが発見された。この病原微生物は、人工培養ができないため諸性質が不明で長い間分類学的位置が決定されず、マイコプラズマ様微生物とよばれていたが、マイコプラズマとは異なった性質を有することが明らかにされ、1994年以降、ファイトプラズマとよぶことになった。電子顕微鏡下で観察される形態は多形性で60~1200ナノメートルの大きさで、細胞壁がなく、原形質膜(限界膜ともいう)で包まれていて、中心にDNA(デオキシリボ核酸)がある。植物体内では、篩管(しかん)内、篩部柔細胞や伴細胞に局在する。感染した植物は、萎黄、叢生、萎縮、花の葉化など特徴のある全身病徴を示す。ヨコバイ類によって媒介され、わが国では20種以上の病害が報告されている。とくにイネ黄萎病、クワ萎縮病、キリてんぐ巣病など全国的に発生し被害が大きい。なお、この微生物はテトラサイクリンに感受性がある。
[梶原敏宏]
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