フィリピン海(読み)フィリピンカイ(その他表記)Philippine Sea

デジタル大辞泉 「フィリピン海」の意味・読み・例文・類語

フィリピン‐かい【フィリピン海】

フィリピン諸島の東に接する太平洋一部で、小笠原マリアナパラオ諸島南西諸島などに囲まれる海域

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改訂新版 世界大百科事典 「フィリピン海」の意味・わかりやすい解説

フィリピン海 (フィリピンかい)
Philippine Sea

東側は伊豆・小笠原,マリアナ,ヤップ,パラオの諸海溝で太平洋やカロリン海と境され,西には南西諸島海溝フィリピン海溝,北には南海トラフ(成因的には海溝の一種)をもつ海域。大部分海底は海洋性地域をもつ。中央部を九州南東方からパラオ諸島まで九州・パラオ海嶺と呼ばれる高まり(古島弧)が縦断する。九州・パラオ海嶺上の唯一の島である沖ノ鳥島(パレス・ベラParece Vela礁)は最南端(北緯約20°)の日本領土である。九州・パラオ海嶺の西側を(西)フィリピン海盆と呼ぶ。フィリピン海盆は台湾南東沖から東南東へ走るセントラルベーズン断層を拡大軸として,6000万年前ころから4000万年前ころまでの間に拡大してできた海底だとされており,水深は6000m前後ある。その北端には沖大東海嶺,大東海嶺(南・北大東島はこの上にある隆起サンゴ礁である),奄美海台という三つの古島弧がある。九州・パラオ海嶺の東側の海底は,北を四国海盆,南をパレス・ベラ海盆と呼ぶが,どちらも約3000万年前から1500万年前ころまでに拡大してできた海盆であり,4500mないし5000mの水深をもつ。そのさらに東には,西七島海嶺から西マリアナ海嶺へつづく古島弧がある。西マリアナ海嶺の東側のマリアナ弧で囲まれる三日月形の海盆はマリアナトラフと呼ばれ,約500万年前以来拡大をつづけている水深3500m前後の起伏に富んだ海底である。フィリピン海の北東部に,マリアナトラフに相当する現在拡大中の海底があるかどうかについてはまだはっきりしない。西七島海嶺と七島・硫黄島海嶺の火山弧の間が拡大中との説もあるが,もしそうだとしても,マリアナトラフに比べると拡大した海底の面積も,拡大期間も小さいらしい。

 フィリピン海の北西縁には,台湾付近から琉球諸島沿いを経て,西南日本の南方を東へ流れる強い海流(黒潮)がある。北緯20°以南には西向きの北赤道海流とその反流(東向き)が流れているが,黒潮ほど強くはない。フィリピン海北部は,冬にはシベリアから吹き出す北西風にさらされ,6月ころには北西縁に前線が停滞して梅雨となる。また,9月から11月にかけてフィリピン海全域が台風の通り道となる。海水中の栄養塩は一般に親潮などと比べれば少ないので,漁獲量は海嶺,海台,海山などの浅部と大陸棚を除けばあまり多くない。深海底堆積物中に微化石をほとんど含まない地点も少なくない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フィリピン海」の意味・わかりやすい解説

フィリピン海
フィリピンかい
Philippine Sea

太平洋西部にある付属海の一つ。フィリピン諸島 (ルソン島,サマル島,ミンダナオ島など) の東縁に沿って広がる海域。周辺にはほかに,パラオ諸島,ヤップ島,ウリシ環礁,マリアナ諸島,小笠原諸島,日本列島,琉球諸島,台湾などがある。南北 2900km,東西 2400km,面積 100万 km2。海底は周辺の島弧形成の際に,褶曲・断層運動によって構造盆地として形成された。平均水深 6000m,最深部はフィリピン海溝の1万 497m。海盆底からそびえ立つ多数の海山があり,一部は頂部が平坦な火山性平頂海山でサンゴにおおわれている。暖かい北赤道海流がフィリピン海南部を横切って西へ流れ,フィリピン諸島にぶつかって,一部はルソン島近くで北に転進して黒潮となり,一部は黒潮反流としてフィリピン海に戻り,さらに一部は北赤道反流となる。ハリケーンや台風の発生場所で,暴風雨は特に9月が強い。第2次世界大戦で,日米決戦の戦場とされた (1944) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「フィリピン海」の意味・わかりやすい解説

フィリピン海
ふぃりぴんかい
Philippine Sea

フィリピン群島の東に接する西太平洋の一部。西はフィリピン群島、北西は台湾および日本の南西諸島、北東は小笠原(おがさわら)諸島、東はマリアナ諸島、パラオ諸島に囲まれる海域である。世界でもっとも深い海の一つで、フィリピン、琉球(りゅうきゅう)、マリアナ、ヤップなど多くの海溝があり、マリアナ海溝中には世界の海の最深点がある。海域南部は台風の発生地として知られ、フィリピン北部、沖縄、西日本にたびたび大被害をもたらす。

[別技篤彦]

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