フィギュアスケートの採点法(読み)ふぃぎゅあすけーとのさいてんほう

知恵蔵 の解説

フィギュアスケートの採点法

2002年開催のソルトレークシティー五輪、ペア競技における不正採点疑惑(実際には不正はなかったとする説が現在では有力)が発端となり、それまでの6.0点満点方式から現行の採点法「ISU(国際スケート連盟)ジャッジングシステム」に改められた。ISUグランプリシリーズでの導入は03/04シーズンから。ISUチャンピオンシップ大会での導入は04/05シーズンから。従来の採点方式を「旧採点法」、現在の採点方式を「新採点法」と呼ぶこともある。
6.0点方式では、技術点(テクニカルメリット)、芸術点(プレゼンテーション)に分けられ、審判がそれぞれを6点満点で採点。最終順位はこの点数の合計ではなく、各審判が出す順位を得点化した順位点で競われた。よって同じ試合に出場した他の選手に比べて上か、下か、という相対評価となっている。
一方で新採点システムでは、まずジャンプスピンステップシークエンス、スパイラルシークエンスといった演技要素(エレメンツ)を細分化して採点。それぞれのエレメンツに基礎点が設定されており、出来具合により審判が-3~+3までの7段階の加点減点(GOE)をする。たとえばジャンプならば「トリプルアクセル」の基礎点は8.2点。成功し、なおかつ高さがある、飛距離がある、など良質なジャンプと認められれば+1、+2、+3などの加点が得られる。逆に転倒やお手付きなどの失敗あった場合は基礎点から-1、-2、-3といった減点がされる。またステップやスピンはそれぞれに1~4段階のレベル設定があり、「ストレートラインステップレベル3」ならば基礎点は3.3点。エレメンツの数は女子フリープログラムの場合、ジャンプ7、スピン3、ステップ1、スパイラル1の計12。こうしたエレメンツ採点の合計点が「テクニカルスコア(総要素点)」である。選手の行ったエレメンツ一つひとつを細密に採点することで不正が行われにくくなり、また6.0点方式とは違う絶対評価となった。
さらに旧採点法では一括して「芸術点」と呼ばれていた芸術的側面も「5コンポーネンツ(演技構成点)」として細分化され、「スケート技術」「技と技のつなぎ」「演技力」「振付け・構成」「音楽との調和」の5項目を10点満点で採点。「総要素点」と「演技構成点」から求められる合計点から転倒(-1)やルール違反(時間オーバーなど)のマイナスをひいた点数が選手の得られる総得点となる。09年2月上旬現在、新採点方式における史上最高得点は、男子シングルで髙橋大輔(日本)の264.41(08年四大陸選手権)、女子シングルでキム・ヨナ(韓国)の210.03(09年エリックボンパール杯)。なお旧採点方式では6点満点2項目をすべて審判(ジャッジ)が採点していたが、現在はエレメンツの実施を判定する技術審判(テクニカルスペシャリスト)が、ジャンプの種類と回転数、成否の判定、スピンやステップのレベル判定を行っている。一方で従来の審判(ジャッジ)は各エレメンツの出来栄え(GOE)評価と、5コンポーネンツの採点を行う。

(青嶋ひろの  フリーライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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