翻訳|microfossil
観察に顕微鏡を必要とするような大きさの化石。数ミリメートルから1マイクロメートルに達しないものまである。微化石を扱う学問分野を微古生物学という。微化石には分類学上さまざまなグループが含まれ、それらは次のように大きく区分できる。
(1)微小な生物の殻(から)や骨格。原生動物(原生生物)である有孔虫や放散虫、珪藻(けいそう)や珪質鞭毛(べんもう)藻あるいは渦鞭毛藻などの藻類、そして甲殻類に属する貝形虫などの遺骸(いがい)がその代表的なものである。
(2)大形生物の遺骸の一部分。海綿の骨針、あるいはウニ、ナマコなど棘皮(きょくひ)動物のとげや骨片、さらに、魚の鱗(うろこ)などがそれにあたる。
(3)植物の花粉や胞子。
(4)大形生物の幼生の遺骸。
これらはいずれも、生物体のうち、海水や淡水による溶解作用、生物による分解作用に対して強い抵抗力をもっている部分である。多くは石灰質かケイ酸質であるが、なかには花粉や胞子のように、複雑な組成と構造をもつ有機物からなるものもある。また、続成作用(化石化作用)の過程で、もともと遺骸を構成していた物質が、ケイ酸など他の物質で置換されている場合も珍しくない。微化石は堆積物(たいせきぶつ)の主要な構成成分の一つである。とくに深海堆積物では、しばしば微化石が濃集し、有孔虫軟泥、コッコリス軟泥、珪藻軟泥、放散虫軟泥などの名称で他の堆積物とは区別される。さらに、チョーク、大部分のチャート、珪藻土などは、これらの固結したものである。微化石は、ほかの大形化石と同じく、生物進化を明らかにする対象として、また過去の地球環境を知る手掛り、さらには地層を対比する手段として用いられる。なかでも、微化石は比較的少量の堆積物や岩石試料中に多量に含まれるので、陸上や海洋底から採集されるコアcore(岩芯(がんしん)ともいう)を用いた研究には有効である。とくに、深海掘削船のグローマー・チャレンジャー号やジョイデス・レゾリューション号により採集された深海底コアに基づいたプレートテクトニクスをはじめとする新しい地球観の形成に、微化石の果たした役割は大きい。
[谷村好洋]
『浅野清著『微古生物学』全3巻(1970~1976)』▽『藤岡一男編『古生物学』新版(1978)』▽『高柳洋吉編『微化石研究マニュアル』(1978)』▽『速水格・森啓編『古生物の科学1 古生物の総説・分類』(1998・以上朝倉書店)』▽『日本海洋学会編『海と環境』(2001・講談社)』
(小畠郁生 国立科学博物館名誉館員 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…例えば成因的には,(1)海藻やバクテリアなどが堆積物の粒子を方解石やケイ酸で固結させて作り上げた層状堆積構造(ストロマトライト),採餌行動によりかくはんされた状態がそのままとどめられた堆積構造,軟らかい堆積物の表面に残された足跡・はい跡・巣穴・採餌行動の跡など生物起源の堆積構造,(2)固結した堆積物に対して穴をあけた跡,かじったり,かんだり,ひっかいたりした生物による侵食構造,(3)その他の生活活動を示す糞(ふん)・卵・卵囊・胃内容物などに分類される。 形態が小さく,顕微鏡下ではじめて識別されるような化石を微化石microfossilという。この中には,有孔虫・放散虫・貝形虫・ケイ藻のような微小な殻や骨格をもつ動植物,複雑な構造をもつ大型動物の骨格の一部分(例えばウニのとげや骨片など)や,植物の花粉・胞子などの化石が含まれる。…
…また進化速度が速く,属や種としては短命なものが少なくない。近年浮遊性生物の微化石は示準化石として重視される傾向にある。これらは陸上と海底とを問わず海成堆積物の広域対比やその年代決定に用いられ,さらに石油・天然ガス資源などの存在状態を知るのに必要な,地下の地質構造の解明のような応用方面でも重用されている。…
…
[藻類の出現]
化石の記録によると,藻類は約30億年前の先カンブリア時代にはすでに地球上に出現していたらしい。この時代の地層から発見された直径約20μmの球形のラン藻様の微化石Archaeosphaeroides larbertonensisが最古の藻類化石と考えられている。年代が下り約19億年前の地層からは現生のユレモなどに似たラン藻の化石が多数得られている。…
※「微化石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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