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フィリップス曲線 ふぃりっぷすきょくせん

ASCII.jpデジタル用語辞典の解説

フィリップス曲線

賃金上昇率と失業率との間に存在する負の相関関係を示したもの。経済学者のアルバン・ウィリアム・フィリップスイギリスで1862年~1957年に実際に起こった現象をもとに58年に論文で発表した。その後、サムエルソンがより失業率と密接な関係がある物価上昇率と失業率との関係としてとらえなおし、そちらが「フィリップス曲線」と呼ばれるようになった。インフレが起こると失業率が下がり、失業率が上がると物価が下がるということを示している。しかし、90年代以降先進国では極端なインフレが起こらない「ディスインフレーション」が進行するにもかかわらず、失業率は高まっていくという現象がおき、フィリップス曲線では説明が難しい状況になっている。

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デジタル大辞泉の解説

フィリップス‐きょくせん【フィリップス曲線】

賃金変化率と失業率との対応関係を示した曲線。失業率が低下すると賃金は急速に上昇し、逆に失業率が上昇すると賃金は比較的緩やかに低下する。1958年に英国の経済学者フィリップス(A.W.Phillips)が発表。

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百科事典マイペディアの解説

フィリップス曲線【フィリップスきょくせん】

失業率が低いほど物価上昇率は高く,失業率が高いほど物価上昇率は低い,という〈トレードオフ〉の関係を示す曲線。A.W.フィリップスが英国の賃金上昇率と失業率との関係から1958年に導き出した。

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外国為替用語集の解説

フィリップス曲線

賃金の下落(上昇)率と失業率の間にはトレードオフ(逆相関)の関係があること示した曲線。1861年から1957年のイギリスの長期データを用いて1958年にフィリップスが発見した。失業は労働市場の超過供給であるので、価格理論と同じく、失業率の上昇はやがて賃金を下落させることになる。名目賃金率とインフレ率との間には比例的な関係があるため、失業率とインフレ率との間にも同じようにトレードオフの関係があり、物価版フィリップス曲線と呼ばれる。

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世界大百科事典 第2版の解説

フィリップスきょくせん【フィリップス曲線 Phillips curve】

物価上昇率と失業率の負の相関関係を示す曲線のこと。名称は発見者のフィリップスAlban William Phillips(1914‐75)にちなむ。1958年,フィリップスはイギリスの1861年から1957年にかけての長期データに基づき,イギリスにおいては貨幣賃金の上昇率が高いほど失業率は低く,逆のときは失業率が高いという関係が一つの曲線(図参照)で示され,その位置,形状がこの時期に関するかぎりほぼ安定して変わらないことを明らかにした。

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大辞林 第三版の解説

フィリップスきょくせん【フィリップス曲線】

失業率が低ければ賃金上昇率が高く、失業率が高ければ賃金上昇率が低いという関係を表した曲線。完全雇用と物価安定の二律背反関係を示す。イギリスの経済学者フィリップス(Alban William Phillips1914~1975)による。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

フィリップス曲線
フィリップスきょくせん
Phillips curve

失業率と貨幣賃金の上昇率との間に存在すると考えられる負の関係を示す曲線。イギリスの統計資料 (1861~1957) に基づき A.フィリップスによって実証的に導き出されたためこの名がある。彼は年々の貨幣賃金変化率と失業率の関係をグラフで表わし,右下がりの曲線を導出した。そして失業率が約 5.5%のときに貨幣賃金変化率が一定となり,失業率がこれより減少すれば貨幣賃金変化率が上昇し,失業率が増加すれば下落するというトレード・オフの関係があることを示した。その後 P.A.サミュエルソンと R.M.ソローアメリカ経済について同様の分析を行い,物価安定と完全雇用の間にフィリップス曲線と同様の関係があると主張して注目された。また M.フリードマンは貨幣賃金変化率ではなく,実質賃金変化率によるべきであると主張し,予想物価上昇率を加えたフィリップス曲線を提唱している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

フィリップス曲線
ふぃりっぷすきょくせん
Phillips curve

イギリスの経済学者フィリップスAlban William Phillips(1914―75)は、イギリスにおける1861~1957年のデータを用いて賃金上昇率と失業率との関係を調べ、その結果、のSSのような曲線を得た。これがフィリップス曲線とよばれるもので、失業率が低下すると賃金は急速に上昇し、逆に失業率が増大すると賃金は徐々に低下することを示している。ところがいま、労働分配率が一定であるとすれば、賃金上昇率マイナス労働生産性上昇率が近似的に物価上昇率となる。もし労働生産性上昇率が安定的であるとすれば、賃金上昇率が大となれば物価上昇率も大となる。したがって、フィリップス曲線は失業率を低くすればするほど物価上昇率は高くなることを意味する。すなわち、完全雇用を達成しようとすればインフレが生じ、物価を安定させようとすれば失業が増大することを示している。完全雇用と物価安定の間にはトレード・オフが存在し、現実にはこの曲線上のどこに経済を置くかという問題にならざるをえない。
 その後各国でフィリップス曲線について数多くの計測がなされたが、その結果によると、フィリップス曲線は非常に不安定であって、データをとる期間によってその形状や位置が変化してしまうことが知られている。とくにM・フリードマンは、人々の期待が固定している短期にのみフィリップス曲線は右下がりの曲線となると主張している。彼によれば、長期的には人々の期待が変化して調整が行われ、フィリップス曲線はのLLのような自然失業率の点からの垂直線になるという。ここで自然失業率とは、労働市場の構造や賃金構造によって決定されるその経済特有の失業率である。したがってフリードマンによれば、長期的には、完全雇用と物価安定との間にはトレード・オフが存在しないこととなる(自然失業率仮説)。[畑中康一]

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世界大百科事典内のフィリップス曲線の言及

【インフレーション】より

…この点について古典派経済学では,物価水準は通貨量に比例すると考えられたので,実質成長率を超える通貨供給増加率が続くかぎり物価水準の上昇も続くことになる。これに対して不完全雇用均衡の理論としてのケインズ経済学には元来,このような動学的なインフレ理論は存在しなかったが,1950年代後半にインフレ率と失業率の間に安定した負の関係(いわゆるフィリップス曲線)が存在することが実証的に発見され,失業率を用いてインフレ率を説明する体系が一般化した。 その後,フィリップス曲線を理論的に説明する試みがなされ,その多くが市場における情報の不完全性に注目した。…

【雇用政策】より


[失業率と物価上昇率間のトレードオフ関係]
 こうして,1950‐60年代には,先進工業国では,世界的好況のせいもあって,完全雇用に近い状態が実現したといわれるが,この間物価水準が上昇し,雇用水準の維持という政策目標と物価安定という政策目標との間にトレードオフ(二律背反)の関係がみられ,注目されることになった。そこで,いま縦軸に物価上昇率をとり横軸に失業率をとると,両者の間には座標軸の交点に対して凹の負の非線型の曲線で表される関係があるとするフィリップス曲線をめぐって議論が展開されることになった。すなわち,高い失業率のもとでは,総需要増加政策によって,物価上昇を伴わずに失業率を低下させることができるが,それ以上になると,失業率の低下は物価上昇を伴い,しかも失業率低下に伴う物価上昇率は累進的に高くなり,失業率低下という政策目標と物価安定という政策目標が矛盾することになる。…

【自然失業率】より

…自然失業率下における失業者は,より良い職を求めて自発的に失業しているとみなされ,この状態は一種の完全雇用状態といえる。A.W.フィリップスの研究(1958)以来,多くの国でフィリップス曲線すなわちインフレーションと失業率とのトレードオフ関係の存在が確認されてきた。しかしE.S.フェルプス,M.フリードマンらは1960年代末に,フィリップス曲線は予想物価上昇率とともにシフトし,予想物価上昇率と現実のそれとが一致する長期においては失業率は自然率に落ち着き,インフレーションと失業率のトレードオフ関係がなくなると主張した。…

【スタグフレーション】より

…1973年秋の第1次石油危機のあと,不況とインフレの二重苦に悩むアメリカ経済を指してマスコミが盛んに用いたが,現在では経済学用語として定着している。 第2次大戦後のアメリカ経済は,1950年代後半のクリーピング・インフレーションという不況下の物価上昇現象もあったが,主としてインフレ率と失業率との間には安定した負の相関関係(フィリップス曲線)があると考えられていた。そこで財政・金融政策により有効需要を高めに安定させ,失業率をできるだけ低い水準に抑え,その代償として緩やかなインフレを容認する,という政策思潮が有力であった。…

※「フィリップス曲線」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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